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石映画鑑賞会 第四回 『ポーター: エベレストでの秘話』

ハーイ皆さーん。ご機嫌いかがですか?そろそろ石映画鑑賞に飽きてきた頃でしょうか?せっかくPrime Videoを自由に観られる身分になった私の、この際に映画を観倒そうという気持ちにもう少しお付き合いくださいね。

さて、これまで3回に渡り石映画を鑑賞してきましたが、意外にも『石と足輪』以外に石は全然出てきませんでした。びっくりです!『石と足輪』だって題名のわりには石が画面に映る時間はごく短かいものでした。この空振り具合はすごいですよ。狙ってできるものではありません。三度目の正直もCGという不発に終わったので、仕切り直しとして今回は確実に石が映ることを確認した映画を選びました。その際に課した条件は以下です。

  1. 「山」という検索ワード

  2. ドキュメンタリー

  3. 予告編あり

ね、完璧でしょう?ドキュメンタリーならCGを避けられるし予告編で石が確認できればもうその映画には絶対に石が出てきます。その結果選ばれたのが『ポーター: エベレストでの秘話』(2020年)です!




『ポーター: エベレストでの秘話』概要



あらすじ

若い特権階級のアメリカ人が、ヒマラヤ・ポーターになってエベレストの歴史を作ろうとする。しかし、彼の旅の中で、代わりに悲惨な現実を経験する。これは、エベレストの暗黒面の内側を見たものです。エベレストを支える人々の強さと痛み。そして、同じことをしようとする外国人の姿。

AmazonのPrime Video『ポーター: エベレストでの秘話』より

すごいですねこの解説文。冒頭からなんとムカつく響きのあるワードを入れてくることでしょう。特権階級ですって!!「エベレストの歴史を作ろうとする」も高慢です。知っていますか皆さん、エベレストってヒマラヤを測量したイギリス人の名前なのですよ。現地ではチョモランマ(チベット語)やサガルマタ(ネパール語)と呼ばれています。エベレスト本人は自分の名前ではなく現地語で呼んだほうが良いと考えていたらしいので、本人の考えを尊重しこの記事では日本でも馴染みのあるチョモランマと書くことにします。この機会にサガルマタも覚えてね。

この解説文を読むだけでなんとなーく展開がわかってしまう気もしますが、そこは気づかないふりをしておきましょう。予想が当たってつまらんと思うか、裏切られて笑顔になるか、早速観ていきましょう!


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観ました!


『ポーター: エベレストでの秘話』感想


冒頭

映画は3羽の鳥がさえずっているところから始まります。4羽目も飛んできて、愛鳥家としてはとても良い始まり方だと思います。どこに生息していたとしても鳥は集団でおしゃべりするのが好きなんですね。

また、こういった演出を見るのは初めてだったのですが、作品内で携帯電話の音が鳴り「電話をお静かに」という文字が出てきます。


序盤

開始早々お金の話になります。これは作品の最後まで通底する非常に重要な話なのでよく聞いておきましょう。あらすじのところで引用した解説文にも「悲惨な現実」「エベレストの暗黒面の内側」「エベレスト支える人々の強さと痛み」と書かれているように、この映画はポーターに対する待遇がいかに悲惨なものかを訴える側面があります。そのうちのひとつがお金です。

しかし!この解説文少々煽りすぎな気もします。これだけ読むと、主人公のアメリカの若い特権階級の青年はわりとやばい奴なのではという印象を受けますが、彼は現地の言葉を流暢にしゃべれるではありませんか!もうこれだけで見る目が変わります。大尊敬ですよ。最初のコーラやシャワーについて心配するアメリカの現代っ子とはまるで別人のような印象を受けました。しかもですよ、洋式のトイレとネパール式のトイレがあって、ネパール式のトイレしか使わないとのたまうではありませんか!ネパール式がどのようなものかわかりませんが、洋式を使ったら良いのに。この青年は何者なのでしょうか?この強いこだわりはどこから来るのでしょうか……。

もし解説文が100%正しいとした場合、この青年はネパールの駐在大使の息子とかなのでしょうかね。現地語に精通し特権階級といえばそれぐらいしか思いつきません。でも怪しいんですよねこの解説文。この青年が特権階級であるというような描写は映画内のどこにもありませんでしたから、もちろん、現地のポーターの人たちと比べれば恵まれた環境で生きてきたとは思います。仕事としてではなく経験としてポーターをしているのですから。でもそんなに悪くは言いたくないんですよね。本当にこの青年、映画の中で頑張っていましたから。

ドキュメンタリー作品として私が注目したのは、この作品にはナレーションがないことです。下手にナレーションがあるとどうしても説明色が強くなり、BBCやNHKのような公共放送的ダサさも出てしまいます。ナレーションがないことでフィクションとノンフィクションの境界線が曖昧となり話にもっとのめり込めるようになりました。


中盤

青年が移動するにつれ画面が変わっていき、今いる場所の標高が数字として表示されます。最初8000台の数字だったのでもうそんな高いところにいるのか!と思ったのですが、メートルではなくフィートでした。1フィートは、およそ0.3メートルなので8000フィートはおよそ2438メートルです。この青年は最終的に17,000フィート近くまで登っているので、標高およそ5600メートル付近まで荷物を運びながら山を登ったということになるのでしょうか。

注目は28分42秒頃。本作には字幕で時々誤字があるのですが、誤字のレベルをはるかに超越する字幕を発見しました!2ちゃんねるに迷い込んだような錯覚を覚えることでしょう。一体何が起きているのか……。あの『石と足輪』だってここまでの誤字はなかったですよ……。


終盤

山の風景がとても美しいです。特に標高が高くなると雪景色となるので白銀の世界は必見です。石拾い専門雑誌おすすめの石シーンは39:50頃から続く石原。大きな石がゴロゴロしています!固そうです。今までの石映画鑑賞会ではほとんど石が出てこなかったりCGだったりと散々振られてきましたが、ここに来てようやく満足できる石映像に出会うことができました。森林限界を悠に超えているからか植物は一切なく、画面には石か人しか映っていません。

終盤の画面にはポーターが交流を楽しんでいる様子も映りますが、それと共に自らの辛い状況の語りもあるので注目です。割かれている時間は短いものの、この映画が見せたい部分であることは話の流れの中で間違いないでしょう。


最後

最後は予想通りの展開というか、青年はきちんと目的を果たします。思いがけない事故などがなくて本当によかったです。9300フィートあたりまで戻ってきてみんなから祝福された青年の姿は感動的でした。そして遂にシャワーを浴び髭をそります。

この青年はヨーロッパ系の登山客の荷物を運んでいるのですが、チップはたった100ドル。およそ12日間かけての稼ぎが100ドル。そして不穏な文字『Unpaid』が左下に表示されます……。え、何、支払われなかったの?これが冒頭に書いたようなポーターの待遇とお金にまつわる現実なのか……。酷すぎる。

もちろん、稼ぎはチップだけではありません。日払いとして支払われる15ドルもあるのですが、それらは自身の食事代や宿代として消えていきます。なので実質チップのみがポーターの報酬となるようです。映画の冒頭でチップは強制と胴元は言っていますが、これは真っ当だと思いました。もしチップを任意にしてしまったらチップを全然払わないと登山客が出てくる可能性もあります。そうなるとポーターの稼ぎはゼロです。あんなに過酷な労働をしているのですからその対価はしっかりともらうべきだと思います。でも胴元よ、unpaidしたのは登山客ではなくあなたの可能性もあるよね……。よくわからん。ここに来てナレーションでの説明がほしくなる。


まとめ

ようやく満足できるほどの石を鑑賞できた今回の石映画鑑賞会。ポーターの現実と向き合わざるを得ない辛い時間でもありました。お金の問題だけではなくポーターと登山客は違う部屋で食事をしたり寝たりします。この差は労働者と客の差でもありますが残酷です。チョモランマで何が起きているのか、石以外にも見るべきところがある作品で良かったです。

本作は比較的芸術度が高く何事にもあまり詳しい説明がなされていないので読み違えたところもあるかもしれません。特にチップが支払われたかどうか、支払われなかったとしたらなぜ、誰が原因なのかはあまりよくわかりませんでした。強制的に徴収されるのに支払われないってことがあるのでしょうか?

映画に関しては当初の予想に反する内容で満足しました。青年はよく成し遂げたと思います。また、映像には期待していた通りに多くの石が映りました。良かったです!

そう、満足したので石映画鑑賞会はこれにてお開きにしたいと思います。Amazon Primeの無料体験ももう終わりましたし(2024年6月現在。第一回目が好評だったため第四回の今回まで一気に書き上げていました)。石映画鑑賞会の次回があるとすればまたいつかAmazon Primeの無料体験ができたときですね!その時には新しい映画も入荷していることでしょう。それではー


『ポーター: エベレストでの秘話』内の石拾いたい度
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

Max


この映画が気になったら、アジアンドキュメンタリーズにある『K2 アルピニストの影たち』もおすすめ。私がポーターの置かれた実情を知ったのはこの映画から


チョモランマに興味があれば『清らかな山々』もどうぞ


ネパールに興味があれば『スノーランドの子どもたち』も良いですよ


アジアンドキュメンタリーズ最高!


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