パタハラを書かずにいられない
男性育休の義務化の議論、ハラスメント防止の法制化が様々取り上げられる中で、某科学系企業のパタハラ疑惑?がネットを騒がせています。
パタハラって?
所謂パタ二ティハラスメントとは、ざっくり言えば「イクメンいじめ」です。その背景には①「男は仕事だろ!」という性別役割分業や価値観強要の問題、②家事労働(介護等ケア労働含む)軽視の問題、そして、③終身雇用を前提にした労働の在り方と現代の情勢との間に生まれた歪み等があります。
パタハラに限らず、ハラスメント問題は「絶対的に労働者が不利になりがち」です。それは”雇用の継続”が重要であるから。生活全般における生命線、乱暴に言ってしまえば「カネ」です。評価や自身の立ち振る舞いによっては、このベースが崩れることもあり得ます。それゆえ、いかなる理不尽でも耐えねばならない。滅私奉公・長時間労働・いつでもどこでも転勤OKの”昭和の働くパパモデル”は、いわば生殺与奪を雇い主に握られながらも、生活のベースを守ろうとした選択の結果であり、それが束ねられたことで出来上がったのが、僕らがイメージする「24時間戦えますか、ビジネスマン」のカルチャーであると、ごとうは考えています。
ですが当時は、終身雇用が機能していた時代。年功賃金で成果問わずにカネはもらえ、大黒柱と言う役をパパが一人でも担えた時代。”サザエさん型”の専業主婦家庭がロールモデルとなり、家の事や地域の会合等は妻に任せておけばいい。それで上手く回っていた時代ですから。
しかし、現代は根本的に環境が異なります。働く人は減り続け、個人の価値観も多様化し、男女共に働く家庭は全国65%超と言われます。生活との両立不安・両立不満に対しての悲痛な叫びは、インターネットであっさりと可視化されるようになりました。当然、そんな環境には人が集まりません。
これまでの方法論では、組織も個人も不幸になってしまう。働き方改革が受け入れられたのは、その事実に沢山の人が気付き始めたことも背景にあります。「昔はこうだった!」「男が育児?」といった前時代的なマネジメントは、もうトレンドではないのです。
※個人の価値観として持つのは自由ですが、それを強要することは許せないと思います
より市場も人口規模も縮小を余儀なくされた日本において、企業が生産活動を継続し、国民が一定水準の生活を守っていくためには、この点にメスを入れ、改革をしないと「一億総括」ならぬ「一億総倒れ」になります。「我が社には関係ない!」と考える事は個人の捉え方で別にいいとは思うのですが、中長期的な視点からはどうなのかな…と思いますよね。
Windows98でいつまでも仕事は出来ません。働く側・雇う側が、自身の意識と言うOSをアップデートしない限り、目の前の課題からは逃げられない時代になってきたと思います。その課題の一つが「パタハラ」をはじめとする、ハラスメント問題でしょう。
パタハラが持つもう一つの問題
ここまでは、社会的な課題に対する壁としてのパタハラの話。
もう一つ。僕が個人的に考えている問題があります。それは、パタハラ(に限りませんが…)は、「個人の働く意思を折る連鎖」を生みかねないということです。
仕事と家庭を両立したい。それゆえに退職した。でも求人票を探そうにも、どの募集も「残業月30時間」とかばかり。面接でも「両立は無理です」「働く気があるんですか?」。活動が長引くと「あそこのお父さんクビかしら」「奥さん可哀想に」。支えてほしい家族からも「男とはな!」「死ぬ気で働くのが父親だ!」「やる気があるのか!」。
それでも全てを振り切って、やっと見つけた転職先で「すみません、子供が熱で…」「はぁ?何でお前が帰るんだ?」なんて言われた時には、これまで耐えて耐えて、やっと一歩を踏み出したその一歩を全否定される感覚を覚えます。結局続けられなくて、再び周囲の全否定にさらされながら身をすり減らして「カネ」を求める生活。そんな生活を繰り返すと、周囲と距離を置いたり、自身の存在すらも否定するようになります。
だから僕は思います。パタハラやマタハラ、パワハラ等は企業だけが行うものではないと。実の親等からの良かれと思っての父親像の押しつけ、地域風土も、そこにお互いの意志を受け取る動きがなければ、ハラスメントになりえると思っています。
「夫がメンタルを病んでしまって…」。そう思う裏には「こんなことで仕事行けなくなるなんて!あなたは私達を支える気があるの?」という無言の圧力がありませんか?
「社会人にもなって!」そう自分の子供に問いかける親は「周囲から後ろ指刺されるのは”育てた我々だ!」「この年になってみっともない!」と少しでも思っていないと言えますか?
肝心の「対象者」の気持ちに声を傾けましたか?男性だから・父親だからといった思いだけで、彼らの体験や声を聞こうとしないで判断していませんか?やる気の問題にすり替えて、対話の努力を怠っていませんか?
それを「弱さ」と捉える人もいるでしょう。悩んでいる暇があったら、少しでも動け。稼げ。それも確かにその通りです。
でも、心身ともにすり減らし、残り体力も少ない兵士を、圧倒的に不利な戦地へ送りますか?自分がそうした目に遭った時、本当に自分の力だけで立ち上がって、戦うことが出来ますか?あなたはそんなに強い人間ですか?と。
不謹慎ですが、川崎の例の事件を見た時、直感で「犯人はこうした経験をした人だ」と思ってしまいました。
周囲の男性像と自分のかい離。同世代と自分のかい離。家庭の状況と育ての親の意識。全てに疲れてしまって、一人で閉じこもるという選択をしたのかなと…。それなら誰も傷つかないかもしれませんから。
勿論、あの事件自体は許せるものではありません。ですが、大事なことは「犯人この野郎!」と怒りをぶつけることではなく、「どうすれば第2第3の潜在的な加害を防ぐことが出来るのか」ではないでしょうか。
引きこもっていたことが直接の要因になったかどうかは分かりませんが、周囲に自分の本音を漏らせる状況だったらどうだったんだろう...って。
働き方改革もそうです。見てくれの制度だけいくら整えても駄目。結局は目の前の社員の声をいくら聞けるかじゃないかなって。
勿論、社の方針として「こうしてほしい」という事はあります。でもそれだって、「一方的な命令」と「対等な会話の中でのすり合わせ」じゃ、その後の諸々に雲泥の差が出るのは当たり前じゃないでしょうか。
そして、そんな環境であれば、パタハラなんて起きないと思うんです。地域との関係や、実際の家族との関係だってそう。お互いの想いに耳を傾けて初めて、敬意も成功も生まれると思っています。
とりあえず感情の赴くままに吐き出しました。だって、僕もSNSに発散したっていうこの奥様の気持ち、とても分かるから。
パタハラはもう終わりにしたい。セクハラもパワハラもマタハラも。
そのために自分に出来ることをしていきます。
弱さとか、そういう話じゃない。同じ思いをする人を増やしたくないし、子供達にそんな可能性を残したくない。
当事者が出来る行動をしないで終わるのは嫌ですから。
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