焼き芋と早春の午後
突然ですが皆さん、「焼き芋」はお好きですか?
昔からの冬の定番スイーツ「焼き芋」。この数年、メディアなどで専門店がピックアップされたり、スーパーの売り場の一角に「焼き芋機」が常設で稼働していたり。あちらこちらで、よく目につきませんか?
同時に「干し芋」の評価も上がっている様ですね。食物繊維が豊富で、整腸作用を良くするなどの効用も注目ですが、やはりその美味しさが最大の理由でしょうか。
当然ながらその人気上昇に伴い、価格も比例して上がります。
最近、生のさつま芋の値段が高いのです。以前はスーパーで頻繁に1本98円で売っていたのですが、めっきり見なくなりました(さつま芋農家さんの収入が増えているのなら、良いのですけどね。中間マージンが主な理由だと、何だか少しモヤモヤします)。
ところが先日、近所のスーパーで1本98円で売っているではありませんか。いよいよ季節も冬が終わり、春本番が近づく頃。在庫一掃のセールでしょうか。理由が何であれ、これは買わずにはいられません。
早速、水で洗って表面の土や砂を落とし、よく水気をとってオーブンへ。後は待つだけです。
数十分も経つと、オーブンからは芋の焼ける独特の香りが漂ってきます。
焼き上がりを待っている間、私は祖父の事を思い浮かべていました。
祖父は焼き芋が大好きな人でした。若い頃から食の細い人で、ガリガリに痩せていました。お茶碗一杯は多いと言う人で、いつも御飯は半分程度の量でした。
そんな祖父も焼き芋だけはよく食べてくれるので、私の母は冬になるとスーパーでさつま芋を買って来ては、オーブンで焼き芋にしていました。
その祖父が亡くなって、随分と時が経ちました。
遠方にある本家まで行けば、仏壇や位牌がありますが、私の手元にも祖父の写真ならあります。
祖父の笑顔が収まった写真立て。その前に焼き芋を置き、その傍らで私も食べました。
窓の外は柔らかな日が差していましたが、時折風が強く吹いていました。
何処かから飛んできた枯れ葉が、アスファルトの上を滑る様にまた飛んでゆく。
そんな早春の午後でした。