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そっちがキミのメインルート #2

仕事の時は、目覚ましをいくつも鳴らさないと起きられないのに
楽しみのある日は、どうして早く起きられるんだろう・・・。


翌朝、フー子はパチッと目を覚まして、勢いよく部屋のカーテンを開けた。
「天気予報大当たり!」
窓を開けて、朝の清々しい空気を吸い込んで空を見上げると
見事な朝焼けが広がっていた。


「絶対いい日になるはず!ダイジョーブタ〜!起きた〜?」
着替えながら声をかけると、トレッキングに身を包んだダイジョーブタがドアを開けた。
「フーちゃん、おはよう!あれ?目覚まし時計の音聞こえなかったけど…」
「目覚ましなんて必要ないもん!さ、準備して出かけよう!」
「その前にちゃんとご飯食べないとね。今朝はフーちゃんの好きなオムライスだよ」
「ありがと!」
準備万端な二人は、オムライスの朝食を食べて、すぐに家を出た。

早朝の下り電車は乗客もまばらで、二人が座った8人掛けのイスには
他には座っている人はいなかった。


電車に揺られながら、ふとダイジョーブタは、気になっていたことを聞いてみた。
「フーちゃん、どうして急に山登りなの?」
「・・・実は、最近なんだか仕事の疲れがとれなくてね」
「うん、それはなんとなく分かってたけど、疲れてるのに、体力を使うことして大丈夫?」


「体はそんなに疲れてないの。ただ心が疲れちゃってるっていうか…
   人間関係がうまくいかなくてね」
「さっきもフーちゃんの好きなオムライス、ちょっと残しちゃってたもんね」
「ごめんね…。食欲もあんまり出なくて。だから、ちょっと気分転換したくて」
イスに並んで座ってリュックをぎゅっと握りしめるフー子の肩を、ポンとダイジョーブタがたたいた。
「うん!そういう時は、自然の中に出てみるといいよね。今日は楽しもう!」

二人の家を出発して小一時間で、さんかく山の登山口のそばの駅に着いた。
「ほとんどの人がここで降りるんだね」
「リュックにトレッキングウェアの人ばっかり・・・私たちも頑張ろうね!」

駅を出て少し歩くと『さんかく山ルート』の看板が見えてきた。
「下調べしてきたから悩まないよ。こっちのルートでいこう!」


フー子が指を差したのは、山岳地図で予習をしてきた、歩行時間の短い上級者ルート。
「ね、もう一度考えてみない?」と、看板をじっくり見ていたダイジョーブタが提案をしてきた。
「え?ここで迷ったらなかなか頂上に着かないよ。これから先は長いのに」
「フーちゃんは時間のことばかり気にしているね。無理しないで初心者ルートにしようよ」
ダイジョーブタが、初心者ルートを指さした。


「えー?なんかそっちだと山登りをしてるって実感がわかない気がするよ。それに時間もかなりかかるみたいだし」


二人の脇を、登山客たちがどんどん通り過ぎていく。
「ほら・・・上級者ルートを選ぶ人の方が多いし、大丈夫じゃない?」


フー子にそう言われても、ダイジョーブタは腕を組んで黙っていた。

                             <つづく

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西  祐子


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