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卒業制作「災害時を想定した簡易シューズプロテクタ」

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阪神・淡路大震災から今年で27年が経った。



震災では建物の倒壊や火災などが相次ぎ、その後の「災害関連死」も含めて、6434人が亡くなられた。


震災を経験していない私は、大きな地震と言うものが非現実的なものだと思い、「いつか来る」と言いながら一生来ないのではないかと考えていた。


しかし2011年、東日本大震災が起き「地震」と言うものが一気に現実味を帯びた。


 私の住む静岡県も震度3を観測し生まれて初めて地震による揺れを肌で感じた。それと同時にこの揺れがもっと激しいものだったらと、恐ろしくなった。


自然災害はいつ来るか分からない。


今回はその自然災害の中でも最も日本人に馴染みのある「地震」に焦点を当てる。


すぐにでも来るかもしれない震災に



、備えることが必要である。



調査


大地震を経験した事がない私にとって、震災は未知であった。

そこで震災の写真や、被災者の声を聞いた。


※ショッキングな画像があります。心臓の弱い方や震災にトラウマがある方はご遠慮ください。


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調査をしていく中であることに気が付く。

それは


被災者の靴が災害のあった場所には適さない靴であったことである。


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右の男性や

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左側奥の女性など

底のすり減った靴や、パンプスといった、瓦礫から足を守るのに適していない靴を履いている。



そこで「国が行ったアンケート」や「有識者による地震の考察」を調べた。

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(内閣府HPより)

内閣府が行った調査によると、実に86.1%の人が靴に関しての防災をしていない


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(朝日新聞デジタルより)

さらに朝日新聞が公開しているデータをみてみると、南海トラフの地震が起きてから1週間のうちに避難する人は950万人とされている。



つまり、そのうち

約818万人


             の人々が靴に関しての防災をせずに避難してしまう。



そのため、避難先でいかに多数の、

「安全とは言えない靴」


                      を丈夫にできるかが必要である。


使用想定期間


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安全では無い靴で避難してしまう人々がいつ使うことになるか表で表した。(



災害時の靴の防災問題を解決するための条件をいくつか出した。


・靴底を補填できる

・瓦礫から足を守れる

・様々な靴にフレキシブルに対応できる

などが挙げられる。



この条件に合う素材をいろいろ探している中で、発泡ウレタンスプレーを見つけた。

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画像:LOCTITE HPより

本来建築用のコーキング剤として使われる発泡ウレタンスプレーであるが、

タフで軽くて簡易的なところが今回のプロダクトに向いていると考えた。

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私が目指すべきものは、

乾パン

のような、避難所にまとめて保管してあるし、個人でも持っておくことができるプロダクトである。




まず初めに、自由に発泡してしまうウレタンを型で制御する必要があった。


様々な素材を型として使い、最適な素材を探す。

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素材の検証をしていく中で、プロダクトには

耐水強化紙

が最適であることがわかった。



<番外編>耐水強化紙の特性

耐水強化紙の表面に印刷を施して、発泡ウレタンスプレーを吹いて剥がした時に印刷がウレタンにうつるのでは無いかと思い、インクジェットプリンタ、レーザープリンタで試そうとした。

結果、レーザープリンタではしっかりと印刷されて、うつることはなかった。

インクジェットプリンタでは、インクが乗っているだけでうつるどころか、手にもついてしまう。そのため耐水強化紙どうしでくっつけると印刷面をさらにトレースすることができる。

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インクジェットプリンタでK=100の塗りつぶしで印刷するとこうなる(一番右)。

面白いテキスタイルになりそうである。

今後この活用法について考える。



発泡ウレタンスプレーの特性


発泡ウレタンの特性として、空気中の水分と反応して発泡する。

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そのため、空気を通さない素材が発泡している先にあると

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このように、そこで反応がストップしてウレタンの中身がスカスカになってしまう。

靴裏は空気を通しづらいため、ウレタンと靴がしっかりと接着できないのもここで問題となった。

そこで、靴裏の面をあらかじめ濡らしておいた状態で、発泡させたところ

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しっかりと、空気を通さない面にも密着して発泡することができた。

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そのためプロダクトには、


水が必要である。


                          ということが分かった。


それを踏まえつつ続々と型を試行錯誤した。



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「大きさ、高さ、シリコンスプレー等々」


型を外し、形や強度を確認する。

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並行してしっかりと瓦礫の中を歩けるかの検証もした。


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以下の3つの場所で「歩く」「走る」「飛ぶ」を行った。

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・工業瓦礫ゴミ捨て場

・砂利道

・木材端材置き場


ここで出た問題点を元にブラッシュアップを重ね、

型を変えていく。


カッティングプロッタで型の試行をする

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そして出来上がった型

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最低限の折りで様々な形状、大きさの靴に対応する

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ウレタンフォームの触れる面に色を付け、吹く量のアタリをつけたサイン



ウレタンフォームスプレーのデザインの再構築


ウレタンフォームスプレーのデザインは文字が多すぎてわかりづらい。

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出典:ロックタイトHP

これを緊急時にも分かりやすく、端的に、必要最低限の情報を入れ再構築する。

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注意書きは法律上入れなければいけなかったため大きさや色等を遵守している。





使う水を保存水にする


体積を取らないためにパウチにして、もしもの時は飲料水として使えるようにスプレーヘッドを別につける。

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コストを抑えるために既存の水とスプレーヘッドを転用して使う。



卒制スプレーアタッチメント v4

アタッチメントを3Dプリンターで制作する。





ロゴや名前に関して



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CLOUD」は発泡ウレタンスプレーのモコモコと膨らむ様子から連想している。


この名前は「発泡ウレタンスプレー」長くて無機質な名前を変えようと名付けた。


今回作成したプロダクトの名前は「Shoes Repare Kit」である。このキットはシューズ(靴)をリペア(直す)ものという安直にイメージしやすい語呂にしている。


つまり、ブランド名がCLOUD、商品名がShoes Repare Kitということである。


例えると、ヴィトンのバーキン、という感じだ。

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出来上がったプロダクトの外装

最終パッケージ写真

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使用方法はパッケージの裏側に記載されている。

使い方動画




実際に履いてもらう


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板宿商店街の魚屋さんのおばあちゃん(84歳、すごく若い)


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友達にも履いてもらってレビューをもらう。


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デザイナーの二俣さんにもご意見をいただく。


これからもどんどんブラッシュアップしていくつもりである。


つづく








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