シェア
小山陽子
2023年9月16日 01:48
自分の生きている限り付いてまわり、切り離すことのできない性質がある。それを呪い、疎ましく思い取返しのつかない引け目だと考えて苦しみながら抱えているうちに、その特質を持つ自分こそが世界から切り離された、特別な存在だと考えるようになる。その性質こそが自分だと自分には特別な役が与えられているのだとそれが唯一の存在証明だとでもいうように。アイデンティティーといっても、これは他
2023年9月13日 13:59
小さい頃から何度も読んだ本がある。田辺聖子さんの「むかし・あけぼの」。平安時代に生きた清少納言の人生を、歴史を紐解き、田辺さん独自の解釈を加え生き生きと蘇らせた長編だ。田辺聖子さんといえば、関西弁の軽妙なやり取り、大阪の食や笑い、少し癖のある文体、そういったイメージが先行するかもしれない。けれど「むかし・あけぼの」は田辺さんのエッセンスが盛り込まれつつも、清少納言という女
2023年9月5日 10:51
西加奈子さんの「サラバ!」。タクシーのお客さんに薦めてもらい、手に取りました。西加奈子さんはテレビで拝見して知っていましたが、彼女の本を読むのは始めてでした。すごく面白かったです。「サラバ!」は、ざっくり言うと一人の男性が、自分自身として生き始めるまでの半生を描いた物語です。主人公の男性がイランで産まれた瞬間から大阪・エジプトで育ち大人になっていくまでの過程を丁寧に描いてい