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野良猫ミウからの伝言(1)

~住田町の野良猫ミウの物語~

表紙 

目次

前書き

この物語は、二〇一一年三月一一日の東日本大震災直後から働きをはじめた、アメリカのキリスト教災害支援団体が設置した、岩手県住田町のボランティアキャンプを舞台にしたものである。

献辞

このおはなしを、住田町のこうえんのテントにいた、すべてのにんげんたちにささげる。(ミウ)


第一章 出会い

ボクがある日、こうえんのそばをあるいていると、見たことのない大きなテントが四っもあったんだ。

ちょっとおもしろそうなので、ちかづいてみると、なんだかたくさんの、にんげんたちがいた。そこは、ボクのさんぽルートにしようと前から、かんがえていたから、もうすこし、しらべてやろうとおもったんだ。

それから三日ぐらいたったとき、ひとりのにんげんがボクをみて「ミウ」というからおどろいた。

なんだかそのにんげんは、ボクをおいかけてくるみたいだから、おもわず、にげたってわけ。だって、にんげんは、なにをするかわからないと、おかあさんに、いわれていたし、なかには、いしをなげたりするやつもいるって、きいていたから、ボク はとても、ちゅういしていたんだ。

そのときは、まだ、夏であついときだった。

だから、いつもはバッタやカエルをとってたべていたから、べつに、おなかがすいていたってわけじゃなかった。でも、なんだか、そこが、きになるから、まいにち、いくことにしたんだ。

そこのにんげんたちは、なんだか、いつもいそがしそうで、さわがしかった。あさになると、おおきな、くろいわっかがついた箱で、どこかに行くんだ。そして、ゆうがたになるとまた、おなじ箱にのって、かえってくる。

ボクはにんげんが、なにをしているのか、しりたくて、そっとテントに、ちかづいていったのさ。ゆうがたになると、にんげんのたべものの、においがしてきた。ボクは、にんげんのたべものは、たべたことがなかったから、すこしきょうみがあったってわけ。それで、ためしにビニールのふくろに入っていたべものを、あじみすることにした。

そしたら、けっこう、それがおいしいので、もっとたべてみようとしたんだ。そしたら、ボクを みつけたにんげんが

「おい、それはゴミだぞ。ちょっと待ってろ。」

というんだ。だから、ボクはそのにんげんがテントからでてくるのをまっていたんだ。

そのにんげんは、ちいさな、まるいものから、魚のにおいのするものを、だしてきた。それは、むかし、おかあさんにもらった魚とおなじ、においだったんだ。そのにんげんは、

「ほら、しゃけ缶だぞ、食べてごらん。」

といって、じめんにおいたんだ。

ボクがちいさなころ、おとうさんはよくいっていた。

「いいか、野良猫っていうのは、ぜったいじぶんでメシをさがすんだぞ。にんげんから食い物もらおうと思うなら、生きていけないからな。」

ボクはそのことを、おもいだしたから、その魚をたべようとはおもわなかった。だから、そのにんげんが、めのまえにだした魚のにくの、においを、かぐだけにしておいた。そうしたら、そのにんげんが、

「これはおいしいぞ。猫缶よりも少ししょっぱいけどな。」

というんだ。

ボクは、ちょっとおなかが、すいていたので、いっしゅん、たべてしまおうと、おもったのだけど、そのにんげんが、ボクにさわろうとしたから、右手【作者注・右足】でひっかいてやったんだ。

そうしたら、そのにんげんは、

「イタタター。うーん。まだ無理だなあ。まあ、そこに置いておくから、あとで食べるんだな。」

といって、テントにはいっていったんだ。ボクは

「ざまあみろ、のらねこはつよいんだぞ。」

と、しっぽをまっすぐにして、いってやったんだ。

>第二章


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