図1

「カタール、OPEC脱退」から

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三点に注目したい 
 1.元をたどれば、トランプ
 2.絶好調期と絶望期が、最も危険
 3.サウジ獲り

関連代表記事 産経ニュース 2018.12.5 18:03
https://www.sankei.com/economy/news/181205/ecn1812050028-n1.html
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A 戦略か場当たり連鎖の偶然か。トランプさんの過激なアクションがドミノ倒し的に多方面に影響しており、ついにカタールのOPEC脱退にまで到達したようにも感じてくる。


B カタールのOPEC脱退としては、「政治的理由ではなく天然ガスの生産に注力するため」とされる。当然、これは表向きの情報として捉えるべき。Statistical review of world energy*1によると、原油の生産量/埋蔵量のグローバルランキングは次の通り。カタールはサウジやイランとの話題が多く石油色がイメージとして強いが、実際は石油資源でみると小国であり、OPEC内11位・OPECに対して生産量2%程度の貢献量である。

  (生産量、万バーレル/日)/(埋蔵量、億バーレル)
 1.アメリカ1,306 / ベネズエラ3,032
 2.サウジ1,195 / サウジ2,662
 3.ロシア1,126 / カナダ1,689
 4.イラン498 / イラン1,572
 5.カナダ483 / イラク1,488
 …
 14 ノルウェー197 / カタール252
 15 カタール192 / ブラジル128

 

A 同Statistical review of world energy*1から引用すると、天然ガスの生産量/埋蔵量は次の通り。石油と異なり天然ガスについてはグローバルな代表プレイヤーであり、資源も潤沢である。LNG輸出については世界トップ*2である。石油のOPECから離脱し、人口200万強の小国としてのリソースを、天然ガスに振り向けるのが合理的というのは、理解しやすい。

  (生産量、億m3/2017年)/(埋蔵量、兆m3)
 1.アメリカ7,345 / ロシア35
 2.ロシア6,356 / イラン33.2
 3.イラン2,239 / カタール24.9
 4.カナダ1,763 / トルクメニスタン19.5
 5.カタール1,757 / アメリカ8.7


B 表面上は理解しやすい天然ガスへのリソース配分だとして、その裏にあるサウジアラビアとの関係は見過ごせない。サウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦、エジプトから構成される中東の4カ国による、カタール国交断絶である。このカタール国交断絶により、カタールと、トルコやイランとの関係性が強化され、天然ガスというリソース利用も強化されるに至っている。カタールを痛めつけるどころか、逆に底力をつけさせたような結果である。皮肉的であり、嘗ての、貿易戦争でいじめられパワーアップした日本、を想起させるような事例でもある。


A カタール国境断絶へのキッカケを作ったのは、トランプさんといっていいだろう。サウジとイランの間に挟まれる形で、うまく立ち回っていたカタールという存在がある。スンニ派であり本来的にはサウジ寄りであるが、「天然ガス」という観点でイランとの強い軋轢を生むことはできない国である。イランとのガス交渉があり、自国の資源戦略を考えれば、カタールはイランとの中立的関係を保つことが必用であった。ここにトランプさんが土足で上がり込み、サウジとイランの関係性を最悪の形に転じた。サウジアラビア自体もイスラム同胞団などに大きく肩入れしてきたわけであるが、トランプさんのサウジ贔屓により、テロ温床としてのレッテルをべったりと貼られることとなった。犠牲者(国)ともいえる。


B サウジを筆頭にカタール断交という過激な策がとられ、カタールを島国化させる運河掘削案なども出てくる中で、OPECからの実利が低くコストが高い状況を考えれば、OPEC脱退というのは違和感のない打ち手である。


A OPECに注目すると、明らかに求心力が低下している。サウジが牛耳っているわけであるが、OPECプラスなども*3進んだ中で、OPEC単体での国際原油需給を安定化させることは不可能というのが現実だろう。2018年12月6日のOPECをみても、サウジのリーダーシップが削がれ、OPECプラスでのロシアの力が増してくる状況。サウジでのジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏問題もあり、アメリカからの圧力高まる中で、ムハンマド皇太子が不安定化している。


B OPEC脱退がカタールの報復だとすれば、タイミングは絶妙である。不安定化するサウジとOPECに対して脱退という行動をとることで、OPEC加盟の小国がいだく、サウジやOPECプラス(ロシア)への不信感を煽り、OPEC弱体化のキッカケにはなるかもしれない。カタール自体はイランやトルコとの信仰を深めており、弱体化するサウジ・OPECは、新たな規律を産む絶好の機会をイランに与えるものでもある。イランは冷静に今回のカタールの行動を調査・精査する立場をとり、OPECとしての新しいあり方提言へと繋げていけばよい。当然、イランとカタールは仲良くし続ければいい。


A 別の側面からみると偶然の玉突き事故の結果であろうが、トランプさんをキッカケに始まったサウジ/カタールの関係悪化が、原油価格への下方圧力をかけつづけているトランプさん方向性と整合するように、OPEC弱体化につながっているようにもみえる。戦略か偶然か。結果があれば何とでもいえるが、戦況は玉突き事故の様に変わること、そして、微小なキッカケであっても最後には大きな変化を産むことがあることを、よくよく考えさせられる。


B 小さな起点をつき、大きな変化を産むような戦略は強い。同時に、「絶好調、いけてる、余裕」…と絶好調期と、「もう無理、絶望、終わった」…と絶望情状況にある時が、もっともモロイ時、即ち、相手の謀略が見えず掌の上で踊る可能性が飛躍的に高まるフェーズであることは肝に銘じる必要がある。だからこそ、折れない心をもつ冷静な分析眼・感性が必用になる。


*1 BP Statistical review of world energy
 https://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html
*2 JETRO ビジネス短信 2017年の世界のLNG貿易
 https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/06/4258794ac6be3973.html
*3 Bloomberg 2018年12月7日 23:08 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-07/PJDDNF6TTDSG01

/ 2018.12.10 JK

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