- 運営しているクリエイター
2023年9月の記事一覧
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第7話 青猿(9)
蜥蜴の背中が曼珠沙華の花のように開き、そこから地獄から助けを求める亡者の如き白い腕が揺らめきながら伸びてカワセミとウグイスを襲う。
二人は、翼を大きくはためかせ、腕の攻撃を交わすもそのあまりにも早い動きに皮膚が裂かれ、羽毛が千切れ、身体中を赤く染める。
カワセミは、緑色の魔法陣を展開し、風の刃を生み出して百の腕に放つ。しかし、風の刃は微風のように腕をすり抜けるだけで切り傷1つ与えない。
ウ
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第7話 青猿(3)
お昼ご飯を終えてアケは、厨に戻って洗い物を終えると梅をたくさん乗せた笊を持って外に出る。その後をアズキが短い足を動かして追いかけてくる。
澄んだ青空の下に出ると幾分か心が晴れる気がする。
アケは、ガーデンチェアに腰を下ろし、丸テーブルの上に笊を置く。
アズキは、アケの足に頬を擦りつけ、そのまま地面に伏せて寝てしまう。
薄く紅のさした鮮やかな黄緑色の梅たちが戯れ合うように笊の中で転がる。そ
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第7話 青猿(2)
アケは、残った家事を全てそっちのけでナギの手紙を握りしめてツキのいる居間に走った。アケが慌てて屋敷の中に入っていくことに気づいたアズキも慌てて後を追い、その後ろをオモチが重そうに身体を揺らしながら追いかける。
「主人!」
アケが思い切り居間の扉を開けると「ツキだ!」と言う声が木霊するように返ってくる。
「慌ててどうしたのだ?」
ツキは、満月が大きく描かれた黒いコーヒーカップをテーブルの上に置
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第7話 青猿(1)
昨夜まで降り注いでいた雨が上がり、雲の切れ間から久々に太陽と青空がの心地好良い姿を見せる。
朝早くには色の濃い美しいアーチを描いた虹も姿を現れ、気落ちしていた心を明るく映してくれた。
そして虹と共に渡ってきた幸せに心を弾ませた。
アケは、ずっと閉めっぱなしでいた屋敷の窓という窓を開けて澱んだ空気を入れ替え、三角巾で長い髪を纏め、割烹着を着ると屋敷中をくまなく掃除し始める。
箒で床を履き、