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オタク女子が、4人で暮らしてみたら。/藤谷千明

私は一週間に一回以上は本屋に行く。
本屋に行かないと生きていけないのだ。

 
私は先月、某TSUTAYAに行った。

そのTSUTAYAは一定時間内に買い物をしないと駐車料金が派生するが
何も慌てることはない。

私が本を買わないことは基本ないほど
その本屋は充実しており
私の聖域となっていた。 

だから、駐車料金を支払ったことは一度もない。
必ず何かしらを買い、駐車料金は無料となる。

 
 
駐車券を取り、マスクを着用し、慣れた様子で自動ドアをくぐる。
慌てることは何もないが
本屋好きな私はルンルンしながら
やや早足になって自動ドアを通過する。
移転前から含めたら、そのTSUTAYAとは約30年の付き合いだ。
年季が違う。

 
 
自動ドアの目の前には、新刊や話題の本がズラリと並ぶ。

ほほう、こんな本があるのね
へぇ、こんな本があるのね

と、じっくり観察してから
私は小説エリアの棚付近に移動する。

 
そこには中と小のかごがあり
私は手慣れた様子で中のかごをとる。
本当にこのTSUTAYAは品揃えがよく
思わぬ一品によく出会うのだ。

 
かごを持った状態で、エッセイやエッセイ漫画エリアを通過し、コミックス新刊をチェックし
その後に小説や旅行本、料理本、雑誌と
順々にチェックしていく。
場合によっては小説を見た後に、仕事や資格関係の本や絵本エリアもチェックするが
これだけのエリアをふんふんしながら見ても
一時間もかからない。

 
基本的に立ち読みはしないので
買うか、買わないかの二択しかない。
読みたくなったら買うべしだ。
読みたいという自分の気持ちに嘘は吐いてはいけない。

 
 
その日、買い物かごの中には今日の戦利品とでもいうべき本が8冊入っていた。
小説から漫画まで様々である。
駐車券と諭吉をスッと差し出し、ブックカバーをつけてもらいたい本を指示し
エコバッグを広げて次々に本を入れていく。

 
 
エコバッグを持つと、本の重みをズッシリ感じた。
これは幸せの重みである。

 
今日もいい本と出会えた。
あぁ読むのが楽しみだ。

 
そう思うと、帰りの自動ドアを通る時には
ワクワクやウキウキの気分しかない。

 
 
私が今から紹介する本は、その8冊の内の一冊であった。

 
 

 
 
【オタク女子が、4人で暮らしてみたら。】

タイトルが実にストレートに内容を示していていい。
紫やピンクを基調としたゆるいイラストの女の子の表紙やタイトルにつられて
出会ってから3分しない内に、買い物かごにインした。

 
帯には阿佐ヶ谷姉妹の名前とコメントがある。

私は阿佐ヶ谷姉妹が好きだし
前々から親友に
将来的には阿佐ヶ谷姉妹のように隣同士で暮らしたいと言われていた。
阿佐ヶ谷姉妹の文字があったのも強かった。

 
 
家に帰った私は手洗いをして部屋着に着替えて、ルンルンしながら表紙をめくった。
てっきり4人のオタクはアラサーかと思いきや

 
全員30代であり
アラフォーであることを知り

 
私は前のめりになった。
私と世代が同じ女性だからである。
現在、私は実家暮らしだが、ルームシェアに興味があるので
「おぉぉぉぉ!」となった。
自分と同じ世代の女性がどのように生きているかは気になるところである。

私はオタクである。
主に漫画オタクだが、アニメやゲームや音楽と
ジャンルは多岐に渡り、趣味が多い。

 
だからオタクであり
同世代であり
未婚であるというところに
激しい仲間意識を感じた。

 
  
結婚をせずに四人のオタクアラフォー女性がルームシェアするという話が
漫画のネタではなく、実際の話である時点で
身近に感じずにはいられなかった。

 
 
 
私が今まで出会ったルームシェアのエッセイ(漫画)は
どちらもアラサー女子が主人公だった。

 
 
以前、【東京ルームシェア生活】というエッセイ漫画を読んだ。

こちらはオタクではなく、性格の違うアラサー女性三人がルームシェアをしていて
その生活も楽しそうではあったが
作者の方がやがて結婚して出産して
この家からは出たようである。

  
他の二人は新たな同居人を募ったのか、結婚や出産の際に揉めなかったのかが気になったが
その辺は触れていないので分からない。

 
ただ、アラサー女性のルームシェアはこの結婚や出産によるルームシェア解消のリスクがどうしてもつきまとう。


  
 

 
続いて出会ったのは、オタクのアラサー女子が二人暮らしをする話である。
【オタシェア! エロゲ女子×腐女子×ルームシェア】
こちらもタイトルでおおよそ内容が分かる。
エッセイコミックの場合はタイトルで中身が分かりやすいものが絶対に良い。

 
こちらはなんと四冊も続いている。

エッセイコミックは大抵一冊のみだったり、続編があっても巻数はつかないので
こちらは反響や人気が高い作品だということが
この事実だけで分かる。
 
オタクのジャンルは違いつつも、時に布教し、理解しきれなくても否定はせず
お互いに趣味や仕事を楽しみつつ
仲良く暮らしている描写が良い。

おまけに猫まで飼っている。
かわいい女の子と猫がいるルームシェアは
もう結婚がいらない気さえしてきた。

 
連載が終了したので
その後二人がまだ暮らしているのか
ルームシェアを解消したのかは謎のままである。 

 
 
 
 
私はこれらのアラサー女子ルームシェア本もタイトル買いをした。

私は、同世代のルームシェア生活に興味があったのだ。

 
 
ちょうど私が大学生の頃にルームシェアという文化が出てきて
家賃を折半して安く、広い家をシェアする若者が増えてきた。

ドラマ「ラスト・フレンズ」(2008年)でもルームシェア生活をしていたし
時代はそういう流れになっていた。

 
若者は自由を求め、趣味を求め
結婚が必ずしも幸せとは思えない若者が増え
ただ孤独感はあるし
仲間内でわいわい騒げたら楽しそうという考えの方に
ルームシェア生活物件はありがたいようだった。

 
中には
恋愛にあまり興味がなかったり
失恋をしたり
それで恋愛や結婚に対する未来が見えなくなった
そんな方もルームシェアに走ったようだ。

 
 
実際、私の男友達は恋愛にあまり興味がなく
一人暮らしを経て、男性四人でルームシェア生活をしていた。
私の身近なルームシェア生活体験者だ。

 
エッセイ漫画に書かれているように
定番のバーベキューや家事分業、家賃折半といいところもたくさんあったようだし
彼や同居人はオタク率が高かったので
みんなで夜通しゲームをしたりと
楽しい生活だったようだ。

 
だが、最終的にはルームシェア生活は三年で終わりを告げた。
盗みである。

どうにも金品がなくなり、内部犯が濃厚だと分かり
カメラを仕掛けたところ
同居人の一人が何回も盗みを働き
売りさばいてお金に変えていたことが判明したらしい。 

 
仲良くやっていただけに裏切られた感が強く
新しいメンバーを補充してルームシェア生活を続投しようとはならず
ルームシェアは解消となったそうだ。
なんとも悲しい末路であった。

 
 
 
私が(アラサー)女子だけのルームシェア生活に憧れ出したのは
婚約破棄が大きかったのだと思う。

 
昔、私は適齢期になれば、普通に結婚できると信じていた。
実際、女子高生までは年齢=彼氏いない歴だったが
大学生になったら彼氏はできたし
その人とは何年も付き合っていて
家族に紹介まで済んで
結婚までカウントダウンだった。

だが、婚約破棄した。
アラサーの頃である。

 
おそろしいのは、私の周りでアラサーになり、数年付き合って結婚を視野に入れたり、婚約していた人五人が、婚約破棄したことだ。

私は驚いた。
私は私で婚約破棄により、人生が変わったが
そんな人は周りにたくさんいて
それは特に珍しいことではなかったからだ。

 
 
私含めその六人は、結婚に苦戦した。

イケメンだったり、かわいかったり、性格も良かったり、モテているにも関わらず
婚約破棄後、恋人ができても結婚までいかなかった。

結婚までいっても離婚したり
結婚までいくまで、婚約破棄から8年もかかったのだ。

   
 
私はゾッとした。

昔はアラサーになれば結婚できると思っていたのに
周りの友達や知人は24、27、29歳で結婚は集中し
そのタイミングで結婚を逃した人は
ほとんどの人が恋愛や結婚に進展はなかっな。

  
アラサーの時点で恋人がいても
婚約をしていても
付き合いが何年経っていても
結婚するまで油断は全くできないと感じた瞬間だ。

 
 
私は婚約破棄後も色々出会いはあったが
結婚には至らない恋愛や出会いを繰り返し
むしろ恋愛や男性に臆病になった。

結婚ができる気がしなかったのである。

 
 
私は結婚が向いていないのではないか…
そう思った私は
婚活をしつつも、友達に対して
「●歳になってもお互いに一人なら、ルームシェアしない?」と言うようになった。
30代に突入してからである。

逆に、離婚をした友達から
同じように言われたこともあった。

 
 
やはりみんな、考えることは同じである。

恋愛にしくじった私達30~40代女子で
恋愛に積極的じゃない派の人は
恋愛に期待ができなくなった。
今更異性との出会いを求め、付き合い、同居するということに
面倒を感じていた。

 
「男性は●●だけじゃないよ。」と、恋愛や結婚が上手くいった周りから慰められても 
惨めになるばかりだった。
一人や二人としか付き合ったわけではないし
婚活で何十人も何百人も知り合った上での
現在の30代独身という現実である。

 
恋愛は上手くいっている時は楽しいが
揉めた時は心身やられてしまうし
男女で分かち合えない溝もあるし
結婚となると、両者の気持ちだけの問題じゃなくなる。

 
その点、女子はいい。
お互いに分かち合えるし、共感し合えるし
家事分業も仲良くできそうだ。
仕事姿勢も、基本女子はみんな真面目だ。
私も周りの友達も国家資格を持っているし
体さえ壊さなければ、お互いに食いっぱぐれはない。

人選さえ間違えなければ 
女同士のルームシェア生活はバラ色のはずだ。

 
結婚への夢がまだ完全には捨てきれないし
今の生活が気に入っているから今すぐではないが
将来の選択肢として
女性のルームシェアはいいかもしれない。

 
 
 
そう、常日頃思っていた私は、夢中になってページをめくった。

話がだいぶ脱線したが、ここから再び【オタク女子が、4人で暮らしてみたら。】の話に戻る。

 
一緒に暮らしている四人は35~39歳独身。
おそらく、恋人はいない。
フリーランスで働いている人が二人
会社勤めが二人である。

全員が何らかのオタクであり、基本ジャンルはかぶっていないが
一緒にアニメ観賞会等は行う。

住まいは二階建てで、東京のようだ。

 
 
4人が出会った場所がmixiやTwitterということに時代や世代を感じた。

私もmixiで出会った人複数人と10年以上経った今でも繋がっているし
例の「●歳になってもお互いに一人なら、ルームシェアしない?」と私が言ったり、言われた相手は
リア友だけでなく、mixiやTwitterで知り合った人も含まれるからだ。

 
 
今の30~40代でmixiをやっていた人なら分かるだろう。
mixiは趣味や気が合う人と繋がりやすく
リア友に言えないようなことを分かち合い
仲良くなりやすかった。

今でこそTwitterやFacebook、インスタ等があるが
それらができる前にmixiがあった。

 
大手SNSといったらmixiだし
当時は圧倒的な利用人数がいて
活発な動きであった。

 
だからある意味
クラスメートよりも学生時代を共にした人よりも
mixi友達(マイミク)の絆は強い。

私の初彼もマイミクであったし
私と同じくmixiをやっていた人も、彼氏はマイミクだった。
恋愛というよりは趣味友出会いの場であったが
マイミクを経由して
人間関係を広げた人は多かった。

  
 
この本の作者の藤谷さんには彼氏がいたが
別れてからふと、孤独に襲われた。

一人暮らしの狭い部屋で
このままの生活が続くことを考えたら
不安になってしまったようだ。

 
オタクは物が多いし、都会は家賃が高い。

孤独を抱えながら
狭い部屋で物を溢れさせるよりは
広い家をルームシェアした方がよいのではないか。
そう考えたらしい。
 
 
藤谷さんは趣味のグループLINEがあったらしく
ルームシェア提案をしたら
あっという間に四人集まった(一人は諸事情により、メンバーチェンジ)。

なお、四人というのは、二人で暮らすよりも人数が多い方が
メリットがあると考えたから、らしい。

 
ルームシェアコミックエッセイでは
二人パターン
三人パターン
を知ることができたので
四人パターンを本書で知ることができて良かった。 

 
うーむ…
これに関しては難しいところだ。

学校な職場での女性グループや人間関係を見ても
私は基本2~4人組だった。  

それぞれにはそれぞれのメリットがあるし
4人組だと4人全員が同じ熱量…というのは難しい印象があるので
人数はフィーリングや関係性によるところが大きいと思われる。

  
個人的には
女性4人だと生理が大変だなぁと思う。
誰かしらが生理だったり、苛々したりしそう。

トイレは二個所あったらありがたいが
本書ではトイレの数までは触れてなかった。

 
 
四人だと、誰かしらが必ず家にいて
四人みんなでわいわいしたり
好きな時に乱入したりもできそうだし
個室もあるという意味ではパーソナルスペースもあるし
そういった意味では過ごしやすいと思う。

 
一ヶ月の生活費が減り、収納スペースが増え、孤独感が減るのは
いいとこ取りのような気がする。

ただ、ルームシェアをしたり
ペットを飼うと
婚期は遅れるというので
アラサーでルームシェアをしたり
ペットを飼うのは覚悟が必要である。

 
ルームシェア開始時は結婚する気はなくても
出会いによってどうなるかは分からないし
急に結婚したくなったり
子どもがほしくなったりすることもある。 

 
また、自分にその気はなくても 
ルームシェアしている誰かがそうなった時
新たなメンバーを探すのはなかなか大変そうだ。

 
 
ただ、藤谷さんの場合はグループLINEやmixi、Twitter等で
他にもアラサーアラフォー女性と繋がっているので
そこあたりはクリアかもしれない。

本書発売で
私のように興味があるアラサーアラフォー女性もたくさんいると思う。

 
更に、なんとなくのイメージだが
アラフォーでも結婚経験がないと
アラサーよりも結婚や出産願望は低そうだし
多分願望があっても難しいし
多少でも願望ある人はルームシェアしなさそうだから
理に適っている気はする。

 
 
自宅内にいても個室にいる時はお互いにLINEで連絡をするようにしてプライバシー考慮したり
みんなでたこ焼きパーティーやそうめんパーティーをやったりと
やはり四人でのルームシェアは非常に楽しそうだ。
グループLINEもオタク特有の言い回しやノリが炸裂していて面白い。

趣味が分かち合えるというのも楽しそうである。
趣味は一人でも楽しめるが
誰かと分かち合えたらもっともっと楽しい。
それがオタクであり
オタク趣味である。

親友クラスに仲が良いことよりも
共同生活向きかどうかや人間性、距離感が
きっと大切なのだろう。

 
 
どのルームシェアエッセイを読んでも共通しているのが
一番大変なのは物件探しのようだ。

ルームシェア物件はまだまだ少なく
人数分だけ、同じ広さの部屋数がある物件は少なく
またフリーランスの方がいると
家賃滞納を懸念されたりと
物件探しからの、契約が一番難関のようだ。

 
家事の分業や金銭管理等はある程度のルールを決めるまでは模索するようだが
そんなには大変そうではない印象だ。

 
本書は会話やオタクトーク、オタクネタが散りばめられており
サクサク読むことができる。
アラサーアラフォーの(オタク)女性は、うんうんと頷きながらサラッと読めるし
クスクス笑えるだろう。

もしも誰かとのルームシェアに憧れるなら
この一冊を読んで参考にしてみるのがよいだろう。

 
例え今すぐルームシェアをしたいわけではなくても
様々な生き方があることを知っているのは良い。

 
 
 
  
私はまだ結婚を諦めていない。
本家を継ぐ役割もある。

ただ、もしも家族に何かあり、この実家が残り、自由にしていいのなら
女性誰かとルームシェアをしたいと
この本を読みながら思った。

 
うちならば新築の方だし
部屋の広さが同じ部屋がいくつかある。
二階ならば、各部屋にベランダもある。
テラスもあるから洗濯物を干すスペースもたくさんある。
庭や畑もあるから、農作業や花を育てることが好きな人にはいいかもしれない。
敷地内で花火やバーベキューも余裕でできる。
駐車場も広いから車は余裕で停められるし
インターも駅もショッピングモールも近い。
トイレも二つあるし
テレビやクーラーもほとんどの部屋にある。
冷蔵庫も二つあるし
バッチリじゃないかと思う。

 
今はまだ家族も私も元気だし、このまま家族と暮らしていけたらいいが
40代で結婚できないなら
もう諦めるしかないような気がする。

 
本書のアラフォーの四人もいつか誰かがルームシェアを辞めるのは
結婚よりむしろ、親の介護が理由かもしれない。

 
私は友達ともよく
親の介護や老後について話している。
独身者は独身者で考えるし
遠方に住んでいる人は人で
今後がどうなるかは心配の種である。

 
 
アラサーの頃、結婚や妊娠にとにかく縛られ
焦りが強かった。
アラフォーになった今、結婚や妊娠は多分もう無理だろうと思い
同じ境遇の友達と仲を深めた。

そして今は、結婚するためにはどうしたいかよりも
今後自分がどのように誰と生きていきたいかを問われている気がする。

 
 
これからどんどん結婚する人は減り
結婚する年齢も上がり
子どもを生むことも、女にとって当たり前の幸せにはならないのだろうな。  

 
多分今から10年以上前なら
アラフォー女性4人でのルームシェアは、憐れな目で見られたり、変わり者扱いされただろう。

だけどきっと今は
アラサーアラフォー女性に、「こんな生き方もあるよ。」と勇気づけさせてくれる
そんな暮らし方になっていると思う。

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