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読書人間📚 『整形美女』姫野カオルコ


『整形美女』  著者 姫野カオルコ


不倫とは。
人が踏み行うべき道からはずれること。配偶者でない者との男女関係。

ここにある「不倫」は世間で言う男女のフリンではありません。

登場する女性二人。
甲斐子は生まれながらの「美人
阿部子は生まれながらの「ブス

美しさとは姿形に拘った事だけでは無く、心の問題である。と綺麗に纏めるのかと思いきや、姫野先生、そう簡単なお話にはなさいません。唸ります。


そもそも、
どう言う形のものが美人でブスですか?
あなたの価値観の美人とブスってどこの何がどうなっている形なんですか?
そしてあなたのその美人、ブスの価値観は世間と、他人と同じだと思いますか?
あなたの言う美人は他人にはブスかもしれませんよ?
あなたの言うブスは他人には美人かもしれませよ?
あー、頭が混乱しますね。


こんな事を思い出しました。
当時、お付き合いしていた男性が私の自撮り写真を見てこう言ったのです。
「あー。これアヒル口だねー」
おぉ!!今、人気アイドルのアヒル口が可愛いと世間の賑わいに私も乗ったのだ!お目が高い!どうだ可愛いだろ!と心中しめしめと満足をかましていましたら、彼が言った一言。
「あー。俺、アヒル口好きじゃ無いんだよねー」
ぇえぇえええ!!マジですかーーー‼︎. . .
それから一切、アヒル口なんてしませんよ。美醜の価値観なんて本当にそれぞれです。

それとまたこんな話。
とあるモデル事務所にお世話になった時期がありまして、私はもちろんオトナモデルの位置なんですが、私が芸能スクールで講師をやっていた経験からマネージャーさんに相談を受けたのです。若いモデルさんがふっくらした頬を嫌い、頬の肉を整形手術で取ってしまうと言うのです。モデル達の宣材写真を見せて下さいました。思わず息をのみ深い溜息の様に息を吐き出し落胆しました。歳を取れば頬なんて嫌でも削げていく、ふっくらした頬は若い今だけのもの。ですが、彼女達は(私の世代で言うと)小泉今日子、キョンキョンの様な尖った顎、ぱっちりキラキラ光が入る大きな目に憧れ、それが一番美しい形としているのです。モデル達のあるべき頬は無く、目は異様に開かれています。モデルとしてはもちろん使えない状態です(どう言う契約内容で所属していたのか細かい事はさておき)。
これは困ったもの。若さ故に遠い未来を想像しにくいのです。彼女達は今どうしているだろうと想像しますが、わかりませんよね。
本作を読むと、モデルとしての価値は事務所とはそぐわなかったかもしれませんが、その価値観を共有する人達と今幸せに過ごしているのではとも思います。


「それを隠したときから整形は不倫になるのです。」
と言う一節になるほど。

男女間のフリン以外に人によりますが、人間はフリンをしています。皆さん何かわかりますか?
○○○。だそうです。なるほど(ネタバレするので書きません)。


私に思いつく密事は""です。歯もいつまでも生まれたままを保持できる物ではありません。形を整え、なんなら抜き出し捨て、装着し、なかなかサイボーグ感あります。10/1は人工物では無かったりしますよね。それは審美ならさして密事ではないかも?しれませんが、歳をおうと一層密事化していきますよね。
こちらの写真は歯科でも働く私の歯を模った石膏です(練習なので下手です)。やはり蜜事であり、わかる人には私の歯の欠点がわかってしまいます。インスタにもあれこれと自分が作った愛おしい作品として、歯の石膏模型の写真を上げていますが、ちょっとは恥ずかしいです。なるべく自分の歯の欠点が見えにくい様に撮影しています。
ですが診療でお年寄りのメタルでがっちり作られた歯を見ると、まるでガンダムみたいだ!!!と内心小躍り興奮しちゃいます。私には美しくてカッコ良いのです。きらめくメタルの奥歯達にクラッとします。技工士さん達の技術力にがっつりハートを掴まれてしまうのです。特に私好みのメタル歯を持つ患者さんがいます。会えると嬉しいです。非常ににこにこしてしまいます。

二度言いますが、美醜の価値観なんて本当にそれぞれです。

美容整形は明治時代から行われていた手術と言うのに未だ見てはならぬものを見た、他人の隠蔽を引っぺがしたと言ういやらしい心地よさ、意地の悪さがついて回るのは特に日本人にその傾向が強いかもしれませんね。美容整形はまだ閉塞的なものです。もっと「私は自分が思う美しさを手に入れるんだ!」と言えるフリンにしなくても良い時が来ると良いですね。私は美容整形反対派では無いですが賛成派でもないです。必要とするならばやれば良い事だと思っています。


【 罪おほき男懲らせと肌きよく黒髪ながくつくられしわれ 】
与謝野晶子の「みだれ髪」の一首が後半に登場します。

. . . 寂しいです。
彼女たちは、価値あるものだったはずのそれを手にしても異様な形態をなし心を蝕み、また性悪さを露わにさせます。それでも安住を求めた先にそれぞれの幸せがある事を私は願います。ただならぬ覚悟で人生に挑んだのですから。
私はそんな女達を見送る男ではなく、寄り添える女で居たいです。


(最後になりますが)
ところで、登場する二人の女性、甲斐子と阿部子。
なんと"聖書"からだったのですね!エデンの園を追放されたカインとアベル。クリスチャンでは無いし、聖書を知らないのでサッパリ気づかず。どれもこれも奇妙、へんちくりんな名前でどうした事かと思っていましたが、あとがきに姫野先生ご自身で解説して下さっています。


しかし、最近ネットスラングの様に皆さん擦り過ぎていて今あまり使いたくない言葉ですが、"語彙力"に驚きます。本作は1999年一月、新潮社から出ている作品です。姫野さん、40代になるかならないか?で書かれている作品です。
ちょっと力んでる感じもしなくもないですが、女の気合い、気負い、競い、この方のプライドが垣間見え、参ったと思わず唸ってしまいます。何度も言います。唸ります。


新しい方向からの"整形美女"、ちょっと頭を使うかもしれません。どうぞ覚悟を持ってお読み下さい。


カバーデザイン 髙林昭太
カバー画 Giuseppe Arcimboldo"Flora"1591
カバー印刷 慶昌堂印刷 
リニュアル版あとがき 姫野カオルコ
光文社文庫

他の出版社からも出されていますが、このカバー画に惹かれ光文社文庫を選びました。

姫野カオルコさんのこちらの本も怒りに満ちてしまいますがお薦めです。お時間ございます時にお読み下さい📚☺️

🔫声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都 
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。

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