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想いの数は編み目の分
とっさに廊下の向こうに隠れた自分を褒めてやりたいと思った。
「手編みのマフラー? 重いよなぁ」
……う。
笑いまじりの言葉に、耳と胸が痛い。切なく悲しい思い出が蘇り、泣きたくなる。
自分のことではないはずなのに、自分が責められているような気がして。俯いたまま動けなかった。
同僚が口にしたのは、学生時代、大好きな人を思って頑張って作ったマフラーを見て、先輩が言った言葉と同じもの。
『プレゼ
愛され彼女の気持ちの行方
目の前に立った彼女は、燃えるような目でこちらを見つめていた。怒りに染まった表情は、けれどどこか、泣きそうにも見えて。
なんで?
純粋な疑問が脳裏に浮かぶ。
貴女、私の事なんて、ただの先輩だとしか思っていなかったでしょう?
そう尋ねたかったが、燃えるような目でこちらをにらみつける彼女は、す、とこちらに向けて手を上げた。
「片倉先輩、『持って』ますよね?」
指を指す先は、紙袋。何を気にして
いつかに届く終わりに
「うーん」
テーブルに頬杖をついて、里恵はうなり声とともにため息をついた。握っていたペンで書類の端にぐるぐると線を書く。意味はない。なんとなく動かしているだけに過ぎない動き。
「里恵?」
早希がのぞき込んでくる。あ、と顔を上げて里恵は笑顔を作った。
「久しぶり-」
「そんなに言われるほどかなぁ。一ヶ月くらいじゃない?」
コートを脱ぎながら早希が言うのに、「学生時代に比べれば一ヶ月なんて久しぶ