見出し画像

家に着くまでの三時間

職場から家に帰ろうと電車に乗っていると、自宅最寄り駅まで後二駅というところで、急に電車が止まってしまった。スマホから顔を上げて、キョロキョロとしてみる。

……まあ、よくある遅延かと思いながら、帰宅ラッシュの満員電車の中、スマホに視線を戻し、Kindleで電子書籍を読んでいた。

どれだけ電子書籍のページを横にめくっても、一向に電車は動き出そうとせず、十分くらいが優に過ぎていった。遅延の原因は、線路内での発煙とのこと。他の路線への振替輸送のアナウンスが流れると、周りの人々はパラパラと電車を降りて行ってしまい、満員だった車内にはゆとりが生まれた。

えーどうしようと思いながら、私も一度ホームに降りてみたものの、最寄り駅までは一路線しか通っていない為に、振替輸送を利用してもあまり意味がないのであった。

ホームの電光掲示板にある運転再開の目安は、今から一時間以上も後だった。


別に帰宅を急いでいるわけでもないので、タクシーでお金をかけて帰るほどでもないし、バスも使ったことないのでよくわからないし、とりあえず一時間半くらいこの街で時間を潰そうかと思い、外へ出てみた。でも、ちょうど大きな商業施設は閉店の時間で、服屋や本屋へ行って時間潰しすることもできず、高いビルを見上げながら途方にくれる。空は暗いし、風は寒いし、駅前の繁華街のキャッチのお兄さんは怖いし。

もう嫌だ~!誰かこの遅延に巻き込まれている人はいないのか~、誰か一緒に飲もうよう!と、甘えモードに入り、駅前の寒い外で、友人に電話をかけ始める。

地元が一緒の友人に電話をすると、すぐに出てくれた。

どこにいるの?と尋ねると、ジムが終わって自転車で彼の家まで帰っているよ~、テレビで放映される映画が見たいから急いでいるよ~、とのことだった。

全く遅延に巻き込まれていないし、地元にもいないし、友人の彼の家はここからまあ近いけど電車を乗らなきゃ来られないし、映画を見たくて急いでいるらしいし、これは完全にダメだなぁ、と思いながら、今の私の事情を話す。

すると友人は、

「え~かわいそう!一時間も動かないなら、一杯飲みたいよねぇ」

と言ってくれた。まあ、そのくらいは言ってくれるよなあ、と思いながら、

「そうなんだよね~、誰かと飲めたら一番ちょうどいいんだけどねぇ、最悪ファミレスで一人でご飯かなぁ」

と返し、まあここまで来ないよね、いきなり電話してごめんね、と心の中で諦めムードに。

すると友人は、

「えー、それはかわいそうだよ!じゃあ、今から行くよ~!」

と、言ってくれた。

「……え!来てくれるの!?」

と、かなり、驚く私。

「今、自転車乗ってるから、駅まで行って停めて電車乗ってちょっと時間かかるけど、それでいいなら!」

と言ってくれる友人。

「え~!!!ありがとう!!」

と、心の底から驚き&とてつもなく感謝でした。

ということで、数駅離れた地から、わざわざ友人が来てくれることになった。本当にありがとう。持つべきものは友だなあ、と思う瞬間が人生には沢山あるね。


そして、しばらくすると友人が到着し、路地裏の小さな居酒屋で飲むことに。

馬刺しとくらげポン酢と串焼きをつまみに注文し、飲む。

話の内容は、仕事のこととこれから将来のこと。好きなことでもっと成功するにはどうしたらいいのかな~とか。最近読んだ本に書いてあったこととか、死んだらどうなるのかな~とかとか。

そんな中で、私が一番興味深かったのは、何もない休日の過ごし方!

皆さん、予定のない休日はどのようにお過ごしですか。充実していますか。

私の休日はかなりひどい。
まず起きるのが大体、昼。で、ご飯を食べても、暇だし寒いので、またベッドに入り、スマホをいじる。そうするとまた寝てしまって、次は夕方頃に起きる。もう外は真っ暗だな~なんて窓の外を眺めて思いながら、またスマホをいじり、夜ご飯を食べて、掃除洗濯をして、風呂に入り、また眠る。それだけの一日。

ひどいよね!ほんと人間としてあるまじき姿だよね!

これはやばい、と自覚はしているのだけど、昔からこうなのでなかなか直せない。というか、直し方がわからない。

それを友人に相談すると、友人はそんな生活ありえないのだと言う。

まず、彼女にとって休日は週一日しかないので、無駄に過ごせないらしい。

それなので、彼女のすることは、

朝には必ず起きて私服に着替える。

部屋着は寝るときの服なので、寝る時以外は着ない。

そして、絶対に横にならない。

のらしい。めっちゃシンプルだけど、これをすれば確かに私みたいな怠惰な休日には絶対ならない気がする……だって全ての元凶は寝てしまうことにあるからだもの!と、かなりピンと閃いた。


翌休日から真似をして、起きたら私服に着替えて絶対に横にならない休日を送っています。こうすると、時間が沢山あって、いいね。無駄に眠らないって最高だなぁ。

最近は、無駄に食べないことも心掛けていて、お腹が空いたら少量を食べる。一日三食にこだわらない。満腹まで食べない。ということもしている。

節約もしているし、今年のテーマはなんとなく自然と”必要最低限”になってきているのかもしれない。欲望のままに何かをしすぎることをやめるというね。

スキンケアも皮膚科に通うようになったら、クリームやオイルやファンデーションなどをつけてはいけないと言われ、必要最低限のスキンケアになりました。そうしたらニキビなどで荒れていた肌がみるみるうちに復活していきました……という話も今度書きたいと思います。


友人と一時間半ほどお酒を飲み、充実した会話ができたな~と思いながら解散。本当に来てくれて、ありがとう。手を振って、別々の路線のホームへと別れる。

改札を抜けて、ホームへ降りると、電車はまだ少しだけ遅れていた。

ようやくきた電車に乗り込み、揺られ、地元の駅まで二駅で到着。

二駅手前で足止めを食らったことで、こんな二時間弱を過ごすことになるとは思わなかった。

人生何が起こるかわからないけど、起きてしまったことを面白い方向に変えていけたらいいですね。わざわざ来てくれて、充実した会話をしてくれて、友人に感謝です。


夜の地元は、飲食店のネオンがぎらぎらと光って、ジャージを着た若者が歩いていて、歩き煙草の匂いがふと鼻腔に入り込む。

家に帰る為に会社を出てから、三時間ほどかかり、やっと家に着きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?