パン屋のおじさん82歳、温かい心遣いに涙した日曜の朝
1.日曜日の朝はパン屋のおじさんと会う日
毎週日曜の朝7時前、私は近所の商店街へ調理パンを買いに行っています。
朝早くから開いているパン屋さんは、今では珍しくなったと思います。
しかも安くておいしいので通い始め、もうかれこれ12、3年になりました。
店の奥では、体格のいい寡黙そうな男性がパンを焼いています。
店先で接客を担当しているのは、82歳のおじさんです。おじさんはほっそりしていて明るく、冗談が大好きです。
(おじいさんの年齢なのですが「おじさん」と呼んでいます)
二人は親子だそうですが、全く正反対の感じです。
私はおじさんと、すっかり顔なじみになりました。
私が好きなパンを黙っておまけで1個入れてくださっていたり、ある時はパンを焼く機械でサツマイモを焼き、ホクホク熱々の焼き芋をいただくこともありました。
2.介護疲れの私を黙って励ましてくれたおじさん
以前義母が入院していた時、私は同室だった患者さんのご家族に
このパン屋さんをお勧めしたことがあります。
そしてその方から、
当時私が舅&姑の二人の介護をしていたことをパン屋のおじさんは知ることになりました。
ある時おじさんは常連の漁師さんから魚をもらい、それを自分で味噌漬けにして私に渡してくださいました。
「これは2日冷蔵庫で寝かして食べてや。」私が遠慮すると、
「奥さん(私)にと違うで!退院したおばあちゃんに食べてもらってな!」
この言葉は、遠慮する私への気遣いだと感じました。お心遣いが温かくて、泣きそうになりました。その頃の私は、介護疲れのピークでしたので……
おじさんはその件に関しては何もおっしゃりませんでしたが、きっと私の状態を感じとっておられたのでしょう。
3.いつも明るく元気なおじさんがお休み!?
先週の日曜日の朝、パン屋のおじさんはお休みでした。
「ちょっと具合が悪くて休ませました。家で寝ています。」
(その日は、息子さんが一人で切り盛りされていました)
いつの間にか私は
「おっはよ~!!」
と、日曜の朝、おじさんに大きな声で迎えてもらえるのが当たり前のことになっていました。
先日お休みと聞いた時は、自分でもビックリするくらいにショックでした。寂しくなりました。良くなって店に出てこられたら、おじさんのお顔をしっかり心に刻んでおこうとさえ思いました。
週1回の何気ない交流は、私にとって非常に大切なものだったことを気づかせていただきました。そして残念ではありますが、それが永遠ではないことも同時に気づかせていただきました。
おじさん、早く良くなってね!
4.そして1週間後の日曜の朝
「おじさん今朝は、いるかな?」
昨日の朝は期待と不安で、いつもの商店街のパン屋さんへ行きました。
「おっはよ~!!」
あー、良かった!元気のいい声が聞こえました。
「おじさん、先週は会えんかって寂しかったわ!」
「心配したよ…」と、思わず口から出ました。
「いや~、申し訳ない…」「もうすっかり元気やで!」
笑顔で答えるおじさんのお顔、もともと細い顔が更に細くなっていました。
私はそれには触れず、いつものおじさんの冗談やダジャレを聞いて、笑っていました。
私が帰る時です。おじさんが大きな声で私を呼び留めました。
「ご主人、中国で大変やな!よろしく言うといてな。」
「ありがとう!昨日も電話したけど、元気やって言ってましたよ。」
家に帰って袋からパンを出すと、底からビニールに包まれたものが出てきました。鯖(さば)の味噌漬けです。おじさんお手製の。
「2日間冷蔵庫で寝かせてから食べて」
と、ビニールに貼り付けた紙切れにマジックで書いてありました。
病みあがりなのに気にかけてくださって、おじさん、ありがとう!
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