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第一話 誰もいないはずの部屋 2年3組 津島桜太朗
【あらすじ】
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能の薫くんは、その類まれなる存在感から学校の人気者。そのため、みんなによく頼まれごとをするのだが、彼に引き受けてもらうには条件があった。
それは、怪談をひとつ差し出すこと。
桜太朗は薫くんの面白さに惹かれ、集まってくる怪談に興味を覚え、彼のそばにいることになる。
薫くんはいつも、怪談の秘密に気がついてしまう。その秘密は、語り手さえも知り得ないもので─。
第四話 うつし世のこと 2年4組 中野志保
ある日の放課後、帰ろうとしていた桜太郎は、違うクラスの女子に呼び止められた。
「あの、津島くん、だよね……?」
「そ、そうだけど」
その女子は、まっすぐな黒髪と眼鏡以外これといって特徴のない、控えめな子だ。人の名前と顔を覚えるのがわりと得意な桜太郎でも、まだ覚えていない。だが、そんな子にでもそうやって声をかけられるとドキドキしてしまうし、この恥じらう様子から何の用かと期待してしまう。
そ
第三話 独り言ではない話 2年3組 瀬戸大樹
ある日の昼休み、職員室から戻った桜太郎は憂鬱そうな顔をしていた。
憂鬱というより、拗ねた子供の顔というか。食事の皿に苦手なものをてんこ盛りにされたのを目撃したような顔というか。とにかく、面白くなくてたまらなくて、機嫌がよくないという顔だ。
どちらかといえば常時ご機嫌な人種のため、そんな彼が憂鬱そうにしていれば、嫌でも目を引いたのだろう。珍しく、薫のほうから声をかけた。
「津島くん、どうした
第二話 後ろから呼ぶもの 2年5組 小川圭太
ある朝のホームルーム前、教室前の廊下で、薫が違うクラスの男子の男子に声をかけられているのを桜太郎は見かけた。
その男子は記憶違いでなければハンドボール部の部員で、何やら両手を合わせて薫を拝んでいる。
「どした? 確か、五組の小川だったよな? 薫くんに何か用事?」
「あ、津島! ちょうどいいところに!」
気になって桜太郎が声をかけると、小川という男子生徒は助かったという顔をした。自分のほ
この時代に生きているという実感
別に暗い話ではなく、私はつい最近まで亡霊みたいに生きてきた。なんというか、時間の感覚がおかしいというか、時代に取り残されてる感というか。
ちょっとエモい(エモくないかも)言い方をするならば、同時代性みたいなものを感じられずに生きてきたというか。
たぶん、私の感覚は2012年くらいで止まってたんですよね。概念としては現在が2020年なのはわかってるんですが、自分の肌感覚では全然わかってなかったと
【自著紹介】「秘密の初恋〜心を閉ざした貴公子は黒衣の花嫁を愛しています〜」
【あらすじ】
アリーセとベルント・カイン兄弟は幼馴染みだった。しっかり者の兄・ベルントと、アリーセと同じく美しいものが好きで夢見がちな、弟のカイン。アリーセは密かにカインに恋をしていたが、両家の両親が決めたのはアリーセとベルントとの婚約だった。しかし、結婚式を目前に控えたある日、ベルントは流行病であっけなく亡くなってしまった。それから半年後。アリーセの初恋はよきせぬ形で実ることになる。両家の
コンテストで賞をいただいた!
昨年11月、出してみたいコンテストがあり、頑張ってコツコツ仕上げた小説がありました。
そのコンテストは魔法のiらんどで開催された『野いちご編集部に作品を読んでもらおう』という趣旨のもの。
書籍化確約ではなかったものの、編集部のセレクト作品に選ばれれば検討はしてもらえるということで、張りきって書いてみたのです。
前々から興味があったホラー小説に挑戦し、驚くほど楽しくスラスラ書けて、自分の中でか
【自著紹介】「愛しい夫は森の美しき神〜捨てられ令嬢、幸せをそそがれる〜」
【あらすじ】
伯爵令嬢ルゥシーは、遠い異国から嫁いだ母亡きあと実父に疎まれ、とうとう森に捨てられてしまう。その森で恐ろしい化け物に襲われたルゥシーは、美しい獣に助けられる。その美しい獣は神々しさすら感じさせる美貌の男性へと姿を変え、ルゥシーを安全な場所へと連れ帰ってくれた。美貌の男性の正体は、この森でかつて崇められていた神・ヨニ。「幸せになりたい」というルゥシーの願いを叶え、ふたりとヨニの使