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夢とか憧れに、押しつぶされそうだった。

あなたの夢はなんですか? って

問われる度に、夢の定義が揺らぐ。

夢って言葉にまぶされた、仕事だったり

人だったり、出来事だったり。

ちょっと惑わされそうになって。

夢がほんとうになかった若い頃がとても

駄目な気がして。

夢をいちはやく決めた人から、世の中の

道をわたるチケットを手にしているから、

その夢がみられないじぶんはダメなんじゃ

ないかって思ったりしていたかなって。

そんな若い頃を思い出す。

でも年を重ねて見てみえてきたのは。

やりたい仕事って最初から目の前にある

わけじゃなくて。

叱られたり、叱られた後じぶんで考えたり

その仕事をいち早く仕上げるための

自分なりのルールなどをつくったりして、

頭打ちながらその仕事と向き合っていく

うちに好きになっていくものなのかも

しれない。

恋に落ちたら、恋を育ててゆくように。

わたしは、仕事を決める時にできそうで

かつ好きなものを選択肢にしてゆくことに

決めたのだけど。

その消去法でやっていくと、とりあえず

残ったのが今の「書く」という仕事だった。

初めてから何年たっても、夢がかなったとは

思えなかった。

わたしが見たかった景色ってこんなにも

眠たくて、思い通りにならなくて

打ち合わせすらうまくできない、煮え切らない

ものなのかと悩んだ。

アポを取って取材に伺う。

伺った後に原稿を仕上げるという

この一連の流れのどこにもつまづいていた。

憧れと夢は似て非なるもので。

もろくも崩れ去るのだけど。

会社を辞めても書くことには、みっとも

ないぐらいにしがみついていた。

喰えるとか食えないとかは別にして

書いていた。

それしかないって思っていたし、

それをわたしの手から取ったらもっと

なにも残らないと思っていたから

かもしれない。

辞めてみたことはないのでよくわからない。

「スナックキズツキ」という益田ミリさんの

漫画原作がドラマ化されたものを

毎週みていた。

夜眠る前の楽しみにしていた。

アルコールを一切提供しない

スナックのママ、トウコさんが

その日のお客さんとカウンター越しに

会話している。

大学に行くべきなのか進路に迷う女子高校生

芽衣ちゃんがぽつりと言う。

「あたしって何? 大人って将来の事ばっか言ってくる」

って。

その気持ち、あの頃のわたしだって思いながら

見ていた。

今を生きている今よりも、将来の方が大事なの?

って苛立っている。

そんな彼女がトウコさんに

「夢ってあったの?」 って直球を飛ばす

凄いよね芽衣ちゃんのその一言。

ワンフレーズで年上の人の心を

時にかき乱す。(わたしだけか!)

その台詞かなりグサッと刺さったのだけど。

夢があったのに、トウコさんは叶えて

いないように芽衣ちゃんにはみえるのかなって

そんなことを想っていた。

そしてわたしはトウコさんの次の

言葉でまたもうひとつ、矢を放たれた気分になる。

トウコさんが考える夢についての話だった。

「夢ってね、叶っただけじゃだめなの。
離れないように、背中にくくりつけて
歩き続けなきゃなんない」

ドラマ「キズツキ」トウコさんの台詞

カウンター越しの高校生に

「わたしは下ろしたけどね」

って言う。

トウコさんは一度漫画家になった夢を

叶えた人だった。

そして連載が打ち切りになってから、

彼女の父親が亡くなって、そしてマンガを

彼女もあきらめる。

そして、今のスナックのママさんになる

のだけれど。

このドラマを観ていて、わたしの夢という

輪郭が少し見えてきた気がしていた。

今ならすこし言葉に置き換えられる気がした。

夢って、ゴールじゃない。

ゴールにみえるけれど、育み続けなければ

いけない、植物の種のようだと思った。

自分で水をやったり、誰かに水をもらったり

日向をむけるときは自ら日向をむいて

じぶんを育てる。

そうやって、共に歩いていくものなのだと。

わたしもまだまだ「書いてます」と大きな

声では言えないけれど。

「書いてきた」んだよなってことを振り返り

ながら。

時々、新人だった頃は夢なんかじゃないって

思えていた仕事が、今になってこれがわたしの

やりたかった形だと気づくことがある。

言葉を考えている時はひとりであったとしても

その考えの中に、無数のわたしと出会ってくれた

人やものたちとの出会いがあったからでてくる

言葉なんだなって思うことがよくある。

ひとりじゃおもいつかないそんなアイデアもある。

誰かから言葉を引き出せたとしたら、それは

誰かの中にあった言葉をその人が、わたしを

信じて思わず語ったりしてくれたおかげ

なのだと思う。

ひとりじゃないよという言葉が、さみしさの

反対側に位置するのではなくて。

仕事へのアンサーワードだとしてみたら。

仕事ってひとりだけじゃできないよってことで。

ほんとうにいま言えるのは、誰かと出会えたから

今のわたしがあるとしか言えないなって

そんなことを思っている。

今から仕事に励む新しい人達のエールの

言葉にはほど遠いけど、これから出会ってくれる

人がきっといると信じることが、わたしの仕事の

夢なのかもしれない。

きょうみつけた 種を手のひらに あそばせて
いつかじゃなくて 今水をあげよう いつかじゃなくて





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