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変わりゆくもの


街を歩く人たちの顔がオレンジ色に染まっている。

「夕焼けがきれいだ!」

君はそう言うと、僕の返事を聞く前に走り出した。
僕は慌てて君の後を追いかける。
階段を一つ飛ばして駆け上る君は、まだ若いエネルギーが有り余っているのだろう。

「ここからだとよく見えるんだよー」

君の目線の先を見ると、ビルとビルの小さな隙間から柿色の光がさしていた。ビルが建ち並ぶ中心にある歩道橋からでは夕日は見えない。
そうか。こんなにも見えなくなったか。
昔はよく家路の堤防から夕日が沈んでいくのを眺めたものだ。
それでもわずかな夕焼けを嬉しそうに指さす君を見ていると、どんなに文明が発達しても、人は本能的に自然の光を求めるのだと思い知らされる。

「本当だ。綺麗だね」

僕が君の肩に手を置くと、君は得意げに振り返った。

君と手を繋いで歩く帰り道。家の近くの空き地に売却と書かれた札が立っていた。よく見るとマンションが立つようだ。
そうかここも変わってしまうのか。
ここから見える夕日も見えなくなってしまうのか。
いつも見る景色が急に愛おしくなる。

こうして君と一緒に歩くのも、いつか難しくなっていくのだろう。

まだずっと先のことだけれど……。


僕は君の小さな手をしっかりと握りしめた。

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