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2023年10月の記事一覧

カイピリーニャ

場末のバーで
カイピリーニャを飲む
不良少年はやがて
公道を支配して
無敵になるだろう
見えない何かに
気付かずも使役しながら
川崎の単車で
仲間達と街を流していた
あの日々を犠牲にして

無法の魔女

何時からいるのか
何処から来たのか
何処へ向かうのか
彼女の事を誰も知らない
否、見えない振りをする
圧倒的な力を持つ彼女に
皆が関わりたくは無いから
何も知らない振りをして
皆が鬱屈塗り潰す塗り潰す
無法の魔女に怯えながら

ハイド&ジーク

高名な医者の彼は日々
匿名の嘴に突かれて
気が触れてしまった
知らない自分が
惨劇を起こしても
彼には止められず
意識の中で眺めるだけ
怒号も悲鳴も無垢の涙さえ
知らない自分が楽しんで
気が付くと彼は
血の海の端で立ち尽くす
知らない自分を
諫める事すら叶わずに

無限の薔薇

無限の薔薇が
咲いたんだ
昨日の夜
僕の安い胸に
鮮やかに彩られた
無限の薔薇を
この世の誰にも
傷付けられないで
生きて逝けたなら
それだけでいい
そうだろう愛しき人よ

遠ざかるシーベル

抱き合って
くちずけをしても
私達は
分かり合えない
声を上げて
呼び合っても
私達は
一つに為れない
どうしてかしら
こんなに貴方を
愛している筈なのに
心は唯々
離れて逝くだけ
脆い手を伸ばしても
幸せと共に
零れ去るだけ
私の中から
シーべルが遠ざかり
私は取り残される
荒野と言う名の都会に

卑しきドラマー

グレッチのドラム叩きに
何故グレッチを使うのかと
聞く愚かなミュージシャン
太陽が目に染みたからと
答える卑しきドラマーは
最高にいかしてるのさ
寂れたキャバレーで
彼がドラムを叩けば
客は何かに取り付かれた様に
燦々と踊り出すのさ
今日も川崎辺りで
不協和音のリズムを刻む
卑しきドラマー

秋風とパンクス

トライアンフT140に跨り
秋の街を走るパンクス
革のダブルライダースに
安全靴を履いて走れば
秋風さえ置き去りに出来るのさ
誰かに嫌われても
自分が好きな事を
好きなままで居るのは
素敵な事じゃないか
僕はそう思うんだ
本当に心からそう思う
直ぐに季節は冬を迎えて
生まれ故郷に雪が降る
刹那で溢れ零れそうな雪が

罪無き子供達

罪なき子供達が
今日も命を落としていると
テレビジョンの宣伝は
延々と垂れ流す
生まれ落ちる事が
罰なのだから
罪無き子供達など
何処にも居ないのに
メディアは作り上げる
金を集まる為だけに
本当の罪人は誰なのか
皆が見えない振りをする
触れたくないから
自分には関係ないからと
欲に見えたこの世界で

グラファイト

鉄の箱に詰め込まれ
皆が同じ顔をしたまま
それぞれの場所へ向かう
今日も明日も変わらずに
僕はグラファイトのクレヨンで
街に絵を描いている
誰かの為じゃない
僕がそれをしたいから
気違いだと人は言う
きっとそうなんだろう
でも僕は気にしない
美しい事だと思うから
僕は素敵な絵を描き続ける
殺伐とした風の中で