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読書

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2023年9月の記事一覧

「金閣寺」を読み、混乱する。

自分の生きている限り付いてまわり、
切り離すことのできない性質がある。

それを呪い、疎ましく思い
取返しのつかない引け目だと考えて
苦しみながら抱えているうちに、
その特質を持つ自分こそが
世界から切り離された、特別な存在だと
考えるようになる。

その性質こそが自分だと
自分には特別な役が与えられているのだと
それが唯一の存在証明だとでもいうように。

アイデンティティーといっても、
これは他

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あなたに向けて。〜「むかし・あけぼの」感想文〜

小さい頃から何度も読んだ本がある。
田辺聖子さんの「むかし・あけぼの」。

平安時代に生きた清少納言の人生を、
歴史を紐解き、田辺さん独自の解釈を加え
生き生きと蘇らせた長編だ。

田辺聖子さんといえば、
関西弁の軽妙なやり取り、
大阪の食や笑い、少し癖のある文体、
そういったイメージが先行するかもしれない。

けれど「むかし・あけぼの」は
田辺さんのエッセンスが盛り込まれつつも、清少納言という女

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サラバ!を読んで。

西加奈子さんの「サラバ!」。
タクシーのお客さんに薦めてもらい、
手に取りました。

西加奈子さんはテレビで拝見して
知っていましたが、彼女の本を読むのは始めてでした。

すごく面白かったです。

「サラバ!」は、ざっくり言うと
一人の男性が、自分自身として生き始めるまでの半生を描いた物語です。

主人公の男性がイランで産まれた瞬間から大阪・エジプトで育ち大人になっていくまでの過程を丁寧に描いてい

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