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負担になることは無理して引き受けないこと#2

急に肩の重みを感じて、フー子はうーんと首を伸ばした。

同じ姿勢でデスクに向かっていると、首と肩にずしんと重みを感じる時がある。
これが頭の重さなのかな・・・と手で肩をほぐしつつ、ふと目線を窓の外に向けると、きれいな夜景が広がっていた。

「あの明かりの下では、私みたいに今も仕事をしている人たちがいるんだよね・・・」
フー子はオフィスから見る都会の夜景も気に入っていた。
頑張っているのは私だけじゃないと感じることが出来るから。

********

20時すぎのオフィスビルは、まだ明かりが灯っているところが多い。
思ったよりも仕事に時間がかかり、同僚のデスクからもキーボードを打つ音だけが聞こえていた。
私が仕事を全部引き受ければ、すぐに彼の元に行けるんだよね・・・。

そう思ってフー子は立ち上がり、同僚の元に向かった。

「あとは私がやるからいいよ!彼が持ってるんでしょ?」
「でも・・・」
「大丈夫!気にしないで。私の方はもうすぐ終わるから。」
同僚は遠慮がちに頷きながらも、すぐに荷物をまとめ始めた。
「じゃあ、よろしくねー」と笑顔でさっさと退社する同僚に
「お疲れ様!」と声をかけてデスクに戻って一人きりになると
急にオフィスが広くなったような錯覚に陥る。

想像以上の仕事量に、一瞬ため息をついてしまうが
困っている人がいるとつい助けてあげたくなってしまうのは
子供の頃からの性分で、誰かのためになることはフー子にとっての喜びだった。

********

「あっ!忘れてた・・・!」
気がつくとダイジョーブタに帰ると言った時間をとっくに過ぎていた。
「ダイジョーブタ、きっと怒ってるよね・・・」慌てて携帯を手にして電話をかける。
「もしもし、ごめんね。まだ会社なの・・・。仕事が終わらなくて」
「じゃあ、ご飯先に食べとくね。フーちゃんも何か食べなきゃダメだよ。
 食事抜きが一番お肌にも悪いんだからね。」
「そうだね・・・。ありがとう!」
フー子は財布を手にして、慌ててコンビニに夕食を買いに行った。
油物は避けて雑穀米を選び、5分でオフィスに戻ってパソコンを開いたまま急いで食べ始める。
「コーヒーを飲みたいところだけど・・・仕事進めなきゃ」
食事をしながらも、横に置いた資料の束が目に入ってしまい、
急にプレッシャーを感じて思わず手が止まる。

”仕事を負担に思ってしまうのは、間違いだよね”
私は友達のためになることをしているんだから、全然大丈夫!

と、一瞬かすめたモヤッとした気持ちをすぐに打ち消して
もうちょっと頑張ろうと急いで食事を終わらせた。

                             <つづく

イラスト:かわい ひろみ
物語作 :今西  祐子

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