【最終回】宇宙ブランコ飛び乗って10
ユーリディスが宇宙の遥かを見渡すと、そこには相も変わらず無数のブランコが音も無くゆらーん、ゆらーんと気持ち良さそうに揺れているのでした。
「ねえ私…私困ったわ。急に家に帰りたくなったの。私のこと待ってる人がいるの」
ユーリディスが言いました。
「それは良いことだね。待つためにはまずお互いに離れなくちゃいけないからね。君はその為にブランコに乗ったのかもしれないね。還る目的を知るために」
「どうやったら家に帰れるか知ってる?」
「君はブランコに乗ってきたんだろ?だったらブランコで帰れるはずだよ」
「ブランコで…でも、こんなにたくさんの中から、どれを選べば?」
「簡単さ。想えばいいんだ。自分の帰る家のことを。そうしたらどれでもいい、好きなブランコに乗って、全身で漕ぎ出して、思い切りジャンプするんだ」
ユーリディスはブランコの座板に立ち上がり、目を閉じて自分の帰る場所のことを想いました。
ユーリディスの心に浮かんだのは、幼い頃から見上げ続けたどこまでも青い空でした。
少女は小さな両膝を使って、力強くブランコを漕ぎ始めました。
「次のブランコは必ずベストのタイミングで君の目の前にやってくる。決して逃さずに飛び移るんだ!迷うなよ!」
その声が届くか届かないかのうちに、ユーリディスのブランコはもう大きな半円を描いて、宇宙の果て遠くへ向かって漕ぎ出していました。
そしてユーリディスはその後、一体いくつのブランコへ飛び移ったでしょうか。
森の中のブランコから公園のブランコ、手作りのひとり乗りから遊園地の巨大な遊具まで…
いつしかユーリディスの眼下には、懐かしい街の景色が広がっていました。
はるか頭上に消えてゆきつつある宇宙を振り返りながら、ユーリディスは思いました。
「やっぱりそうよ。こうして繋がっているんだわ。この世界の皆が!」
ユーリディスはブランコの座板に立ち上がって、左右の鎖をぎゅっと握りしめました。
そして自分の家の屋根に狙いを定めると、両手を大きく宙に広げ、大きな放物線を描いて飛びました。
蒼く輝く星では暗く長い夜が終わり、まもなく新しい日が始まろうとしていました。
おわり⭐︎
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