佐藤洸史郎(青森山田2年)
「ここぞ」で魅せる超攻撃型リードオフマン
ミスター・トリプルスリーこと山田哲人を彷彿とさせる打撃フォームとパンチ力、さらには得点圏での驚異的な勝負強さをもって青森山田を牽引する男がいる。
細身の体躯ながら高校通算10発、そのうち5本が公式戦で、夏の甲子園でもレフトスタンドに大会第2号を叩き込んで脚光を浴びた佐藤洸史郎だ。
佐藤洸史郎:プロフィール
エリート街道まっしぐら「中泊の星」
楽天ジュニア準Vメンバー
薄市小学校時代は隣町の少年野球チーム(NSゴールドスターズ)に通い、6年時には地元・中泊町の大会で優勝、佐藤自身もMVPを獲得した。
その活躍ぶりは県内を越えて東北楽天ゴールデンイーグルスの目にも留まり、冬休み恒例のNPB12球団ジュニアトーナメントでは下位を担う二塁手として準優勝に貢献している。
青森山田リトルシニア全国V戦士
近年の野球実績が著しい青森山田中学に進み、硬式野球部=青森山田リトルシニアの主力選手として選手権2連覇に貢献。佐藤はベストナイン(外野手)に選ばれた。
この中学全国Vメンバーのなかには、楽天ジュニア時代もチームメイトだった蝦名翔人(同ベストナイン受賞)と柴田渓太がいる。
ちなみに青森山田は中高一貫のため、佐藤を含めた前述の3人はもちろん、下記の面々も新チームのメンバーとして名を連ねているから末恐ろしい。
選手権MVPに輝いた葛⻄陽永、優秀選手賞の菊地統磨、そして佐藤や蝦名と同じくベストナインに選出された菊地伊眞に1学年下の郡司宙弥という豪華な顔ぶれだ。
青森山田高校では1年秋からレギュラー
ダブルエースの関浩一郎と櫻田朔、不動の4番・原田純希らを擁した1学年上の新チームで、初陣からリードオフマンとして全試合スタメンに名を連ねた佐藤洸史郎。
このチーム初戦の公式戦初打席で3ベースを放ち、最終打席ではホームランという、とんでもないデビューを飾っている(ホームラン動画56分頃)。
チームは青森大会と東北大会のダブル連覇で明治神宮大会の出場を決め、見事センバツ切符を掴んだ。
佐藤も明治神宮大会まで全試合不動の1番打者として出場し、秋のトータル打率4割半ばをマーク。1年生の超攻撃型リードオフマンとして、その名を全国に知らしめている。
思わぬアクシデントに見舞われた初聖地
下級生ながらセンバツ屈指のリードオフマンに上げられていたなか、青森から甲子園に向けて出発する2日前に右肩を痛めてしまった佐藤洸史郎。
辛うじてベンチ外は免れたものの、大事をとっての代打出場にとどまり、結果は4打数ノーヒットに終わった。
センバツ後は驚異的なV字回復で大躍進
佐藤自身は不完全燃焼に終わったが、チームは25年ぶりとなる甲子園ベスト8進出で地元青森を沸かせたセンバツ2024。
続く春季青森大会は再びレギュラーとして返り咲いたものの、センバツでの心身的な逆境もあってか、昨秋のような目覚ましい打撃成績は残せなかった。
それでも夏の青森予選では、ここまでエリート街道をひた走ってきた超攻撃型リードオフマンが大復活を遂げる。
大会通算打率で自己キャリアハイを大幅に更新したのはもちろんではあるが、何と言っても決勝の大一番で劇的な殊勲打を放ってのけたことだ。
決勝の相手は春の再戦、辛酸を舐めた弘前学院聖愛との同一カード。展開も春と同じ聖愛の先制ペースで進んだ中盤の6回、2点ビハインドを佐藤の一撃大逆転グランドスラムで試合をひっくり返した。
青森山田は最終回に聖愛の猛チャージを受けながらも、佐藤の神懸かった一発を死守し見事甲子園切符を掴んだ。
いわば佐藤の一発がなければ、青森山田が夏の甲子園で巻き起こしたミラクルベスト4旋風は見られなかった、と言っても間違いなく過言ではない。
奇跡の大逆転満塁ホームランは下部の動画コーナーに置いてあるので、このまま最後まで読み進めてくれ。
ちなみに満塁弾を放った相手は、この秋のドラフトで巨人から育成4位の指名を受けた吹田志道だ。
吹田の投じた絶妙すぎる低めのストレートを、佐藤は完璧に捉えている。
大会第2号男ながら実は「強肩好守」でも魅せた夏の甲子園2024
自身二度目となる聖地では、低反発バットによるホームラン激減の声が飛び交ったなか、東海大相模の柴田元気に次ぐ2年生の甲子園弾で脚光を浴びた佐藤洸史郎。
話題は洸史郎にとどまらず、エース関浩一郎や2年生の下山大昂らによる力投の数々、ダブル佐藤こと1・2番コンビで球場を沸かせた佐藤隆樹、さらには大会随一のパワースラッガーとして耳目を集めた原田純希らを擁し、青森山田史上初のベスト4進出という快挙にまで及んだ。
とはいえ、中学日本一を経験している佐藤洸史郎らV戦士からすれば「全国制覇を狙える位置にあった」と感じたに違いない。
1学年上で青森勢初の中学日本一に輝いたメンバーには、プロ注目の吉川勇大を筆頭とする5人衆を擁していただけに、2連覇組も踏まえ、長らく寝食を共にする間柄にあるとなれば、なおさらだろう。
もちろん青森山田を中学の頃から知る地元津軽の人たちにとっても、大半が県勢初となる悲願の全国制覇に心を弾ませたに違いない。
それとは対照的に佐藤はチーム初戦で衝撃的なインパクトを残したものの、要所となった大会終盤での2戦は不振に喘いだ。
ところが一発男は、白熱の投手戦となったvs滋賀学園において、2度のウルトラ守備で青森山田史上初の甲子園ベスト4進出に貢献している。
専ら高校球児はホームランを取り上げられがちだが、佐藤はイチローさながらのスライディングキャッチでチームを助け、万波中正ばりのレーザービームで二度目の危機も救った。
佐藤洸史郎はスリムな体躯ではあるが、守備ひとつ取り上げてみても、身体能力の高さを存分に伺わせるものがある。
そんな佐藤洸史郎の華麗な2度の守備シーンは、下部の動画コーナーに置いてあるので、いま一度じっくり目に焼き付けてくれ。
総じて1番打者ながら打点も稼げて得点圏にも滅法強く、ならではの俊足を生かした広い守備範囲と鉄砲肩も兼ね備えた三拍子プレイヤー、それが佐藤洸史郎だ。
センバツ2025優勝候補のキーマン
ちなみにダブル佐藤や新たに4番を担う蝦名翔人、そしてエース下山大昂らを擁するシン・青森山田は、早くも秋季大会を制している。
もちろん洸史郎もホームランと打点のチーム2冠、安打数も二桁の大台に乗せる好調ぶりをキープ。シン・青森山田はセンバツに最も近いチームといえるだろう。
まだセンバツに向けた熱戦の最中ではあるが、現況は各地で波乱続きという側面も。吉田大輝を擁する秋田・金足農業がセンバツの道を断たれた件は、いち早く報じられている。
そのほか埼玉でも、有力視されていた櫻井ユウヤを擁する昌平、花咲徳栄と浦和学院の絶対的3校が揃って予選敗退。
夏の甲子園を沸かせた優勝校の京都国際、はたまた大社や広陵、センバツ2024準Vの報徳学園なども出場の道が絶たれた。
こうした状況を踏まえると、シン・青森山田の甲子園初優勝という可能性は、さらに広がったと言えるだろう。
佐藤洸史郎:全データ
大谷翔平さながらの1番打者
佐藤洸史郎を語る上で外せないのは、ボールを芯で捉える精度、いわゆるパンチ力に磨きをかけている点、そして現時点で通算5割超という得点圏打率の2つだ。
甲子園弾についてインタビューで「自分はホームランバッターじゃない」と謙遜してはいるものの、この一発を契機に覚醒傾向にある。
新チームとして臨んだ秋季青森大会で2ホーマーを放ち、高校通算10発。そのうち半分の5発が公式戦と実践での確実性を高めている。
前述した通り打点もチームトップだ。現時点における公式戦通算打点でも、ほぼ1試合1打点のペースで稼いでいる。
なお佐藤の公式戦出場数はチーム最多。その上で通算の「打率・打点・ホームラン・安打数・OPS」もチームトップの5冠王に君臨している。
まさに今季の大谷翔平を彷彿とさせるニュータイプのリードオフマン、それが佐藤洸史郎だ。
秋季青森大会2023(優勝)
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