Daiju (高橋大就)

浪江町民; 東の食の会専務理事; NoMAラボ代表; 米国Purple Carrot取…

Daiju (高橋大就)

浪江町民; 東の食の会専務理事; NoMAラボ代表; 米国Purple Carrot取締役; 元外務官僚/マッキンゼー/Oisix香港・上海代表 https://r.voicy.jp/gJmZGj3Z9BP https://twitter.com/daiju_takahashi

最近の記事

福島第一原発事故に基づく『The Days』を見終えて

 東京の仕事を終えて福島、浪江町に戻る帰途のこの車窓の景色も、見ることは出来なかったのかもと思う。  The Daysはあの時、吉田所長はじめ福島第一原発の現場にいた方々の見た地獄を忠実に、強烈に、再現していたと思う。  一方で、この作品には住民が一切出てこない。津波による多くの死者も、あるべき通報もなく何が何だかわからず避難を余儀なくされたことも、多くの人がそのまま家と故郷を失ったことも、福島に対する心無い扱いも、無関心も、これまで12年間の苦難も。  そこに多くの福島

    • 人生5周目は"文化"に挑む。鍵はローカル×自律×若者。

       昨5日、干支を4回周り終えました。年男とかも意識したことなかったのですが、振り返ってみると、見事にこの周期で人生動いていたことに気づきました。  第1周は無の時代: 生れ落ち、小学校を終えるまで。ただ生きてました。痛みも知らず。  第2周は価値形成の時代: 中学生から就職するまで。基本的価値観や規範はこの頃から変わってない気がします。  第3周はマクロの時代: 前半は安全保障に、後半は日本経済・一次産業に、マクロの観点から最大だと思う課題に真っ黒な働き方で取り組みまし

      • 「浪江とウクライナを地続きに」~昨年の振り返りと今年の抱負

        2022年、個人の振り返り 2022年は、世界も日本も、自分個人にとっても激動の年でした。  私の住む福島県浪江町では、震災前2万1000人いた人口が一度ゼロになりましたが、帰還者・移住者が徐々に増えて、昨年末には2000人弱まで回復しました。私の行政区(自治会)では再建された神社で櫓を組んで盆踊りが震災後初めて行われました。  そして、隣の双葉町では8月末に復興再生拠点の避難指示が解除となり、11年半経ってついに全ての市町村で居住が可能になりました。  個人としては、浪

        • 「ワクワクな浪江町の私」~2022年を迎えて~

           明けましておめでとうございます。  昨年は、大きな転機の年になりました。福島県浪江町で生きていくと決め、1月から住居を借り、4月1日に住民票も移して完全移住、1年間をほぼ浪江町で過ごしました。  あの原発事故が起きて、約2万1千人が住んでいた浪江町は全町避難となり、2017年4月に約20%のエリアが避難指示解除、現在の居住人口は約1800人です。  震災以来の除染活動や瓦礫撤去、伐採・草刈り、そして、コミュニティ再生、まちづくり活動といったこれまでの測り知れない努力のおかげ

        福島第一原発事故に基づく『The Days』を見終えて

          『ワクワク戦国時代到来』(福島民報「民報サロン」2021年12月24日寄稿)

           「新しい資本主義の主役は地方です。」岸田新総理による所信表明演説の一節だ。一国の総理が地方を「主役」と呼んだ意味は大きい。日本を代表する経営者、冨山和彦さんも、日本経済の主流はローカル企業だと言い切る。官民ともに、地方の時代で一致している。  実際、地方が熱い。電子地域通貨「さるぼぼコイン」を発行した岐阜県の飛騨高山。ゴミのない社会を目指す「ゼロウェイスト宣言」をした徳島県上勝町。「ベンチャー行政」の宮崎県日南市。面白いコトを仕掛ける地域が次々と現れ、群雄割拠だ。  人口

          『ワクワク戦国時代到来』(福島民報「民報サロン」2021年12月24日寄稿)

          『形式よりも、人間を。』(福島民報「民報サロン」2021年12月3日寄稿)

           十四年前、九年勤めた外務省を辞めた。外交の仕事はやりがいがあり、外務省には尊敬できる方が多かったが、退職を選んだ一つの理由は「国会答弁作成作業」。議員から事前通告される質問に対して総理や大臣の答弁を官僚が準備する作業だ。  一問一問についての答弁、さらにその答弁に対して想定される質問(「更問」)への答弁を、「てにをは」まで一言一句、法的整合性、過去の答弁との整合性、政治的状況などを考えて作文し、関係省庁関係各課全てと調整し合意を得る、という気が遠くなる作業。関係する質問が通

          『形式よりも、人間を。』(福島民報「民報サロン」2021年12月3日寄稿)

          『地方から無数の企てを』(福島民報「民報サロン」2021年11月12日寄稿)

           「地方創生」という言葉はやや色褪せた感がありますが、今、注目なのは「ローカル・ベンチャー」という概念です。「ベンチャー」は新興の「企業」のことと思われがちですが、「新たな取組み」「企て」といった意味です。  日本各地で地域活性化の企てや地域課題解決の企てが勃興しており、ここ福島県浜通り地域もその最前線になりつつあります。  震災で全町避難となっていた南相馬市小高区では、「小高パイオニアヴィレッジ」から起業する若者が次々に生まれ、これまでにないお酒を造る酒蔵「haccoba」

          『地方から無数の企てを』(福島民報「民報サロン」2021年11月12日寄稿)

          『関係資本を溜め込もう』(福島民報「民報サロン」2021年10月23日寄稿)

           私が移住した浪江町の居住人口は着実に増えているが、いまだ約千七百名。よく東京の友人に「寂しくないのか」と聞かれる。でもこの問いは自分の実感とあまりにもかけ離れている。ここでは町を歩けばそこかしこで知り合いに出会いあいさつをする。時が経つにつれその割合が増えていく。  自分がいた東京には一千万人を超える人が住んでいる。人は多いが交流は多くなく、関係を持っている人は一握りで、九百九十九万九千人とは一生交わることはない。むしろ満員電車でしかめ面で押し合ったり、渋滞でクラクションを

          『関係資本を溜め込もう』(福島民報「民報サロン」2021年10月23日寄稿)

          『安全は科学、安心は人』(福島民報「民報サロン」2021年10月2日寄稿)

           東日本大震災。日本の食糧庫だった東北を津波と原発事故が襲い、農業・漁業・食産業が壊滅的な打撃を受けました。 産業を挙げて取り組まなければ復興はないと、日本の食関連企業が40社ほど集まって「東の食の会」が結成されました。  以来、三陸・福島の漁師・農家などのヒーロー生産者や、三陸の「サヴァ缶」「アカモク」、福島ではサゴハチ「358」などヒット商品を産み出してきましたが、最初に取り組んだのは、いかに食の安全性を担保するかという課題でした。  国際的な専門家の指導の下、民間企業に

          『安全は科学、安心は人』(福島民報「民報サロン」2021年10月2日寄稿)

          『なぜ浪江を選んだのか』(福島民報「民報サロン」2021年9月11日寄稿)

           東日本大震災直後から、「東の食の会」という東北の食産業復興の団体を立上げ、福島をはじめ、東北の農業・漁業・食産業からヒーロー生産者やヒット商品を産み出す活動を行ってきました。  立上げ以来、東京を拠点にしてきましたが、今年の四月から福島県浪江町に移住をしました。  なぜこのタイミングで、なぜ浪江町なのか、とよく聞かれます。その理由は大きく二つあります。  これまで、東北地方を回りながら食産業復興の活動をしてきましたが、福島十二市町村の避難指示がかかった区域では活動を行ってこ

          『なぜ浪江を選んだのか』(福島民報「民報サロン」2021年9月11日寄稿)

          なぜ五輪開会式の日にパリへ行って東北の食を振舞うのか。

           2020年大会の開催地が東京に決定した時、まだまだ震災復興のど真ん中でしたが、3.11以来なかった高揚感を味わったのを覚えています。 「復興五輪」までに見違えるように復興した東北の姿を世界に見せよう、素晴らしい東北の食を世界から訪れる方々に楽しんでもらおう、と2020年大会は、間違いなくみんなで目指す一つのマイルストーンになりました。  東の食の会でも、オリンピック村でキッチンカーを借りて東北の食をオリンピアンや世界のメディアの方々に楽しんでもらうつもりでした。  そんな中

          なぜ五輪開会式の日にパリへ行って東北の食を振舞うのか。

          Human Legacy Dining in Paris プレゼンテーション骨子(パリ五輪につなぐ東北の食の生産者のレガシー)

          2011年3月11日、14時46分。マグニチュード9.0の巨大な地震が発生しました。 そして30分後、15mを超す巨大な津波が東北地方を襲いました。 翌3月12日。東北沿岸の町は廃墟と化していました。 そして15時36分。福島第一原発が水素爆発を起こしました。 明白な危機でした。現代社会の人類が直面した危機で最大のものの一つではと思います。 日本の食を支えてきた食糧庫の東北地方の農業、漁業、食産業がもうなくなってしまうのではないかとさえ思えました。 そこから街や道路や線

          Human Legacy Dining in Paris プレゼンテーション骨子(パリ五輪につなぐ東北の食の生産者のレガシー)

          今起こっている「緊急事態」は何か。

          今日から、3度目の緊急事態下に入りました。 今、何の「緊急事態」が起こっているのか。 もちろん、政府により宣言された緊急事態は、コロナの感染状況、医療体制のひっ迫状況が緊急事態ということです。 一方で、飲食業・観光業をはじめとする産業への打撃も緊急な状況です。 そして、この2つの緊急事態は二項対立的に語られがちで、不幸な対立も生まれています。 でも、ここでは、その話ではなく、そこに挙がってこないもう1つの、深刻な緊急事態について警鐘を鳴らしたいです。 それは、生活困窮家庭の

          今起こっている「緊急事態」は何か。

          怪獣「クラーケン」を封じ込めよう  ~アメリカの分断と混沌は対岸の火事ではないから、行うべき3つのこと。~

           2021年1月6日。米大統領選のバイデン勝利を確定する手続を阻止するため、連邦議会議事堂にトランプ支持の暴動者たちが大挙して乱入するというアメリカ憲政史上に残る事件が発生しました。この衝撃的な映像を見ながら、自分が20代の半分を過ごし、政治を学んだ国が、このような分断と混沌に陥ってしまった悲しさと憤り、何もできない無力感に打ちひしがれましたが、少なくとも日本は同じ轍を踏んではいけない、微力でも何かしなければ、と勢いに任せて筆をとりました。  アメリカの分断と混沌は、決して

          怪獣「クラーケン」を封じ込めよう  ~アメリカの分断と混沌は対岸の火事ではないから、行うべき3つのこと。~

          「公務員」としてフロンティアに挑む ~2021年を迎えて~

           昨年は、医療従事者の方々が命がけで働いている中、この国の株価がバブル以来の高値となる一方でその日の食事もままならない人が急増する中、そして、アメリカで歴史的な政治的無責任と分断と暴動が止まらない中、自分は何をすべきか、否応なく考えさせられた年でした。  22年前、公益のために働くことに最もまっすぐ向きあえる職として外交官を選んだこと。13年前、地域経済・農業の疲弊に取り組むために外務省を退職し、それでも生涯「公務員」として彼らに恥じない生き方をすると誓ったこと。そして、10

          「公務員」としてフロンティアに挑む ~2021年を迎えて~

          地域の一次産業の興し方 ~5つの壁を壊す、5つの場づくりの秘訣~【後編】

          「地方創生」が叫ばれ、地域の主軸産業たる一次産業・食産業にも関心が高まる中、水産業では三陸、農業では福島が、最も勢いのある(時に愛と敬意をこめて「変態」とも呼ばれる)生産者のコミュニティとして注目を集めています。  【前編】では、そのような地域の一次産業のコミュニティが、新しい産業の形を生み出し、地域を活性化していく上でのポイントとなる、「5つの壁」(「地元の壁」、「バリューチェーンの壁」、「業の壁」、「官民の壁」、「地方と都市の壁」)を壊すことの重要性をまとめました。今回

          地域の一次産業の興し方 ~5つの壁を壊す、5つの場づくりの秘訣~【後編】