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日常

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#小説

はじめました

朝の一時間、毎日何かを書くことになった。

何でかと言うと、ことの発端は数日前。青山ブックセンターに普段本を読まない恋人を連れて行ったときのことだ。
彼に何か本を読ませようと、ずらっと並んだ本の中から、合いそうなもの、読みやすそうなものを探し歩いていると、実用書のコーナーにあった、小さな習慣という本が目についた。クマのイラストが描いてあり、可愛い。
彼は、おおらかで前向きな性格をしているが、行動に

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クリスマスを思い出す

東京は、ぐんと気温が下がった。
ついこの前までは暖かく、厚手のチェックのシャツなんかを上着として着ていたのに、唐突に本格的な冬のコート。
外に一歩を踏み出してみれば、地面から冷えがせり上がり、足の裏から身体の芯を冷やすような寒さだ。
そんな寒さを味わいながら、表参道の街を歩けば、クリスマスが近いのだなあ、ということをぼんやり実感する。レッドやゴールドやグリーンの植物に粉雪がかかって淡くぼやけたクリ

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元旦に、大黒様

元旦に、大黒様

2019年元旦。
泊まっていた友人の家で年が明け、夕方ごろ家に帰った。

母に、あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします、を言い、ダイニングで残り物のすき焼きを食べようとする、と、母に「ねえ、これ知ってる?」と言われた。
母が手に持ち、私の方に差し出しているのは、指先くらいの大きさの金色の大黒様だった。
もちろん私は「知らない」

やっぱり知らないよねぇ、と引き下がられそうになっ

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家に着くまでの三時間

家に着くまでの三時間

職場から家に帰ろうと電車に乗っていると、自宅最寄り駅まで後二駅というところで、急に電車が止まってしまった。スマホから顔を上げて、キョロキョロとしてみる。

……まあ、よくある遅延かと思いながら、帰宅ラッシュの満員電車の中、スマホに視線を戻し、Kindleで電子書籍を読んでいた。

どれだけ電子書籍のページを横にめくっても、一向に電車は動き出そうとせず、十分くらいが優に過ぎていった。遅延の原因は、線

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23歳の頃の日記

23歳の頃の日記

PCの整理をしていると、ドキュメントのフォルダに大量にワードのデータがある。

大学生の頃から文章を書いているので、蓄積がすごい。とっておいても仕方ないのかとたまに思うけれど、消してしまったらそれを書いた頃の自分のことを一生思い出さない気がして、消せない。

ただシンプルに「日記」というタイトルのものがあったので、開いてみると内容は、23歳になったばかりの頃に書いた日記。

読んでみると、かなり若

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シュークリームハウスに住みたい

シュークリームハウスに住みたい

予定のない日曜日、10時に起きる。

彼が起きた瞬間に、カツを食べたいと隣で言っているけど、起きたばかりで重い私の胃は、そんな気分じゃない。
起きた瞬間からお腹空いてるなんて、凄いね、なんて言いながら部屋の冷気を感じて、布団にくるまる。暖房のスイッチを押す。

ごろごろだらだらとしているうちにまた眠ってしまい、目を覚ますと13時。

重かった私の胃も、なんだか少し軽くなっている。
何か食べたいと彼

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