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恥ずかしいだけのガチポエム

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素敵な写真とセンチなポエム。現実の厳しさに疲れた心を癒やされたいあなたに贈る、こつこつと積み上げていく世界。 心のどこかがほんのりとあたたかくなれば幸いです。 がんばって、だいた… もっと読む
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2021年1月の記事一覧

雰囲気が大切

雰囲気が大切

古びたホテルを見かけると、立ち寄りたくなる。
若い頃に付き合っていた女の子と立ち寄ったのもそんなところで、外観は洋風で、部屋は和室だった。
いけないことをしている気分になったものだ。
外れてはいないって?
あんな妙な罪悪感は、なかなか味わえないと思うけど、ね。
そんなことを思い出して、ちょっと覗いてみたくなるわけ。

よくばり

よくばり

都会暮らしに飽きた、なんて言うほど堪能したわけじゃないけど、緑の多い土地でのんびり暮らしたいと思うこともある。
ぼくがぼやくと、彼女が言葉を続ける。
「だけど、都会の便利さに慣れてしまうと、田舎暮らしは躊躇してしまう。さらに、通勤のことを考えると、引っ越してもないのに憂鬱になる」
その通り。彼女との暮らしを盤石にすること。まずはそこから。

がんばれ

がんばれ

寒空の下で一本の木ががんばっていた。
葉が落ちて、寒そうだけど、しっかり立っている。
そんな木にぼくは自分を重ね合わせて。がんばれ、なんてつぶやいた。

川のない側

川のない側

駅を境にして、川のある側が栄えるのだと聞いたことがある。もう三十年も前の話だ。
「きみは、どっちの側に住んでいたの?」
彼女が聞いた。
「川のないほう」
ぼくが答えると彼女はうむ、とうなずいた。
「私もそうだよ」
そして、こう言った。
「栄えていないけど、自然はたくさんあった」
今度はぼくが、うむ、と言った。
「悪くない」
そう。悪くない。

ふたたびハイウェイ

ふたたびハイウェイ

環状道路、バイパス、ハイウェイ。
車がビュンビュン走る。
子どものころはそれだけで、かっこよく感じたものだ。
いつのまにか、ただの道路としか感じなくなっていた。
だけど、きみと一緒に歩道橋に立って、思い出話をしているうちに、なんだかワクワクしてきた。
週末は、ハイウェイを走りにいこうか。

冬の散歩道

冬の散歩道

冬の散歩道をきみと歩く。
無言なのは、話すことがないからじゃない。寒いから、でもない。
ふたりで歩く。この時間に満足しているから。むりやりひねりだした会話は余計な飾りみたいなもので、この空間には不要なんだ。
家に帰ってココアを飲みながら、たくさん話せばいいじゃないか。

バカンスの町

バカンスの町

憧れの町。
いつか住んでみたい町がぼくにはある。何度も訪れたことがあり、雰囲気が好きなのだ。
彼女も反対はしなかった。だけど、こうつけくわえた。
「バカンスで訪れた町で暮らすのと同じ気持ちじゃだめだよ。その町で暮らすってことは、仕事の気分も持ち込むってことになるんだよ」
やれやれ。その通り。
バカンスはバカンスのままにしておくとしよう。

たからもの

たからもの

曇り空の下を歩いていると、懐かしい気分になる時がある。
感動みたいなのが込み上げてくる。
これがなんなのがわからないけど、ぼくにとっては宝物みたいな瞬間で、ずっとこの気分で生きていきたい。

悪くない

悪くない

かけこみ乗車ではちあたりした女性となぜか連絡先を交換したのは先週のことだった。
お互い、自分が悪かったと謝り、もし怪我でもしていたら連絡をかわそうと、LINEを交換した。
それから1週間、なんとなくそわそわして過ごしてから、「調子はどうですか?」とメッセージを送った。
返信なんかあるわけないと思っていたけれど,なんと、返事があった。
公園でちょっと散歩でも。という話になり、デートとも言えない関係が

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あたるも八卦

あたるも八卦

神社にいくとおまいりをする。
ぼくは案外とおみくじが好きだ。
彼女も呆れるくらいにおみくじを引く。
だけど、結果は忘れてしまう。これまた彼女が呆れるくらい覚えていない。
ぼくはおみくじを引くという行為が好きなんだ。
「買い物をしたら、満足する女の人みたいにね」
よけいな一言で彼女はご機嫌ななめ。そういえばおみくじにも、よけいな一言に注意って書いてあったっけ。

石のランタン

石のランタン

石灯籠はカボチャのランタンに似てる。
ぼくの父はそう思いついて、石でカボチャのランタンを作った。
「これはきっとヒットするぞ」
父は芸術家だった。商売っ気は旺盛だったが、商才には恵まれなかった。
石で作ったカボチャのランタンはもちろん売れなかった。今でもぼくの家に飾ってある。
父はまだ元気で、あいかわらず売れないものを作り続けている。

つばき

つばき

椿の好きな女の子がいた。
小学生のころだ。
彼女は同級生というわけじゃなくて、ときどき空き地で顔を見かける程度。
いつもひとりだった。
ある日、彼女はぼくに近づいてくると、一輪の椿を差し出した。
「私の好きな花なの」
それが、彼女とかわした最初で最後の会話。それ以来彼女とは会っていない。だけど、その言葉は今でもぼくの中に残っている。

空見物

空見物

寒々しい空。
子どもの頃を思い出す。
ぼくが住んでいた郊外の街は空だけは広かった。自慢するほど広くはなかったかもしれないが、他に自慢できるものもなかった。
どうしてそんなことを覚えているかというと、ぼくはその街の空が好きだったからだ。夏の空も、冬の空も。
数年に一度、街に戻る。知り合いはあまり見かけない。構わない。ぼくは空を見上げながら街をしばらく歩いて、満足して帰ってくる。こんな話をしていたら、

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