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ひとりはなんでもできる至福のとき #1

「有給は・・・まだ消化できてないです。でも休むタイミングもなかなかなくて・・・」
 担当者に呼び出されたフーコがそう言い訳をすると、上司はため息をついた。
「有給は何のためにあるのか、知ってます?日頃の疲れをとってもらうのと同じくらいに、労働力を維持してもらうためなんです。無理にでもとってください。」
「・・・はい」

*     *     *

「休まないで注意されるって、なんかおかしいよ」
 仕事を終えて帰宅したフー子が、カレーを食卓に並べるダイジョーブタに
 愚痴を呟いた。
「はい。カレーでも食べて、機嫌をなおしたら?」
「うん・・・。いただきます」
 フー子は笑顔を見せた。
「おいしい!やっぱりダイジョーブタの作るご飯が世界一だね」
 ミネラルウォーターを手に、ダイジョーブタが席に着いた。

「フーちゃん、それでどうするの?」
「ん?」
「有給、とるんでしょ?」
「うーん。でも休んでも特にすることないし・・・」
  カレーを食べながら首をかしげるフー子に、ダイジョーブタがある提案をした。

「たまには旅行でもしたら?」
「旅行?でも私は、家にいるのが好きだしなぁ」
   消極的なフー子に、ダイジョーブタが1冊の雑誌を持ってきて、
  パラパラと  ページをめくった。
「ほら、ここ行ってみたくない?」
「うわぁ〜〜〜!」
   青いインクを垂らしたような、透き通ったブルーの湖の写真を見て
   フー子は思わず感嘆の声を上げた。
「行きたい!ここ日本?」
「うん、行っておいで」
「・・・え?ダイジョーブタも行くでしょ?」
「たまには一人で行ってきたら?」
 当たり前に一緒に行くつもりだったフー子は、ダイジョーブタに
 意外な提案をされて、思わずカレーを食べていた手が止まってしまった。

「かわいい子には旅をさせよって、言うじゃない?」と
 ブタのくせにウインクをしてくるダイジョーブタに、
 言葉が続かないフー子だった。

                                                                                                                    <つづく

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西  祐子

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