📚46【娘が巣立つ朝】共感はできないけど…… 920
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娘が巣立つ朝
伊吹有喜(1969年三重県生まれ、中央大法学部卒、出版社勤務を経て2008年ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー)
文藝春秋 386頁
2024/5/10初版(2022/1〜2024/2中国新聞など9紙に掲載、著者初めての新聞小説)
新聞広告や書評や著書インタビューを拝見して「これは面白そう‼︎」と飛びついた。
読んだ。
読みやすい文体。
適度に波乱が含まれ読み進みやすい。
映像化にももってこいだと思う。
面白いのだと思う。
ただ残念ながら、私には今ひとつ響かなかった。
個人の感想です。
着付け講師智子とサラリーマン健一の一人娘真奈。
結婚相手の優吾(一人息子)はプチセレブ。
母は元カリスマブロガーのマルコ。
父はハッピィ•リタイアメント•ファシリテーターとしてネットで情報発信するカンカン。
真奈と優吾の結婚に際し、お金の力でグイグイと主導権を握るマルコとカンカン。
経済力の差、参列者の数などに萎縮しながら鬱屈を募らせる智子と健一。
恵まれた育ちからか真奈の気持ちに寄り添う努力を怠る優吾。
もう‼︎どいつもこいつも目を醒ませよ‼︎
優吾の母マルコのマウントに傷つく真奈の母智子。
「悪気はないから許してやって」と真奈に伝える優吾。
あるとき「むかつく」と言った真奈に「そんな言い方しなくても」と優吾が傷ついた表情をする。
「ごめんね、悪気はないの。
優くん、そう言われたらどう思う?
あなたと結婚したら、この先こうやってお母様(マルコ)の暴言を浴び続けるんだね。
『悪気はない』って言われながら」。
真奈の言葉に思わず膝を打つ私。
元夫Hから「俺のお袋やで?」と暗に我慢するように言われたけれど、悪気がなくても我慢には限界があるのです。
主軸とは別に、智子•健一の夫婦関係、健一の淡い恋心、親族、介護問題が絡んでくるのが現代風。
真奈•優吾カップルの行く末とともに、智子•健一夫妻が選んだ道が、(ほんの少しだけ)興味深い。
優吾にコンプレックスを抱く真奈に、母智子が「お父さん(健一)は真奈ちゃんには、お金で買えない貴いものがあると言ってた」と言う。
それが「健康と知性と教養」だと聞いた真奈はガッカリして深く項垂れる。
何故ガッカリするの⁇
望んでも簡単に身につくものじゃないのよ。
役職定年が近づく健一は、無意識に不機嫌な表情になり口数少なく、毎日のようにため息をつく。
離婚届を置いて家出した智子を見つけ出し「帰って話し合おう」と提案。
暴力も暴言も吐かず、真面目に働き、智子の趣味も認めてきた健一は、家出した智子の気持ちを理解できない。
「世の中にはもっとひどい夫がいっぱいいるだろう」と言う健一に智子は言い返す。
「世の中には私よりつらい思いをしている人がいるから我慢しろって言うの?
よそはよそ、うちはうち。
あなたわかってないようだから、はっきり言うけど、不機嫌は立派な暴力。
静かな暴力だから」
そうだ‼︎そうだ‼︎
ため息反対‼︎舌打ち反対‼︎聞こえよがしの独り言反対‼︎無視反対‼︎
Hよ、必要なのは対話なの、もう遅いけど。
初新聞小説に際し、著者は幅広い層に興味をもってもらえるようにと「愛とお金」をテーマに据えた。
愛とお金が激突する瞬間として思い浮かんだのが「結婚と婚礼費用」。
当人同士だけではなく、親•親族を巻き込むことで世代を超えたストーリー展開が可能になる。
結婚式案を押し付けてくるマルコとカンカンに、当人達は「普通の式が良い」と言う。
著者が考える「普通」は明快。
「人には許容できる•できない範囲があり、その中間点が普通。
人によって違うから、交わるところを言葉を尽くしてすり合わさないと悲劇。
お金と愛情は尚更」。
そうそう、その通り‼︎
私は早く母から離れたかった。
家柄は別として、元夫H個人には貯蓄がなかった。
結納式も指輪も結婚式も披露宴も新婚旅行も要らないから、生活資金に回したいと思った。
義両親•実両親•私達ふたりの意見がいつも一致するわけではなかった。
大抵、義両親のゴリ押しに対して「俺の親やねんから」とHが私に折れるように迫ったし、結婚してからも子どもが産まれてからもそのスタンスを期待された。
もーやーねー。
実家の経済力も社会的な認知度も違う真奈と優吾。
波乱の末、一度は破談となるものの、お互いの気持ちを確かめ合い、再度手を取り合うことを選ぶ。
本当にいいの?
本質は変わらんよ。
お節介な私は待ったをかけたい。
善良な読者は「ああ、良かった」と胸を撫で下ろすのかしらね。
ひとりっ子同士の結婚とはいえ、いい年をした娘•息子。
可愛いのは解るけれど、いささか親が構い過ぎじゃないですか?
面白くないわけではないけれど、私には気持ちが悪いわ。
決して僻んでるわけじゃないけどね。
(10/24)
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