インドカレー屋でナンを頼まない人になってみた
ー モモを食べると覚悟を決めてからお店に入った ー
この日は土曜日。
すでに夜8時半を過ぎていた。
日暮里で夜ごはん難民になった20代女性こと私。
今の気分は餃子かモモの二択。
「モモ」
それはインドカレー屋に行けばだいたいある小籠包の形をした料理。
私の知る前情報はそれだけ。
食べたことはなかったが、ずっと食べてみたいと思っていた。
未知数のグルメだから未知数のまま食べてみたいと思って、中身がどんなものなのかは一切調べずにここまで来た。
今日の夜は何だか冒険したい気分だった。
危ない橋を渡りたい年頃の女の子こと私。
今日という日ほど「モモ」にトライするのに絶好の機会はない、と直感が教えてくれた。
餃子なんてまたどこかで食べればいい。
今日はモモにしよう、と決めた。
そうしたら次はお店選びである。
日暮里にインドカレー屋がなければ話にならない。
がしかし、ここは世界有数の美食都市ことトーキョー。
いろんなお店が所狭しと並んでいる。
インドカレー屋なんて歩いていれば、30秒に1個のペースで見つけられるのでは?
グーグルマップでインドカレー屋を探し、駅から一番近いお店を目指す。
あったあった。
その名も「エベレストカレー」
(クーポンめっちゃあるの今気づいた、、、)
お店は駅直結のちょっと閑古鳥の鳴いているビルのレストラン街にあった。
エスカレーターで上がっている途中、こんな時間だというのに長蛇の列ができているサイゼリヤがあった。
さすが世界有数の美食都市ことトーキョー(?)
横目で見ながら「エベレストカレー」に到着。
夜遅いこともあって、この時点でお客さんは私の他にカップル2組だけ。
インドカレー屋でデートって珍しいな?って思ったけど、、
ありました!「カップルセット」!
(結構量の多いセットでした。男性諸君、腕の見せ所ですよ。)
一応メニューを片っ端から見る。
ナンに、カレーに、インドのデザートもあるけど、
う〜〜ん、やっぱ今日はモモに決まりだな!
となってモモを注文する。
思えばインドカレー屋でナンカレーを頼まないのはこれが初めてだ。
(というのも、私の好きな食べ物1位はバターチキンカレー&ナン。)
モモが来るまでの間、
「インドカレー屋でナン頼まない自分、ちょっとツウだな?」なんて思って、気取ってメニューをパラパラ眺めたりなんかしちゃった。
(そんなことしてもどうせ私の視聴率0%。お店の中にいるお客さん、みんな相手の瞳しか見てないよ。)
だからこんなメニューに驚いて、フって笑ってても誰も気づいていない。
(キーマナン、ぺろん。これさらにカレーにつけて食べるの??)
チクタクチクタク
メニューを隅々まで見た。
チクタクチクタク
もう注文してから15分以上経っている。
「インドカレー屋でこんなに待つのなんて初めてだな」って思っていたけど、
よく考えたらモモって注文入ってから蒸してくれるのか!
そんでもって注文受けてから包んでくれてたりしてたら最高だな〜〜
なんて思っていたら、どこからか立ち込める不穏な匂い。。。
獣の匂いっていうのかな?
食べ物の匂いではあるんだけど、なんだこれ、、って思った。
けど、すぐに、「あ、私のモモちゃんか、」って腑に落ちた。
そして到着した私のモモちゃん。
食べる前からすでに愛おしいフォルム。
「ソースをかけてお召し上がりください。」と教えてもらう。
先にソースだけペロッと舐めてみた。
うーん、、なんだこれ、
見た目に反してしゃぶしゃぶのごまだれの味がするような、、
ソースについてはあんまり深追いせずに、恐る恐るモモに手を伸ばす。
一口食べる。
おっ
これは、
カレー味の小籠包、だ。
思いの外普通においしかった。
さっきの獣の匂いなんてまるでない。
漂うのはカレーの風味。
ちゃんと肉汁もじゅるっって言いそうなくらい入っている。
皮もぶ厚めで、もちもち。
私よりずっと前に入店していながらも、カップルセットに苦戦しているカップルを尻目に、私はほいっほいっとリズミカルにモモを口に入れていく。
これはイケるな〜
なんて
もったいぶって、のんびり味わうことにする。
それにしてもこのモモのカレー風味は一体どこからやってきたんだろう?
ソース?皮?肉餡?
??
食べ終わって気づいたらお店には私1人しかいなくなっていた。
お会計を済ませて帰ろうとした。
けど、ちょうど誰もいないし、お店の人も優しそうなインドスマイルを浮かべているし、ちょっくら勇気を出して聞いてみようかな、、!
私「このモモ、カレーの味がしたんですが、、」
お店の方「ア〜、ソースと具に入ってマス。」
私「ソースにも入っていたんですね。ソースはゴマの味がした気がしたんですが、、」
お店の方「ゴマ、正解デス!」
私「モモって小籠包に似ているんですね。」
お店の方「そうナンデス。モモはもともとネパール料理で、ネパールはインドとチベットの間にあるカラ、双方の食文化が融合シテいるんデス。モモ以外にもイロイロありますヨ。」
私「へ〜〜なるほど!!モモおいしかったです。ごちそうさまでした〜。」
内気なくせにお店の人とは喋ってみたいし、「ごちそうさま」だけじゃなくて「おいしかったです」まで言える人になりたいと思っている女の子こと私。
なんか頑張ったし、その分おもしろいお話を聞かせてもらえた。
インドと中国という大国に挟まれて、小さいながらも世界一大きな山脈がそびえる国、ネパール。
インドからカレーが伝わり、チベットからは小籠包が伝わり、、気づいたら融合されてモモができていたなんて。
(なんかカレーを持ったインド人のおじいさんと、小籠包を持ったチベットのおじいさんがエベレストの頂上で出会って抱き合っている光景を想像してしまった。安易だな。)
そういえばここのお店の名前、「エベレストカレー」だったな。
食文化は時に融合され、時に淘汰され、時にポンっと伝来したりして、進化を続けながら、今日も刻一刻と変わり続けている。
私はあるがままに、その変化を真っ正面から受け止めて行きたいな、なんて思ったりする。
古いものをただただ崇めるのでもなく、新しいものに無条件に飛びつくのでもなく、等身大の自分がその時食べたいと思ったものを素直に体に取り込んでいく。
そうすることで、自分も「その時代を生きた人」の1人になれるんじゃないかな。
夏の清々しい夜風に当たりながら、
今日はいい日だった、なんて振り返ったりして、私は帰路についた。
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