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クレームはいけないこと?

ちかごろ、「怒るのはみっともない」みたいな流れが加速していて、「カスタマーハラスメント」みたいな言い方で、あまりに過度な怒り方をする「お客様」を規制しようとする、そういう動きが盛んらしい。

ぼくもそういう「クレームを受ける側」だったことがある。大体40代からなるべく急いで転職しようとすると、事務系で残っているのは「コールセンター」の派遣ぐらいだ。

コールセンターにも2種類あって、ヘルプデスク系のコールセンターのほうが時給が少し高い。一方、問い合わせ系のコールセンターは時給がやや低く、数をこなす必要があるらしい。

実はぼくはヘルプ系のコールセンターのほうが性に合っていて、それこそパソコンやインターネットテレビなどの接続設定を教える仕事だったのだけど、とにかく全力で、親切に教えて感謝された。結局、体調不良で6ヶ月で雇い止めになってしまったけど…。

問い合わせ系というのは受付なので、基本はすごい数が来る。「待ち呼」(待ってる人)の数が80人待ちみたいな恐ろしいセンターもあった(もちろん、センターの人員で対応していく)。同じインターネットでも、テクニカルではない「ふつうの受付」とかは多分、時給が安い、件数が多い、「こなす力」が求められる、ということで、現代のメンタル病みワークの代表になるんじゃないか、な。

しかもこの仕事はチャットとか、やがて機械に置き換わるらしい。うちらが「数をこなせ」と上席にいわれながら、一方で「ふざけんなこのどアホ」とか「死ね」みたいな過激なクレーマーに対処してきたのは、一体なんだったのだろうと思う。申し訳ありませんもテンプレだからどんなに怒鳴られても「勝手にマニュアルから外れる対応はできない」のにね。              

最近、世の中が怒りに満ち溢れるようになったのは、コールセンターみたいなところにクレームを丸投げして、技術者が手を抜いているからではないか、と考えることが多くなった。

ある家電のコールセンターで働いていたとき、その家電はどの企業も個人も使うようなものだったんだけど、あまりにも「壊れること」が多すぎるという実感があった。不満は全部センターに来るのだけど、技術的な回答は禁止されているから、結局、技術者を手配することと謝ることしか出来ない。「勝手に分解できない」のが家電なので、ヒートアップするお客様に平謝りしかない。

そういう意味で、回線とかパソコンのようなヘルプ系の仕事があるものは、「家電」ではない。以前、家電量販店で、通信機器の「USB2.0」と「USB3.0」の違いと、type-Aとかtype-Cの違いを聞きに行ったことがある。店員さんはそもそも質問の意味が全く意味がわからず、結局不要なケーブルをかわされてしまった。

どこにこんな基本的なことを聞けばいいのかわからなかったので、最後はパソコンを買ったメーカーさんの問い合わせ窓口に連絡して、事情を訴えて教えてもらった。ぼくなんかよりパソコンオタクの人が窓口に出て、「そうなんですよ、家電量販店ではパソコンの話はあまりしないほうがいいんですよ」

という。
その心は?

と聞いたら、

「パソコンは家電ではないんです」

とのこと。へえーが30個くらいつくトリビアだった。

確かにぼくらはパソコンを勝手にバラしたり、端子にいろいろさしたりして遊んでいるけど、こういう工夫ができるからパソコンなのだ。家電は勝手に改造したら保証対象外になったり、「さわるな危険」と怒られてしまう。パソコンいじりは趣味になるけど、家電いじりは危険行為にしかならない。

量販店で売っているパソコンは、電源をいれればすぐ使える、みたいな家電的なものが多いけど、性能は専門店のものより低くて、割高な買い物になる。

パソコンは絶対、専門店で「用途が自分にあうように相談しながら」カスタムしてもらって買ったほうが省スペースで安くなるというのが、3年くらい前の常識だった。(ぼくのPCはFRONTIERで作ってもらった。mouseコンピューターとかドスパラとか、ふつうに専門店のほうがおすすめ)

無駄話をしてしまった。ぼくが言いたいのは、お客さんだけがハラスメントをしているわけではないということ。むしろ個人対法人では、絶対法人のほうが強いので、「おかしいことははっきりおかしいと言ったほうがむしろ相手のためにもなる」ということだ。法人相手に黙るのは良心ではない。泣き寝入りという。

実はいま、パソコンをはじめ家のネット回線が全部落ちていて、5日まで繋がらないというひどいことになってしまっている。

もともとNTTの回線は使っていたのだけど、最近までauひかりの回線で契約していたので、キャンペーンに惹かれて解約期間なのでNTTにしようかなあとなった。ある会社に相談したら、「auの契約が終わったあとすぐにNTTの契約にしたほう無駄がなくてがいい」と案内されて、そのとおりにしたら、なんとNTTの回線が11月1日からいきなり使えない。

auに戻そうにも、auは解約してしまっている。書面には1日から使用可能と書いてあるのに、工事の人が来て5日から? は? みたいな事になり、これは契約不履行に当たるんじゃないか、とクレームを入れたのだ。

最初は丁寧に接していたのだけど、上席対応までしてもらって、「誠意ある対応を望んでいるんですが…」といったら「そういったサービスは行っておりません」と上席に言われ、日本語の専門家として「ちょっとちょっと」となる。

「そもそもサービスが提供できないのはそちらですよね。あなた誠意ある対応すらサービスで提供してるんですか? それは誠意に対する欺瞞ですよね。あなた目の前のお客様を「こなす」だけの意識しかないんじゃないですか? 責任者としてどういう態度で臨んでいるですか」

みたいなことを聞いていったら、震え上がってそもそもこの契約はどうだったのか、契約時の通話録音を確認して再度電話が来るという。

恐ろしいことなのだけど、法人と個人の関係って、絶対法人のほうが強い。

ぼくがそのセンターで働いていて、5日間も欠勤をしたら法人のやつらは絶対個人のぼくを雇い止めにするだろう。事情を聞くふりをして、裏側で切る理由を探している。そもそも休んだ間の給料なんてでないし、そのくらい、法人が個人に金を払うのはシブい。

今回は逆のパターンだ。1日と契約書に書いてあるのに、5日までサービスが提供できない。その間ってどうなってるの? って聞いたら、「すいません」だけだという。こっちのほうがおかしいじゃないか。当然誠意ある対応はしてくれるんだよね、と聞いたら、「そういう特別なサービスはしていません」みたいな回答なので、それはふつうの人は「ブチ切れる」よ。コールセンター経験があるから、上席対応にしたのに、上席のほうが対応が悪い。

結局、上席の上席対応みたいなことになってしまった。

ぼくは企業とか法人に対する恨みとか憎しみは忘れていない。
ひとの限りある人生をコケにしていると思うし、限りあるのは人生ではなくて、生物的な「いのち」もそうだ。

それをたかだか時給いくらの派遣で使い倒して、派遣はいつでも切れるのに
客がキレるのは許さんとか、断固、抗議すべきなのだ。

丁寧なですます調で質問をしていくのが、一番相手は怖い。

なんか知らないけど、この世界は怒ったりゴネたもの勝ちなところがあるのを、ぼくは忘れない。適切に怒れる人のみが、丁寧な議論を展開できるし、相手の議論を聞いて「感情的にはこうだよな」と判断することもできる。

まっすぐにスムーズに、「理」をとおしていくためには、感情の部分も決しておろそかには出来ないのである。

そういう議論の仕方を、最近学んでしまった。

他の歌人のおかしな議論に怒るのも大切だけど、ぼくは非道があった企業にはクレーマーとして接しなければいけないのではないかと最近思うようになった。

今回の件はあきらかに5日もインターネットが使えない、動画が見れない、全部テザリングなんておかしいので、賠償責任をもとめてゴネて落とし所を探る話をしてみるつもり。

怒りは適切な型に落とし込んで、きれいな形で流す。そういう作業はむしろ企業相手にもしっかりするべきかもしれない。

もちろんぼくは一言も声を荒げていないけど、相手が震え上がってしまったという話でした。

おあとがよろしいようで。ではではこの辺で。

















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西巻 真
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