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真・邪道勇者 その8   

いわゆる犯罪者のレッテルを貼られているが、そんな私にも譲れない物がある。

それは「己の道」を阻害されない、という部分だ••••••むしろ、この点にだけ関して言うなら犯罪者の方が真摯だろう。3時間前、私は検問所を潜入任務(実際には貴人の誘拐だが)の為に偽造した証明書と偽造した経歴、つまりいつも通り嘘八百の話で押し通ろうとしたものの、情報戦で既に先を行かれ即座に襲い掛かられた。

開き直りはしても、被害者ヅラはしない。というか、そんなことをしていたら私は年中被害者ヅラだ。第一、誘拐にしてもそうだが相手は当然それなりの組織であることが多く、むしろ情報戦で全て勝利するなど有り得ない。

想定内だ。なので私は罵詈雑言を吐く衛兵の顔面を叩き割った。鎧で何の種族かはわからなかったが、拳で鎧ごと頭を潰せば何の種族であれ死ぬだろう。現に、その何かしらの種族の衛兵は壁に叩きつけられ動かない。続いて他の衛兵にも手を出し結局はまた大勢の衛兵を叩き殺しつつも、その方が標的に近づけると思いわざわざ捕まって今牢にいるという訳だ。

だが、それはそれとして私の道、私の自由を奪われるのは御免蒙る。勝手に誘拐の為に潜入しといて身勝手な奴だと思われるかもしれないが、それはそれこれはこれという便利な言葉があるのを知らないのか?

無論、私は知っている。故に脱獄した。

見渡すと、我々が連れてこられた場所は大理石で出来た大きな屋敷で、恐らく元々金持ちの家か何かだったものを要塞に作り替えたらしい。所々に生活の跡が見えるが武装した衛兵が巡回する屋敷など誰も住まないだろう。

まして、魔術だの魔物だの。連中は暇なのか?

以前も言ったが、魔術だの何だのについて一ミリも私は知らん。そのような科学で証明出来ない理論など知ったことか!! 第一別に理解しようがしまいが首を斬り落とせば死ぬのだから、そこまで拘泥する必要もあるまい。

余談だが、金持ち連中の集会場でもあるらしい。一緒に来ている、というか一緒に捕らえられた青髪の猫耳娘、ナイフは多いがスタイルに乏しい犬千代はそれら集会という名の麻薬乱交を冷たい目で眺めていた。
牢を出てすぐ、とまでは行かなかったがそれなりに移動したところ、むせ返る香の匂いと嬌声の嵐が大広間らしい部屋で行われており、エルフも人間も仲良く欲望の渦に耽溺している。

どの種族も同じだ。目先の欲望を突きつければ、いとも容易く言いなりになる。

その点、我々が誘拐する予定だったハイムとかいう小娘は聡いらしい。自分達には誇り高い種族という体裁だけが残っており、実態としては腐敗した上層部は人間と深い繋がりがあり、隣国ポルドアとの宗教戦争は抱ける女を増やす為。ちなみに、そのポルドアとかいう国にはダークエルフなる種族がいるらしく、何でも武器武装に魔術とやらを付与し、殺す事が得意らしい。

••••••最も、賢明な読者はそのような瑣末事に興味はあるまい。だから読者の興味ある部分を抜粋すると、褐色の強気女が多くてただのエルフと違い、細身ではあるが肉体の感度は良い、とだけ覚えておけ。

実際、奴らは敏感だ。山奥に住んでいるからなのか、気配探知に長けている。

実際に試したが、割と男性経験は少ないらしく、一度落ちれば早かった。
何が、というのは読者の想像に任せよう。まあ、強いて言えばエルフでもダークなエルフでも、女は演出に弱いとだけ語っておく。

表面と実態は、何であれ違うものだ。攫う予定だった神の依代とやらが、実際には上層階級の人形であるのも変わらない。というのも、人間は表面しか見ないからだ••••••表面だけ整えれば、何であれ金を払う。
中身など誰も気にしないし、考えるのも億劫だ。
中身に手に入れる輩も次第に向き合わなくなっていく。何せ、金にならなければ、考える奴もいないのだ。であれば、表面だけ整え利益を啜り、国庫から金を盗んで政治家になるのが正しい道だ。

そんな中で、何かを掴むにはどうするか? 向き合うのは無駄だ。実際に試した私が言うんだ間違いない••••••それより、表面を整え利益を確保し、賭博などの本能に付け込み獣として扱う以外に道は無い。
実際、獣だ。連中自身は自分の意志で考えてるつもりらしいが、つもりなだけだ。実際には物を見て金を払うような考えはないし、ただただ目先の吊るされた糸へと従うのみ。読者の例に漏れずエルフも同じだったようで、傀儡政府が幾度と候補の女を「捧げ物」として、差し出してきたのが実情らしい。

自由を得たい。誰でも考える事だ。

••••••見た目が猫なのに猛犬のような犬千代と違い、ハイムとかいう女は見た目が犬なのに中身は飢えた虎らしい。可愛げがないのはどちらも同じだ。
無論、本人の前では言わないが••••••ナイフが滑っても困る。

種族の責任、みたいなものは周囲の身勝手であって、ハイム自身は大して気にしていないらしい。その辺は私も同じだ。人間種族の誇りとやらは役に立たない。大体人間社会において何度も言ったが人として扱われた事など無いし、自分を人間だと思った事など一度もない。まして、人として生きた事など有り得ない。

異種族でもない筈なのに、ひたすら迫害されてきたからな••••••••••••考えてみれば不思議な話だ。まあ、今になって思うと「一人だけ人間の形をした、人間ならば有り得ない発想の奴がいる」というのが実情かもしれない。

何せ、幼少期から殺人に抵抗が無かったからな。

むしろ、我慢するのには苦労した。馬鹿な子供は刺激したら危ないという事すらも分からないのか、自分が強いと言いたいが為にこちらを刺激してくるのだ。しかし殺してしまえば罪に問われる。生憎と田舎では逃げおおせる事が難しいし、それに依頼もないから金にもならない。
仕方ないので、我慢するしかない訳だ••••••無論、何度かやりかけたが。

そんな私からすれば、乱交パーティの一つ二つ、珍しくもない。人間が痴態を晒すのはいつもの事だ。むしろ、安心すら覚える。物語から勇気を貰って学んで成長、敬意と共に金を払う読者なんて、現実には存在しない。

いたら取材したいくらいだ。実際には、一円も払わずたかるだけだが。



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