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キミの楽しそうな姿こそ、親が一番望んでいること

「・・・うん、じゃあ明日ね」
電話を切ったフー子が大きくため息をついた。
「フーちゃん、どうしたの?お母さんからの電話でしょ?」
「うん・・・お母さんが、明日こっちに遊びにくるっていうから・・・」
離れて暮らす両親とは仲がいいはずなのに、なぜかフー子は浮かない表情を浮かべていた。

「昼間に観光をしてから、泊まるみたい」
部屋の掃除を始めるフー子がぽつりぽつりと話し始めた。
「お母さんはね、私が何年か社会人として働いたら、仕事をやめて結婚してほしいって思ってるみたいなの・・・」

「地元に住んでいる親友に、最近子供が生まれたことも関係してるのかも。私は一人っ子だし、きっと孫の顔も見たいんだと思う。だから明日急に来るのも、私が結婚しないのかって聞きに来るんだと思う」
「それで、暗い顔してるの?」
「っていうか、お父さんもお母さんも、こんなふうに生きてほしいっていう理想があると思うんだ。でも、私はその期待に応えられてないと思ってね」

棚を拭く手が止まってしまうフー子に
「それはどうかな・・・」とダイジョーブタは疑問を投げかけた。
「お母さんは、フーちゃんが言うようにこんなふうに生きてほしいっていう理想があると思うんだ。でも、私はその期待に応えられないと思ってね」

棚を拭く手が止まってしまうフー子に、
「それはどうかな・・・」とダイジョーブタは疑問を投げかけた。
「お母さんは、フーちゃんが言うようにこんなふうに暮らしてほしいっていう希望はあるかもしれない」
「うん」
「でもね、それって自分の娘の幸せを願っているからだよね、お母さんの願いって、全部それが基準じゃないかな?」
「私の、幸せが?」
「うん」
「だって、フーちゃんもそうでしょ?」
「私も?」

「・・・私は、お父さんとお母さんが幸せでいてくれたから、何もいらないっていうか」
「同じだと思うんだ。もし、お母さんがフーちゃんに結婚を望んでいるって伝えてきたら、フーちゃんの今の気持ちをそのまま伝えてみたら?」
「・・・私は、今楽しく暮らしてるって?」
「そう。それがお母さんたちにとって一番聞きたいことだよね?答えはとってもシンプルだと思うんだ」

しばらく考えたフー子は、中庭で草むしりをしている大家さんを見つけて、あることを思いついた。
「明日お母さんも一緒に、中庭でバーベキューしてもいいかって大家さんに聞いてみようかな」
「バーベキュー?」
「うん。みんなにも声かけて。私たちが一緒に暮らす仲間を、お母さんに紹介したいの」
「いいと思うよ」
「こんなふうに楽しく暮らしてるから、安心してってお母さんに伝えたくて」
そう言って、フー子は中庭に飛び出して行った。

                             <おわり>

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西  祐子

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