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東京⇔広島、2拠点生活をして気づいたこと。

『ビジネスパーソンの新・兼業農家論』の「序章」 先行公開

8月28日(金)に発売される新刊『ビジネスパーソンの新・兼業農家論』の「序章 今「農家」こそ最高の職業だ!」の一部を先行公開します。

《はじめに》を読む
 《大自然の中でゆったりと生きる、という選択。》を読む
 《なぜ今「農家」こそ最強の職業なのか?》を読む

都市と農村、それぞれのよさを組み合わせる働き方 

東京と広島、二拠点生活

 僕は「インターネット農学校」The CAMPusの校長をやっている。教授数は70人。生徒数は約2000人。全国の“変態的”な農家たち(敬意を込めてあえてそう呼ぶ)を教授に迎え、主に都市部に暮らす30〜50代の働き盛りな人々に向けて、 その農家たちの、農業に関する成功ノウハウや、暮らしの中にある知恵なんかを、ワンコインの有料ウェブマガジンにして配信している。

 僕は、このインターネット農学校というものをスタートさせる構想段階からこれまで、全国の 100人以上のオモシロそうなプロ農家たちに会いまくった。そして行き着いたのは「“農家” こそ最高の職業だ! 」ということ。

 世の中にはいろんな職業があるけれど、人間の営みの3大要素「つくる」「たべる」「はたらく」を「自然環境」の中でひとつに集約して、なおかつ持続可能にできるのは「農家」以外にないのではなかろうか。と僕は思う。一昔前まで「農家」って「大変そう」とか「儲からなそう」とか田舎者の代表のように言われたけど、時代を経て自然の中で心豊かに生きていく「田舎暮らし」の方がどうやらカッコいい感じになってきて「農家」という職業に今、かつてないほどスポットライトが当たっている。

 僕も自ら実践してみようってことで、月の半分を故郷である広島の農村で暮らすことにした。東京ではインターネット農学校、広島では農家をやっている。最初は不安もあったが、やってみると見事にこのスタイルが成り立つことがわかった。もちろん職種にもよるが、今はノートPC1台とインターネット回線さえあれば、全国いや全世界、どこにいても仕事ができる時代。まずは始めてみることが大事。

 農村での暮らしは、早朝に起きるとまずは畑にて農作業。途中、用意しておいた握り飯と漬物とお茶で軽い朝食。また農作業を日が高くなる昼前までやったら終了。あとは家に帰って昼食と昼寝。その後はデスクワークをやる。夜は集まった仲間たちと採れたての野菜やジビエなんかを囲みながら夕食。こんな暮らしを月のうち10日から2週間ほどやって東京に戻る。

 この暮らしを始めて「それは社長だからできるんだ」とか「自分の地元だからやれるんだ」とか、周りの人は色々意見をくれるけど、できない理由を挙げたらきりがない。「会社が許してくれない」とか「家族が反対するだろう」とか。けど、そんな問題さえクリアできなければ、農家に転身なんてできないし、もっと言うと、何のチャレンジもできないのではないだろうか。大事なことは「やる」と決めることなんだと思う。そして「動き出す」ことなんだと思う。そうすればチャンスは向こうからやってくる。

都市と農村を行き来する中で気づいたこと

 都市⇔農村の暮らしをやってみて「これはまるでサウナと水風呂のような関係性」でどちらも絶対に必要な存在であるということに気づいた。都市というのは、人類が昔から想像してきた未来のカタチなんだろうと思う。対して、農村は人類が忘れてはいけない自然との調和を理解させてくれる場所なんだと思う。

 そして、両方で暮らしてみると「便利さ」と「不便さ」の間に豊かさを感じるようになった。例えば「階段」という存在に対して、都市だと「なんでエスカレーターつけないんだ!」と不満を抱くけど、農村だと田舎道で階段があると「わー便利〜!」と思えたりする。つまり、都市と農村を行き来することで先人たちへの感謝の気持ちが芽生える。これは僕にとって大きな発見だった。

いつか歳をとったら、田舎で余生を送りたい

 都会で働く人々の中に「いつか歳をとったら田舎で余生を送りたい」と妄想している人はかなり多いんじゃないかと思う。

 例えば、僕も大学を卒業して広告業界に就職して毎日徹夜三昧で働いていたころ、こんな妄想をよくした。

 どこか大自然に囲まれた南の島で、海が見える小高い丘の上に木の家を建てて、庭にある大きなテーブルに大好きな家族と仲間が集まって、家の横の小さな畑で採れたおいしい野菜と、その日に海で釣ってきた魚とかでおいしい料理を作って食べる。

 しかし、いったいどうしたらこの理想の暮らしを送れるのか。当時の自分の状況と、その妄想は、あまりにも距離が開き過ぎていて、いつしか妄想さえしなくなってしまった。しかし、時が流れ、いろんな経験を積み、ぐるっと一周回って、僕は今、そんな自然と共にある暮らしを、しかも商売が成り立つカタチで実現できた。

 何度も言うが、これは、僕だからできたわけじゃない。イメージをしっかり持って、ひとつひとつ積み上げれば、誰でも実現できる暮らし方なんだと思う。

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著者 井本喜久(いもと・よしひさ)
ブランディングプロデューサー/一般社団法人The CAMPus代表理事/株式会社The CAMPus BASE代表取締役
広島の限界集落にある米農家出身。東京農大を卒業するも広告業界へ。26歳で起業。コミュニケーションデザイン会社COZ(株)を創業。2012年 飲食事業を始めるも、数年後、妻がガンになったことをキッカケに健康的な食に対する探究心が芽生える。2016年 新宿駅屋上で都市と地域を繋ぐマルシェを開催し延べ10万人を動員。2017年 「世界を農でオモシロくする」をテーマにインターネット農学校The CAMPusを開校。全国約70名の成功農家の暮らしと商いの知恵をワンコインの有料ウェブマガジンとして約2000名の生徒に向けて配信中。2020年 小規模農家の育成に特化した「コンパクト農ライフスクール」を開始。農林水産省認定の山村活性化支援事業もプロデュース中。

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