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恥ずかしいだけのガチポエム

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素敵な写真とセンチなポエム。現実の厳しさに疲れた心を癒やされたいあなたに贈る、こつこつと積み上げていく世界。 心のどこかがほんのりとあたたかくなれば幸いです。 がんばって、だいた…
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#恋愛

アバンギャルドな日々

アバンギャルドな日々

町の中に前衛的な芝居の舞台みたいな風景がぽろぽろとこぼれている。ぼくはたまに足を止めて、それを見入る。
アバンギャルドだと彼女はいう。
その言い方が妙に昭和めいていて、ぼくは思わず吹き出した。

好きだよ

好きだよ

中華料理は好きだ
中華料理を嫌いな人にはあったことがない。だれもが、中華料理をファーストチョイスにするわけではないが、少なくとも嫌ってはいない。
これはぼくの持論で、彼女に言わせると、それは中華料理が好きな人だけを見ていて、中華料理を嫌いな人を見る気がないからだという。
彼女はいつも正論だ。
じゃあ、とぼくは聞いた。
きみは中華料理は嫌いなのか?
彼女は照れ臭そうに笑って、好きだよ、と言った。

深いアート

深いアート

自然の中に飾られたアートはかならずしも自然に溶け込んでいるひつようはない。
ぼくらは違和感を楽しむこともできる。
彼女とぼくはそうやってお互いに思いつくままに意見を言いあい、意見を深めていく。

夕日に向かってかえる

夕日に向かってかえる

帰り道と夕日というのはどうしてこうも似合うのだろう。
「それはあなたがいつも夕方になると家に帰っていたからでしょう」
彼女の言うことは一理ある。
ぼくがいつも朝帰りをしていたら、早朝の町を歩くと、早く家に帰りたくなる、なんて言うはずだ。
「きみはどっち派?」
ぼくが聞くと彼女は首をかしげた。
「夕日の中を帰るのも、早朝のすっきりした空気の中を、家路を急ぐのいいな。みんなが働く時に私は家に帰って一休

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海にかえる

海にかえる

海は母親に例えられることもある。
ぼくらは波を眺めて、穏やかさを取り戻すのかもしれない。
彼女もぼくも、海を見て、歓声をあげる年齢ではなくなったけれど、興味が薄れてきたわけではない。もっと海に近づきたい。
「泳げば?」
彼女が言った。
それはまだ早いかな。

花を愛でる

花を愛でる

花は好きだけど花の名前は覚えていない。彼女も花が好きで、名前もよく覚えてる。うらやましい。
「どうして?」
どうしてって聞かれると困るけど。
「あなたも花を愛でたらいいよ。名前を知らなくても」
そうしよう。今日はいつもよりも、花が愛おしい。

しょうわホテル

しょうわホテル

寂しいホテルは昭和のかおりがする。
ぼくも彼女も昭和のうまれだから、昭和っぽいものには愛着がある。ほんとうに昭和の建物かどうかはどうでもいい。ぼくらが懐かしさを覚えるかどうか、だ。
戻りたいけれど戻れない時代にタイムスリップさせてくれる。
ぼくらは昭和を探してまた歩き続ける。

どこまでも深く

どこまでも深く

人間は宇宙を目指すし、地底も掘る。
工事現場をのぞきこむと、どこまでも深く潜れる気がする。
「穴を掘りつづけて、地球の裏側にいけるかしら」
彼女がいう。
ぼくは、こどものころに庭を掘った。地球の裏側を目指して。
「いけた?」
「親に止められた」
「止められなかったらいけた?」
もちろん、とぼくが答えると彼女はふふふと笑った。

価値のない価値

価値のない価値

町を歩いていると、不思議な建物があった。切ったケーキみたいなビル。先端は薄っぺらくて、中の人もペラペラなんじゃないかって笑ってた。
ぼくらの冗談は、誰にでも通じるたぐいのものじゃなくて、内輪ネタ、楽屋落ち、といったたぐいのものだ。
ぼくらはそういうシチュエーションを好む。ふたりにしかわからないギャグは量産されていて、これが一般受けするギャグだったら、ひと財産築けたかもしれない。
だけど、他人にはわ

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ギャップを楽しむ

ギャップを楽しむ

たまに大久保あたりをぶらぶらするとカルチャーギャップだったりジェネレーションギャップがあっておもしろい。
「何にだってギャップはあるよ」と彼女。醒めた言い方をするけれど、退屈してるわけじゃない。むしろ、この状況を楽しんでいるんだ。
楽しかったら楽しいと言えばいいのに、と言いかけて、気がついた。
これはこれで彼女とぼくのギャップなんだ。
だったら、これを楽しむのが正しいのかな。

雨の日よりも好きなのは

雨の日よりも好きなのは

雨の日も好きだけど青空も好きだ。
ぼくがそう言うと、あの子が笑った。
順番が逆じゃないの?
これで、いいんだよ。
ぼくは,雨の方が好きだから。
面白いね、きみ。
同級生のおんなのこに、きみ、と言われた瞬間に恋をした。

すてきなさんぽ

すてきなさんぽ

昔つきあっていた女の子と、高速道路の高架下を散歩した。ずっと歩いていくとどこにつくだろうって。
彼女はすぐにあきてしまったけれど、ぼくはわくわくしていた。
どこにもつかなくていい。好きな子と一緒に好きな場所を歩いている。
そんなことを思い出すのは、決まって今の彼女と一緒に散歩してる時で、ぼくらは高速道路の高架下がお気に入りだ。かわってないなと、ぼくは思わず苦笑い。だけど、一緒に歩いてくれる彼女も楽

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春の訪れ

春の訪れ

ようやく春が訪れた。
なにがあるわけではないけれど、ウキウキした気分になる。
それは彼女にも伝わるようで「なんだかうれしそうね」なんて言われてしまう。
説明できないけれど、なんとなく足取りが軽くて、散歩にいってもいつもよりたくさん歩いたりする。
そんな日々、きっとなにかを生み出すだろう。

ずっと待ってた

ずっと待ってた

彼女とは高架下で待ち合わせることが多かった。
ふたりの家のちょうど真ん中。
待ち合わせ場所には、いつもぼくが先についた。彼女はぎりぎりにくることが多かった。遅刻はしなかった。
ぼくは高架下でじっと待っていた。
ある日、ぼくらは喧嘩をした。
翌日、高架下で待っていたけれど、彼女は現れなかった。ぼくは頭上を電車が10回駆け抜けて、ようやくあきらめた。それから1週間。ぼくは毎日電車の音を聞いていた。

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