読書人間📚『異形のものたち 絵画のなかの「怪」を読む』中野京子
『異形のものたち 絵画のなかの「怪」を読む』/ 中野京子
2021年4月10日発行。
オールカラーのヴィジュアル版です。
「怖い絵」シリーズの言わずもがな中野京子さん。47人の作家が登場します。
第一章 人獣 〜私たちは何を恐れてきたのか
第二章 蛇 〜悪魔はいつまでも傍にいる
第三章 悪魔と天使 〜善悪と美醜のかたち
第四章 キメラ 〜存在しえぬものを求めて
第五章 ただならぬ気配 〜不可視の恐怖
第六章 妖怪・魔女 〜忘れられたものたち
第七章 魑魅魍魎 〜画家たちの歓び
表紙は、
『悪しき母たち』1984年
ジョヴァンニ・セガンティーニ Giovanni Segantini
(油彩.オーストリア・ギャラリー、105×200cm)
堕胎をテーマにした最初の芸術作品と言われています。堕胎を罪とし木々に捉われ罰を受ける赤毛の女。赤毛は悪女のイメージとされ、枝からは乳房にむしゃぶりつく赤子の首が生えている。遠くには罪を犯した女達の木々。木の根がまるで臍の緒のように伸び、赤子の頭が飛び出している。ここは氷の地獄。
セガンティーニは絵を学んでみるものの、個性が強い為長続きせず、自分で開拓していきますが、41歳の若さで亡くなります。この作品は36歳あたりでしょうか、"堕胎の罪"とはどのような生まれ、境遇にあったら創造できた作品なのでしょう. . .
私はこちらの作品に目が留まりました。
同作家、アルチンボルドの『フローラ』という花でいっぱいの作品も好きですが、これぞ人魚という風貌の生々しさに惹きつけられます(人魚かわかりませんが)。
絵画の中で描かれる人魚たちは、人間を歌声で誘惑し破滅させるけど、この『水』はどんな性格を持つのでしょう。
と言うか62種類もいるんですか!?🐟🦑🐢🐡
『水』1566年
肖像画、62種の地中海の生物。
ジュゼッペ・アルチンボルド
Giuseppe Arcimboldo (1526〜1593)イタリア・ミラノ
以下アルチンボルドの作品を装幀に使った小説です。
こちらの作品もインパクトがあります。
男たちの屍の山に女性らしく横座りし、ネックレスには、拳銃、ナイフ、棍棒。髪飾りはカラスの巣。巣の中にある卵はドクロ。光輪に書かれているのは古代ローマの詩人の銘文「これが私の命令だ。私の意思は理性に勝る」。 局所に黒猫、指にドクロの指輪。パツンと切り揃えられた前髪に、幼さのある小さな肩幅に比べて、風船のごとく膨らんだ大き過ぎる胸。
100年以上も前に発表された作品ですが、幼女ふうの顔に似つかわしくない体は、現代日本のアニメでも見かける特徴ですね。戦うのに理性的判断はしない、気分だと言う彼女は幼女ではなく、男を、国を破滅させる妖女、魔女。クレオパトラ、ジャンヌ・ダルク、エリザベス1世、エカテリーナ2世、マーガレット・サッチャー、アウン・サン・スー・チー、アンゲラ・メルケル、エレン・ジョンソン・サーリーフ、他 . . . これらの人々を、皆さんはどう感じますか? モッサは当時、世の中に何を思い、この彼女を描いたのでしょう。人間は未だに戦争をします。テレビを観ると何も変わらないと感じてしまいます。戦争を起こす国の指導者を破滅させる魔女がいてもいいかも知れません。
怖い絵はたくさん紹介されていますが、この絵は頁を開いた瞬間、目を見張り、ゾッとしました。
『エル』(=彼女) 1905年
ギュスターヴ=アドルフ・モッサ
油彩、ニース美術館、80×63cm
"異形"の作品には女性画家が少ないのは時代でしょうか。現代では「怖い絵」展など女性にも人気。また東京でやって欲しいですね。
絵がどうしても多くなるので、もう少し解説的に重量感が欲しいところですが、中野さんの本を初めて手に取る方には、入門的に読みやすいと思います。と言っても、中野さんの本はどれも、とても読みやすく面白いのでお薦めです。
実は、Instagramには、ちょこちょこ掲載していたのですが、発刊され直ぐに購入、感想を書いたままnoteにはアップしたつもりでそのまま忘れ、眠らせていた記事です。加筆しています。
時のたつのは早いですね。
デザイン albireo
印刷 近代美術
写真協力 ユニフォトプレス
校閲 高松完子
DTP 山田孝之
発行 NHK出版
🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。
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