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負担になることは無理して引き受けないこと #3

仕事を頼まれた同僚は、ミスの少ない丁寧な仕事をする人なので
フー子はいつも以上に確認しながら仕事を進めていた。

自分がミスをしたら、同僚に迷惑がかかってしまう・・・。

そう思うと慎重に進めなくてはいけないので、いつもより時間がかかってしまう。だんだん目が乾いてきて、目薬をさす回数が増えてきたけど、あともう少し・・・。

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22時。
警備員のおじさんに「遅くまでお疲れ様。あんまり無理しちゃダメだよ」と声をかけられ、フー子は会社を後にした。
下りの電車の車内では、フー子と同じように会社帰りのひとたちが揺られている。運良く座席に座れて、カバンから読みかけの文庫本をだしてみたけれど、ページをめくる前に、まぶたは徐々に閉じてしまった。
電車の揺れに身を任せながら、この小説の続きは一体いつ読めるのかなぁ・・・。

*******

明かりが灯る家に帰ってきたフー子を「おかえり!」とダイジョーブタが
迎えてくれた。
「フーちゃん、ご飯ちゃんと食べた?」心配そうに聞くダイジョーブタに頷きつつ、キッチンからいい匂いがしてくるのに気づく。
「ダイジョーブタ、ごめんね・・・せっかく作ってくれたのに」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ!シチューは1日寝かせる方がおいしくなるしね。野菜をたっぷり入れた栄養満点のシチューだから、明日の楽しみができたね」

*******

お風呂に入ってさっぱりしたフー子に、ダイジョーブタがカモミールティを入れてくれる。

「少しハチミツとミルクを入れると、もっとリラックスできると思うよ」
ダイジョーブタが器用にティーカップにミルクを注ぐ。
「ありがとう・・・。私だったら水でいい、なんて思っちゃうかも」
「そのカモミール、大家さんが庭で育てたんだって。さっき持ってきてくれたんだ。」
「わたしもハーブとか・・・ホントは・・・育ててみたい・・・ZZZ」
そう言いながら、フー子はウトウトしそうになる。

「フーちゃん。また、誰かの仕事を代わってあげたりしたんじゃない?」
「えっ なんでわかるの?」
「フーちゃんのことはなんでもわかるよ。何年一緒にいると思ってるの?」
「ええと・・・ダイジョーブタが私のところに来たのは子供の時だから
 ・・・そっか。誰よりも一緒にいる時間が長いんだね」
フー子のまぶたが今にも閉じそうになってきている。
「今日はもうバッテリー切れしているよ。早く眠って充電を満タンにしなくちゃ」
そうか、眠ると充電できるんだ・・・と半分眠りながらフー子は呟いた。
「おやすみ、フーちゃん」
「うん。明日も頑張らなきゃ。おやすみ、ダイジョーブタ」

                             <つづく

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西  祐子

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