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負担になることは、無理して引き受けないこと #4

翌朝。
『ピピピピ・・・ピピピピ・・・』
フー子がベッドサイドに手を伸ばして時計を手探りで止めようとするが、
半分夢の中だからか空振りばかり。
『ピピ・・・ピピ・・・ピピ・・・』アラームがどんどん大きくなる。
「起きる!起きるって!」手探りで止めるのを諦めて、体を起こすフー子。
薄いカーテンから朝の日差しを感じる。
「仕事行く準備しなくっちゃ・・・」
貧血というわけでもないのに、朝すっきりと起きられないのは、
睡眠だけじゃフル充電になれないからな・・・そんなことを思いながら、
ベッドメイキングもせずに慌てて部屋を出て行った。

******

「フーちゃん、おはよう。朝ごはん食べよ?」
「おはよ。でも、あんまりお腹空いてないかも・・・」
そんなフー子をイスに座らせて、ダイジョーブタが目の前に焼きたてのハムエッグを置いた。
「ありがと・・・せっかく作ってくれたんだもんね。ちょっと食べようかな」
しかし朝食を前にしても、フー子はあまり食が進まない。
「頼まれた仕事、ちゃんとできたか不安・・・会社に向かおうかな」
「でも、まだだいぶ早いよね?」
「そうなんだけど・・・自分の仕事も結構溜まっててね」
「それって、そんなに急がないと終わらないの?」
「ううん・・・。でも気になることがあると
 そればかり考えちゃって、食べ物の味もわかんなくなっちゃうの」
そう言って、思わずフー子はため息をついてしまう。
「・・・フーちゃん、疲れてない?」
「大丈夫。だって職場の友達のためになることをしてるんだもん。役に立つなら全然平気だよ」
そう言って自室に戻るフー子を、ダイジョーブタがじっと見つめて呟いた。
「全然ダイジョーブじゃなさそうだ」

******

コンコン
「フーちゃん入るよ」
エプロンをつけたままのダイジョーブタが、スーツに着替えたフー子の前に立ちはだかった。
「どうしたの?」
「フーちゃん、最近鏡見てる?」
「え?」
ダイジョーブタが、手鏡をフー子の前に突き出した。
「なぁに?・・・これ、私!?」
鏡に映るフー子は、つやのない髪で肌荒れもひどく、疲れた表情をしていた。
「良いことをしているはずなのに、どうしてそんなに辛そうなの?」
「・・・・・・」

「それはさ、無理をしているからなんだよ・・・・」

                             <つづく

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西 祐子


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