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素晴らしい短篇集「砂漠の林檎:イスラエル短篇傑作選」

<文学(53歩目)>
イスラエルを代表する作家のアンソロジーから、現代の問題を考える。

砂漠の林檎: イスラエル短篇傑作選
サヴィヨン・リーブレヒト (著), ウーリー・オルレブ (著), 母袋 夏生 (翻訳)
河出書房新社

「53歩目」は訳者の母袋夏生さんによるイスラエルの短篇傑作集。
人口の4/5がユダヤ人なので、またイスラエル大使館の後援なので、選出作はユダヤ人の方々の作品が多い。しかし、先入観なく、この短篇集から得られるものを受け止めて欲しい。パレスチナ人にまつわる作品も入っています。現代も続く問題を考えるのに好適な作品集です。

このアンソロジーは読み手の関心により、心に残る作品が変わると感じます。

秀逸なのは、「コーヒーふたつ アターッラー・マンスール」「日記の一葉/リンカ/ラファエル イリット・アミエル」「ショレシュ・シュタイム エディ・ツエマフ」「狭い廊下 オルリ・カステル=ブルーム」でした。

「コーヒーふたつ」
ちょうど、ハマスによるミサイル攻撃の直後に読んだからか、一番印象的です。外見ではわからないが、どちらに所属しているのか?による、男女の苦悩が痛ましい。
大学生の娘たちと考えてしまいました。

「日記の一葉/リンカ/ラファエル」
この3篇の短篇は、とても短い。しかし、「休戦 プリーモ・レーヴィ」を初めて読んだ時と同じ息がつまる気持ちになりました。
ナチスドイツによる惨禍は、代表的な作品は読んだり、映画で見たりしていましたが、莫大な犠牲者の数だけ「家族の人生」があり、そして知られざる物語あり。特に「ラファエル」は心を突いた。
心がささくれる。

「ショレシュ・シュタイム」
イスラエルの地が、「今」だけ見ても仕方ない。一つの土地(自宅)にまつわる思いが、いくつもの家族が持っている。「現在」を覆そうとする「過去」があり、そしてそのまた「過去」がある。どう理解していいのか?とても難しい。

「狭い廊下」
本作品は、ほぼ唯一と言っていいくらい、宗教・民族の対立ではなかった。
ちょっと新鮮です。そして、とても重要な現代病の問題が表現されていて、この短篇は日本でも映画化が可能なテーマでした。

素晴らしいです。

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