ダイジョーブタ

“普通”なこと、いつもの日々。そんな日々でも、はっと立ち止まる瞬間が。 そんな時、そっ…

ダイジョーブタ

“普通”なこと、いつもの日々。そんな日々でも、はっと立ち止まる瞬間が。 そんな時、そっとダイジョーブタが手を差し伸べてくれます。

最近の記事

ひとりはなんでもできる至福のとき #5

翌朝、鳥のさえずりでパチッと目が覚めたフー子 「目覚ましをかけずに起きたのって、久しぶり・・・」 窓を開けると、目の前に美しい湖が見えた。 深呼吸をすると、昨日感じていた寂しさもすっかり消えている。 着替えてナチュラルメイクをすると、ウキウキと朝の散歩にでかけた。 携帯禁止ってことにしたから・・・と、 ホテルの受付で便箋と封筒をもらい、湖に向かった。 湖畔のベンチに座り、便箋に『ダイジョーブタへ』と書いてみる。 『これが届く頃には、私は家に帰っているけれど・・・  ひと

    • ひとりはなんでもできる至福のとき #4

      夜、客室に敷いたふかふかの布団の中で、フー子は携帯を手に取っていた。 「LINEやメールはしないって言ったけど、写真を見るのはいいよね?」 誰に許可を取ってんだろう・・・と呟きながら、写真フォルダを開いてみる。 たくさんの自撮り写真にも、ダイジョーブタが一緒に写っているのが多く 顔を寄せて撮っている写真を見るだけで、なんとなく心が癒されてきた。 中庭での写真には大家さんや、気のおけない友人たちが笑顔を向けている。 ダイジョーブタ、今頃どうしているかな・・・ フー子は

      • ひとりはなんでもできる至福の時 #3

        宿帳に住所と名前を記入し、 1名と書いてため息をつくフー子に「どうかされましたか?」と 対応してくれた和服姿の女将が、心配そうな表情を浮かべた。 「あ、なんでもないです・・・いい旅館ですね」 「ありがとうございます。ごゆっくりおくつろぎくださいね」 女将の先導で、離れにある客室に案内され、一通りの説明を受けたフー子は ひとりになると、ごろんと畳の上に大の字に寝転んだ。 「ダイジョーブタといつも一緒ってわけじゃないのに、なんだか妙に寂しくなっちゃうな・・・」 どのくらい

        • ひとりはなんでもできる至福のとき #2

          まだ夜が明けたばかりの薄暗い部屋の中、 小さなトランクを手にしたフー子が玄関のドアを開けようとすると 「フーちゃん?」 と物音に気づいたパジャマ姿のダイジョーブタが、 眠い目をこすりながら出てきた。 「もうっ、なんで起きちゃうの?静かに出て行こうと思ったのに〜」 「声かけてくれれば、朝ごはん作ったのに」 キッチンに置いたパンを手にするダイジョーブタに 「いいの!・・・見送られると寂しくなるから、送らなくていいからね!」と、フー子は寂しさを紛らわすように喋り続けた。 「たっ

        ひとりはなんでもできる至福のとき #5

          ひとりはなんでもできる至福のとき #1

          「有給は・・・まだ消化できてないです。でも休むタイミングもなかなかなくて・・・」  担当者に呼び出されたフーコがそう言い訳をすると、上司はため息をついた。 「有給は何のためにあるのか、知ってます?日頃の疲れをとってもらうのと同じくらいに、労働力を維持してもらうためなんです。無理にでもとってください。」 「・・・はい」 *     *     * 「休まないで注意されるって、なんかおかしいよ」  仕事を終えて帰宅したフー子が、カレーを食卓に並べるダイジョーブタに  愚痴を呟

          ひとりはなんでもできる至福のとき #1

          キミの楽しそうな姿こそ、親が一番望んでいること

          「・・・うん、じゃあ明日ね」 電話を切ったフー子が大きくため息をついた。 「フーちゃん、どうしたの?お母さんからの電話でしょ?」 「うん・・・お母さんが、明日こっちに遊びにくるっていうから・・・」 離れて暮らす両親とは仲がいいはずなのに、なぜかフー子は浮かない表情を浮かべていた。 「昼間に観光をしてから、泊まるみたい」 部屋の掃除を始めるフー子がぽつりぽつりと話し始めた。 「お母さんはね、私が何年か社会人として働いたら、仕事をやめて結婚してほしいって思ってるみたいなの・・・

          キミの楽しそうな姿こそ、親が一番望んでいること

          そっちがキミのメインルート#5

          「ヤッホー!」 さんかく山の頂上に着いて、 清々しい表情を浮かべながら、フー子が向かいの山に向かって叫んだ。 「登りきったね!気持ちいーーーー!」 ダイジョーブタはリュックからコッヘルやバーナーを出して さっそく昼ごはんの準備に取り掛かっている。 カレーのレトルトをコッヘルに入れて火にかけると、すぐにいい匂いがしてきた。 「お腹空いた〜!途中からずっとお腹がなってたんだ!」 「それはよかった。さ、すぐに出来るから準備手伝って?」  二人で昼食の準備をしていると、視線の先に登山

          そっちがキミのメインルート#5

          そっちがキミのメインルート#4

          ゆるやかな坂道を進みながら 「さっき話した上級者ルートで登った友人はね・・・」と、 歩きながらふいにフー子が同僚のことを話始めた。 同期入社してからずっと同じ部署で仕事をしてきたその同僚は フー子よりも早くに仕事が認められ、今はチームリーダーを任せられるほどになっていた。 厳しい状況に自分を追い込むのが好きだという同僚についていこうと フー子も仕事をしていたけれど、実力の差なのか最近はずいぶん離されてしまった気がしていた。 「自分にも他人にも厳しい友人だから、最短で昇級し

          そっちがキミのメインルート#4

          そっちがキミのメインルート#3

          長い時間迷っているダイジョーブタを見て、 「そんなに慎重にならなくてもいいのに・・・」 とフー子は心の中で思いながら、どうにか説得しようと試みた。 「会社の同僚の女性がね、このあいだ上級者ルートを登ったんだって。  滝のそばを歩いたり、ハシゴとかガレ場もあるみたいだけど、  全然問題なかったって言ってたよ。  大人はだいたいこっちなんだし、早く着くし・・・」 「でもフーちゃんはその人と同じじゃないでしょ?最近疲れているって  わかってるんだから、こっちにしよう」 「うーん・

          そっちがキミのメインルート#3

          そっちがキミのメインルート #2

          仕事の時は、目覚ましをいくつも鳴らさないと起きられないのに 楽しみのある日は、どうして早く起きられるんだろう・・・。 翌朝、フー子はパチッと目を覚まして、勢いよく部屋のカーテンを開けた。 「天気予報大当たり!」 窓を開けて、朝の清々しい空気を吸い込んで空を見上げると 見事な朝焼けが広がっていた。 「絶対いい日になるはず!ダイジョーブタ〜!起きた〜?」 着替えながら声をかけると、トレッキングに身を包んだダイジョーブタがドアを開けた。 「フーちゃん、おはよう!あれ?目覚まし時

          そっちがキミのメインルート #2

          そっちがキミのメインルート#1

          「よかった!明日晴れるって!」 フー子はテレビの天気予報を横目に、クローゼットからトレッキングウェアを引っ張り出した。 「わたしも前は山ガールだったんだよ〜」 と鮮やかなウェアを体にあててご満悦のフー子にダイジョーブタは 「フーちゃん、それ着て本当に山に登ったことあるの?全部新品みたいに見えるよ…」 と細かくウェアをチェックし始めた。 「登ったことあるって!本当はいつでも登りたかったんだけど、時間がなかっただけ!」 山登りってね、運動にもなるし、空気も綺麗だし、自然にも触れ

          そっちがキミのメインルート#1

          新しいものに心を開こう。

          「大家さんって、どうしてあんなに素敵なんだろう・・・」 中庭でハーブを摘んでいる大家さんのことを、フー子は自室の窓辺から 憧れの目で見つめていた。 シルバーヘアをいつもきれいに整え 明るめの口紅を塗って、ビビッドな色のワンピースを着ていて とても70代には見えない・・・。 フー子は、そんな大家さんのスタイルに憧れを抱いていた。 趣味も多彩で、料理もプロみたい・・・ そんな大家さんが、最近近所の大学に通う学生たちを 中庭に招いているのをフー子は見かけていた。 「大家さん

          新しいものに心を開こう。

          負担になることは、無理して引き受けないこと #5

          朝から疲れた表情の自分にショックを受けたフー子は、 リビングに戻って食事を前にしても、気持ちが沈んだままだった。 ダイジョーブタがフー子の前に座り、諭すように話かける。 「さっき、大丈夫、大丈夫って言ったよね」 「・・・うん」 「大丈夫じゃない時って、人はだいたい2回繰り返すんだよ」 ドキッとしたフー子は、反論する言葉が見つからなかった。 「朝ごはんって、今日も1日頑張るために食べるものだって知ってる?」 「・・・そうだよね」 「急いで仕事に行くよりも、今日1日をいい日

          負担になることは、無理して引き受けないこと #5

          負担になることは、無理して引き受けないこと #4

          翌朝。 『ピピピピ・・・ピピピピ・・・』 フー子がベッドサイドに手を伸ばして時計を手探りで止めようとするが、 半分夢の中だからか空振りばかり。 『ピピ・・・ピピ・・・ピピ・・・』アラームがどんどん大きくなる。 「起きる!起きるって!」手探りで止めるのを諦めて、体を起こすフー子。 薄いカーテンから朝の日差しを感じる。 「仕事行く準備しなくっちゃ・・・」 貧血というわけでもないのに、朝すっきりと起きられないのは、 睡眠だけじゃフル充電になれないからな・・・そんなことを思いながら、

          負担になることは、無理して引き受けないこと #4

          負担になることは無理して引き受けないこと #3

          仕事を頼まれた同僚は、ミスの少ない丁寧な仕事をする人なので フー子はいつも以上に確認しながら仕事を進めていた。 自分がミスをしたら、同僚に迷惑がかかってしまう・・・。 そう思うと慎重に進めなくてはいけないので、いつもより時間がかかってしまう。だんだん目が乾いてきて、目薬をさす回数が増えてきたけど、あともう少し・・・。 ******* 22時。 警備員のおじさんに「遅くまでお疲れ様。あんまり無理しちゃダメだよ」と声をかけられ、フー子は会社を後にした。 下りの電車の車内で

          負担になることは無理して引き受けないこと #3

          負担になることは無理して引き受けないこと#2

          急に肩の重みを感じて、フー子はうーんと首を伸ばした。 同じ姿勢でデスクに向かっていると、首と肩にずしんと重みを感じる時がある。 これが頭の重さなのかな・・・と手で肩をほぐしつつ、ふと目線を窓の外に向けると、きれいな夜景が広がっていた。 「あの明かりの下では、私みたいに今も仕事をしている人たちがいるんだよね・・・」 フー子はオフィスから見る都会の夜景も気に入っていた。 頑張っているのは私だけじゃないと感じることが出来るから。 ******** 20時すぎのオフィスビルは

          負担になることは無理して引き受けないこと#2