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大学4年間で600冊以上の本を読んだ僕がお勧めするバイブル本50選。【前編】

 お久しぶりです、航大です。

 昨年の3月に大学を卒業して、最近は何してるの?って聞かれることが増えました。なので、このnoteでは、本を紹介しつつ、自己紹介になるようなものが出来たらなと考え、書くことにしました。

 アメリカの旅行記として、長めのnoteを書き、はや9ヶ月が経ちました。そちらでは、当時の進路へ対する思いや、起業を意識し始めた学生が“テクノロジーの聖地“シリコンバレーへ行って感じたことをまとめています。よければ、ぜひ。

 「最近は何してるの?」への答えですが、一言でこれだと表現するのに苦しむ時期を過ごしています。というのも、昨年度頂いていた内々定を辞退してしまい、新卒の時点では、無職になってしまっていました。

 そこから、Forbes JAPANというビジネスメディアで編集者アシスタントとしてインターンをしたり、先日京都で行われたIVSでは、「地域スカラシップ」を企画した友人の手伝いをしていました。上記のnoteで話題に上げた“アメリカで展開する新たな事業“は未だ始まったとは言えない段階で、起業家(起業準備中)、フリーランスなどといった肩書きは適さないようにも感じていんます。ギャップイヤーなのでしょうか。

 人前では、ギャップイヤーを“選んでいるんだ”というように自信ありげに振舞っていますが、実際は、人と違った選択肢をとった不安は常にあり、強さよりも“選ばざるを得なかった”弱さも同時に大きいわけで。

 先が見えず、自分の選択肢を正解にするため、前を向くしかない、そんな熱い言葉で自分を洗脳し、毎日なんとか生きてます。しかし、不安と同時に、目の前にある、多くの可能性に胸を躍らせ、上京してから充実した日々が続いています。

はじめに 

 なぜ働いていないのに本を読んできたのか


 さて、自己紹介はこの辺りにして、本題に入っていこうと思います。このnoteは、半年ほど前から構想しており、出来れば、大学卒業のタイミングで出したかったです。けれど、重い腰がなかなか上がらず、卒業から約4ヶ月たった今、ようやく出せています。

 小さい頃の僕は、読書とは無縁のヤンチャな少年でした。大学時代、僕が読書にハマったきっかけは、コロナが直撃したことが非常に大きいです。

 引きこもり期間を終え、大学へ入学したはずなのに、夢を見ていた”キャンパスライフ”はどこにもなく、京都で一人暮らしを始め、大学一年生になった僕は、あまり外に出られず、家の中で受験期と同じような日々を送っていました。

 リモートで授業を受け、オンラインで課題を提出する、
 サークルでは、リモートで新歓が行われる、
 友達も出来ず、家では映画とYouTubeばかりの日々、

 まずい、このままではあっという間に大学3年になり、就活が始まってしまう、そんな焦りが僕を読書に駆り立てました。

 高卒認定試験と大学受験を、ほぼ参考書による独学で乗り越えた僕には、多少なりとも、本を読むことで現実を変えてきた成功体験のようなものがありました。

 高校時代に大きな挫折をして、なんとか普通の道へ戻ることが出来た。しかし、やっとのことで手にした大学生活、このままで終わらせたくない、、どうしたらいいのか分からず、なにかしなきゃ、と有り余ったエネルギーの矛先を一旦、全て読書に向けることにしました。

 今回のおすすめ本で、小説があまり出てこないのは、嫌いだからではありません。上記に書いたような背景があるからです。小説も大好きなので、どこかで機会があれば、またまとめたいです。


 ”読学”(読書留学)のススメ


 本の紹介の前に、この文章を共有させてください。先日、Xにて見つけた投稿です。

本を読みたいから1年休職しますとかあってもいいと思うんだ。だって世の中にはこんなにたくさんのすばらしい本があって、死ぬまでにぜったいに読みきれないのだから。

k @k855304さんのX(旧Twitter)にて。


 さらに、1つの提案をさせてください。

 「留学」が「外国に長期間とどまって勉学すること」であるのだとすれば、「本を通して、自分とは異なる著者の思想に飛び込み、新たな知識に触れ、深く勉学すること」を読書留学、すなわち、「読学」と呼ぶのはいかがでしょうか。

 留学と異なり、「読学」は、就活では全く評価されていない現状です。

 では、僕は自分の学生生活の使い方があまり良くなかったのでしょうか。

 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者の三宅さんは、「本が読めなかったから、会社をやめました」と述べ、書籍の中で、働きすぎて本を読む余裕がない社会に批判的な見方をしています。

 本が読めない社会、皆さんはどう思われますか。

 僕は、就活であまりいい評価を得られず、現在もふらふらしてしまっているのですが、一旦、この学生時代の時間の使い方への判断を保留にしようと思っています。現状、あまり良い評価はされていないですが、「学生時代、この経験(読学)をしていたから、今の自分がいるんだ」と胸を張れる未来に向けて、頑張ろうと思っています。いつか、「読学」を普及する活動もしてみたいです。(笑)

 次章から本の紹介へ入ります。


1. 大学生におすすめの本【5選】


 誰と過ごすか、どんな本に出会うか、何に多くの時間を使うか、どんな経験をするか、はより一層重要だと改めて思います。ここであげる5冊は、今の自分を形作る重要な本ばかりです。多くの影響を受けました。大学1年の頃に自分がこのnoteを読みたかった、そんな思いで紹介します。


(1) 『苦しかった時の話をしようか:ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』

 コロナ禍だった大学1年の夏、将来に対して漠然とした不安を抱いていた僕に、とある方がおすすめしてくれた1冊です。大学4年間で4-5回ほど読み返し、一時期、友人へ誕プレとして送りまくっていました。

 本書は、日本を代表するマーケターの森岡毅さんが、新社会人を迎える娘宛に書いた手紙が元となっています。自身の経験も踏まえた上で、社会に出る上での数多くの教えが示されています。森岡さんは、ビジネスマンとしてエリートなのはもちろんなのですが、若者や人生への考え方がものすごく好きで、尊敬する人の一人です。

 何度か読み直す中で、この本から得る学びが変わっていきました。最初は心に寄り添ってもらえる内容でしたが、もっと深いエッセンスがあると感じたのが、「第2章 学校では教えてくれない世界の秘密」です。P&Gで一流のサラリーマン半生を過ごした後、現在は株式会社刀の代表取締役兼CEOを務める彼は、「資本主義の本質」と題して、以下のような文章を書かれています。

(前略)だから、サラリーマンが働いて生み出した多額の価値を、その外で資本家たちが山分けしていることを意識できない。自分も向こう側の世界に行こうと思えば行けるのに、パースペクティブに無ければそのオプションを意識すらできないのだ。覚えておいた方が良い。資本主義とは、無知であることと、愚かであることに、罰金を科す社会のことである。

森岡毅著『苦しかったときの話をしようか』p.62

 このフレーズが強烈で、僕は大学4年間、「資本主義」という大きすぎる概念に取り憑かれることとなりました。(笑) しかし、この内容は、別の本を読んでいても、書かれていることとよく重なるんです。

 受験競争を経て、何となくいい大学に入って、これからもいい会社・肩書きを求めて生きて行こうとしていました。僕は、知らぬ間に「資本主義」社会の一員になっていて、思考や行動の多くは、この社会システムの影響を受けているようでした。他人軸でなく、自分軸でキャリアを考える際、どう生きたいか、と考えさせられる大きな影響を与えられた1冊です。


(2) 『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』

 この本もまた、大学1年の頃、友人に普及しまくっていた本の1冊です。瀧本哲史さんは、日本を代表するエンジェル投資家、また、京都大学の客員准教授なども務め、その著書でも、僕たち若者に多くのメッセージを残してくださいました。およそ5年前に逝去したことは非常に残念ですが、彼に残した多くの“武器”に、何度も助けられてきました。NewsPicksの以下の記事が、本書の内容の入口としてもおすすめなので、もしお時間があれば一度ご覧下さい。

 本書は、昨年映画にもなった「君たちはどう生きるか」という問いを読者に投げつけられます。国内ではトップレベルに、優秀な学生が、安易な資格やスキル、高いTOEICの点数をとったとしても、「コモディティ」(≒差別化できず、代替可能な商品、サービス)にしかならず、市場での価値は下がっていくばかりだ、と。

 それらのメッセージは、両親の勧めもあり、TOEICや会計士の資格などに挑戦しようとしていた当時の僕にとって、コンパスを失った大きなショックであったのを覚えています。それから4年が経った今ですが、生成AIの技術進化も進み、彼の伝えていたメッセージの意図を、より深く理解できているきもします。

 瀧本さんは、コモディティ化の潮流から逃れる策として、「スペシャリティ」になることを挙げています。「ほかの人には変えられない、唯一の人物(とその仕事)」のことを指したその概念は、経済学が希少性の配分を考える学問である、と言われていることからも深く腑に落ちました。

 スペシャリティになるために必要なのは、これまでの枠組みの中で努力するのではなく、まず最初に資本主義の仕組みをよく理解して、どんな要素がコモディティとスペシャリティを分けるのか、それを熟知することだ。
 その理解がなければ、どれだけハイスペックなモノやサービスを生産していても、コモディティの枠に入れられ、一生低い賃金に留まることになるだろう。

瀧本哲史著『僕は君たちに武器を配りたい』pp.17-18


(3) 『新版 思考の整理学』

 外山滋比古さんは、愛知県の僕が通った高校のOBのようです。高校生の時、学校の先生にお勧めしてもらって時、初めて手に取りました。同級生の多くが読んでいたのが印象的です。この本は、読書習慣のない当時の僕でも読みやすく、トピックひとつずつの内容に深く考えさせられたのが印象に残っています。

 「思考」というものに関して多くのヒントをもらった一冊ですが、特に、「セレンディピティ」(2018版、p.66-)の一節が好きです。本書を通して知った概念なのですが、8年ほどが経ち、実社会の中でも頻度高く思い出されたフレーズでした。少し前に改訂版が出たようなので、よければそちらを手に取ってみてはいかがでしょうか。


(4) 『20代にしておきたい17のこと』

 どんな風に大学生活を過ごしたらいいのだろうと考えた時、Googleで、「大学時代 しておいた方がいいこと」と調べたことある方いないでしょうか。僕はそんなことを調べる人間です。(笑) 社会に先に出てる先輩からいろいろ教わった方が良いだろう、と考えるタイプなので、“した方がいい”系の本は読み漁ってきました。その中でも、かなり面白く、実感としてやってきて良かったと思える内容が書かれているのがこちらになります。

 「〜した方がいい」って上からでなんか嫌ですよね。けど、参考になることも多いとも思うんです。僕も、「新卒は就職した方がいいよ」と散々言われました。「本は読んだ方がいいよ」、「風呂は帰ったらすぐ入った方がいいよ」と言うのと全部同じです。それらは大抵、ポジショントークになりがちだと思うんです。出版社は、「本は読むべきじゃない」とは言えませんよね。

 言葉には必ず何かしらの意図がある。その事は頭に入れた上で、僕は、1度聞いてみることにしてます。最終判断は自分でしますが。あ、ちなみに、この本を解説した中田敦彦の動画はかなりおすすめなので、“見た方がいい”ですよ。


(5) 『暇と退屈の倫理学』

 帯に、「2022年 東大・京大で1番読まれた本!」とデカデカと書かれていました。更に、僕の好きな芸人・若林正恭さんもお勧めしていました。「読んだ方がいいよ」と強く推されているようで、つい読んでいました。

 本書は、「暇とは何か」「なぜ退屈なのか」といった問いに対して、哲学者・國分功一郎さんが、真っ向から向き合った内容です。特にハイデガーなどの概念は難しく、1度読んだだけでは理解が追いつきませんでした。

 その中でも特に僕は、消費社会を批判しつつ、現代を分析した箇所が好きで、卒業論文にも引用しました。昔と比べ、モノに恵まれ豊かになった我々は、幸せになったと言えるのでしょうか。一節を引用して、締めくくります。

資本主義の全面展開によって、少なくとも先進国の人々は裕福になった。そして暇を得た。だが、暇を得た人々は、その暇をどう使ってよいのか分からない。何が楽しいのか分からない。自分の好きなことが何なのか分からない。そこに資本主義がつけ込む。文化産業が、既成の楽しみ、産業に都合のよい楽しみを人々に提供する。かつては労働者の労働力が搾取されていると盛んに言われた。いまでは、むしろ労働者の暇が搾取されている。

pp.28-29


2. お金に強くなれる本【5選】


 僕の価値観の一つに、「机上の空論だけ語る大人になりたくない」というものがあります。そのまま学者を志す道も一瞬考えたのですが、もっと社会に出て肌で感じたい、という思いもありました。

 資本主義には、多くの社会問題があるものの、世界の潮流として一般的で、生きていく上で、お金というものは決して無視できません。お金よりも大切なものはたくさんある、そう思うからこそ、資本主義社会を深く理解し、ハックしてみたいという衝動に駆られるのです。

 皆さんは「お金持ち/お金を稼ぎたい」と聞くと、どういった印象を抱きますか。以前の僕は、漠然とした不安などネガティブなものが多くありました。しかし、お金はただの”道具”にすぎないとある方に教えてもらってから、その歴史や使われ方、人それぞれの価値観に興味が湧くようになりました。どうやらお金を学ぶことは、この社会を知ることに強く繋がりそうなんです。僕もまだ勉強中ですが、学ぶ過程で参考になった5冊を紹介します。


(1) 『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』

 本書は、お金に関する教養小説としてかなり読みやすいのですが、東洋経済による「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」にてグランプリも受賞しており、本書を通した著者のメッセージ性も共感していることから、かなりおすすめの1冊です。

 著者の田内学さんは、東京大学大学院出身後、ゴールドマン・サックスで16年活躍した金融トレーダーです。資本主義のど真ん中で働いていたからこそ、「大切なものはお金ではない」と考えられている方で、現在は社会的金融教育家として講演活動などにも励んでいます。一度、お話の機会を頂いたこともあるのですが、その人柄も素晴らしく、社会の先輩としてとても尊敬している方の1人です。続編も考えられているようなので、かなり楽しみにしています。

 補足になりますが、田内さんはnoteにもかなり力を入れていて、僕は、毎回楽しみにしている、ヘビーな読者の1人です。特に、ゴールドマン・サックスを辞めて、本を描くに至った以下のnoteはかなり面白かったです。本だけに留まらず、YouTubeにて、pivotやNewsPicksにもよく出演しているので、是非チェックしてみてください。


(2) 『改訂版 金持ち父さん貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント:経済的自由があなたのものになる』

 派手な表紙で、レビューを見てみると著者や、おすすめしてくる人に関して賛否両論ありそうです。ただ、子供の頃からお金に関して勉強することの大切さを強く主張する本で、その中身もかなり学びになります。

 お金に関する本は計30冊ほど読んだのですが、本書の内容を参考にしている本は数多いです。お金持ちと貧乏人では習慣や考え方が全く違うこと、消費と浪費と投資の違い、レバレッジ(テコの原理)について、努力は成果に比例しないこと、など分かりやすく書かれています。シリーズの別作品もかなり面白いので、まずは中田敦彦の動画からでも見てみてはいかがでしょうか。


(3) 『夢と金』

 《「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。》と西野さんは冒頭で述べます。先程も述べたように、僕は大切なのはお金ではない、という思いを抱えつつ、世界の潮流を考えた際に、お金というものを無視出来ないから学び、稼ぐ必要があるという葛藤のような感情を抱いています。本書は、そんな葛藤を抱いた人にぴったりの1冊です。

 やりたいことはなにか。得意なことはなにか。好きなことはなにか。なにを人生の軸にしたらいいのか。就職活動では、そんなことがよく語られていました。そこでは、お金(給料)に関してはあまり議論がされず、それは、ある程度の水準(手取り20万前後)のもと、暗黙の了解である風潮すらありました。西野さんは、お金に関する話をすることに嫌悪感を抱いた”大人たち”に警鐘を鳴らしています。

 本書では、目の前にある選択肢の中から「やりたいこと」を選ばなければならない、そこにある違和感の背景、お金を巡る色々な話がされています。最後に、特に僕に響いたワンフレーズを引用します。

最後に大切な話をしておく。
キミに夢はあるか?やりたいことはあるか?
まあ、ほとんどの人が「特にない」と答えるだろう。
勘違いしちゃいけない。
「やりたいこと」は、ある日突然降ってくることはない。
いつだって「やりたいこと」や「モチベーション」を生んでくれるのは、「小さな結果」だ。
アクションを起こして「小さな結果」が出た時に、「もっと結果をだして、もっと気持ち良くなりたい」という気持ちが生まれ、それが「やりたいこと」や「モチベーション」に繋がる。
とりあえず始めてみないことには、何も始まらない。
だけど、とりあえず初めてみるには、お金がかかる。
お金がなければ、とりあえず始めてみることもできない。
これが現実だ。

西野亮廣著『夢と金』pp.326-327


(4) 『お金2.0:新しい経済のルールと生き方』

 佐藤航陽さんは、世界や社会への解像度が高い方だと、個人的に強く尊敬しています。僕は、仕事が出来ることや、学歴・肩書きが華々しいいことよりも、本質が見えていそうであったり、独自の思想・哲学がある方に惹かれる傾向があります。佐藤さんの、ものの見方は特に惹かれるものがあり、尊敬する起業家の1人です。

好きな2枚のイラスト。

 佐藤さんの言葉を借りると、「お金や経済とは何なのか?」と正体への理解を深めることは、お金というフィルターを外して人生を見つめ直す、つまり、「自分はなぜ生まれてきて、本当は何がしたいのか?」とより本質的なテーマに向き合うことが可能になるといいます。

 お金の起源から経済を動かす人間の欲望、また、テクノロジーが伴って実現する仮想通貨・フィンテック・シェアリングエコノミー、資本主義を超えた「価値主義」まで、本書の扱う内容は幅広いです。時間を通貨とした「タイムバンク」の考えも非常に面白かったです。『世界2.0』もおすすめなので、ぜひ。


(5) 『超入門 資本論』

 「なぜ年収1000万円を稼いでも“しんどい”のか?」本書を通して、この問いへの答えが深く理解出来ました。現在、世の中でやり取りされているお金の裏側には、資本主義という経済システムがメインとなっており、その社会のルールや構造の理解の入口として、本書は役立ちました。

 本書のメインである、マルクスの『資本論』は、資本主義社会を理解するのによく用いられています。僕も在学中に何度も挑戦しましたが、その分量に挫折し、未だ読み切れておりません。(笑)本書は、その書物を解説をした入門書の1冊なのですが、他の解説書とも比較しても、具体例を日常レベルであげていたり、文庫の量でまとまっていることから、エッセンスの理解にかなり役立ちました。「2時間で読める」ことを売りにしているので、ぜひお気軽に手に取ってみてください。


3. 人生を考える鍵となる本【4選】

 まだ23歳になったばかりの若者が、“人生”を主語に何かを語ることには若干の恥ずかしさも感じるのですが、大学生という将来を大きく左右する時期に、膨大な時間があったので、この言葉についてもたくさん頭を抱えました。

 おそらくこの先も、この言葉は宙に浮いた感じがするのだと思いますが、現時点で参考になった数冊をご紹介します。大学を出たばかりの若者ですが、卒業後の人生を考える鍵となっている4冊です。


(1) 『LIFE SHIFT:100年時代の人生戦略』

 本書は、人生100年時代の戦略的人生設計書として多くの方に読まれています。例えば、先日上場も果たした株式会社GENDAの代表取締役社長、申真衣さんも起業に至ったきっかけの1冊として挙げており、著者リンダ・グラットンと対談もしていました。実は、リンダ・グラットンは、「人生100年時代構想会議」のメンバーにも選出されており、日本の働き方改革にも大きな影響を及ぼしている人物です。

 長寿化が進み、これまでの生き方は通用しないと本書では語られます。社会も経済も医療も変わり、私たちが将来を考える上で、価値観、または、ライフステージが多様になっていくというのです。60歳で退職しても、老後が30-40年もあるとしたら、あなたはどのように過ごしますか。いや、むしろ最近では、働く高齢者もとても多い、そんな現実の変化が起こっているのを感じる方も多いかもしれません。

 特に僕は、これからの働き方に強い関心があるため、これまでの働き方(教育→仕事→引退)だけではなく、1度働き→数年の再教育(リカレント教育)→再就職というケースが印象に残りました。調べてみると、昨今では、「キャリアブレイク」という価値観も広がりつつあり、このようなキャリア・ライフステージの多様化は、今後ますます広がっていくのだろうと感じさせられました。


(2) 『DIE WITH ZERO:人生が豊かになりすぎる究極のルール』

 激しいタイトルなのですが、それが表すように、「若い頃にはした金を貯め、やりたいことを先延ばしにするのではなく、今しか出来ないことに時間を使え」というメッセージ、それを実現するための具体的な解決策、考え方が書かれた本です。

 初めに書店で見かけた時は、直接的なタイトルで「言われなくても分かってるよ」と反感してしまい、手に取っていませんでした。しかし、あまりにも色んなところで耳にするので、読んだところ、大好きな1冊となってしまいました。

 本書を読み、人生の価値観は日常の選択肢によって左右されることを知りました。さらに、今は、DIE WITH ZEROの精神を選ぶか選ばないか、の右か左かの白黒で考えるのではなく、日常の中で、この考え方が重要にしているエッセンスを認識するかしないか、が大切なポイントなのだと思っています。


(3) 『愛するということ』『生きるということ』

 エーリッヒ・フロムは、卒論でも扱いました。彼の社会や人の心理を観察する目、また、その言葉に強く共感し、惹かれる要素がありました。こちらが僕が書いた卒業論文です。よければ。

 『自由からの逃走』がおそらく最も読まれた、彼の代表作だと思うのですが、『愛するということ』『生きるということ』で語られたヒューマニズムには、現代人が在り方を見つめ直すヒントが多くあるように思います。私たちが孤独を恐れ、他人やモノを“持とう”(to have)してしまい、本質的なものに向き合うことが出来てない、と現代資本主義を批判します。

 本当の人間らしさとはなんだろう、そんな大きな問いを投げつけられる良書です。愛とは、生きるとは、どういうことなのでしょうか。軽く哲学に触れたい方、フロムの文章は読みやすいので、かなりおすすめです。最後に、『愛するということ』から、僕の好きな一節を。

 ふたりの人間が自分たちの存在の中心と中心で意志を通じあうとき、すなわち、それぞれが自分の存在の中心において自分自身を経験するとき、はじめて愛が生まれる。この「中心における経験」のなかにしか、人間の現実はない。人間の生はそこにしかない。したがって愛の基盤もそこにしかない。そうした経験にもとづく愛は、たえまない挑戦である。それは安らぎの場ではなく、活動であり、成長であり、共同作業である。調和があるか対立があるか、喜びがあるか悲しみがあるかといったことは、根本的な事実に比べたら取るに足らない問題だ。根本的な事実とはすなわち、ふたりの人間がそれぞれの存在の本質において自分自身を経験し、自分自身から逃避するのではなく、自分自身と一体化することによって、相手と一体化するということである。愛があることを証明するものはただひとつ、すなわちふたりの結びつきの深さ、それぞれの生命力と強さである。これが実ったところにのみ、愛が生まれる。

エーリッヒ・フロム著『愛するということ』pp.154-155


(4) 『幸福の「資本」論:あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』

 橘玲も大好きな作家の1人です。特に、人生の軸が揺らぎがちな僕にとって、この本は、度々読み返したくなる1冊。社会的には“成功”と言われている人の中にも、個人的に羨ましいと憧れの対象にならない人っていませんか?

 本書では、資本を金融だけでなく、「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つに分け、これらのバランスを踏まえた上で、人生の在り方を8つのパターンに分類しています。個々人の理想にあった、時間の使い方、ポートフォリオを目指すことが、幸福への道だと主張するのです。トレードオフ(何かを得ると何かを失う、両立できない関係性)という概念への理解が深まりました。

 お金稼ぎや仕事に100%の人生が良いのか、いいバランスをとった人生がいいのか。それらはライフステージによってどう変えていきたいのか。加えて、時間の使い方はどうすればいいのか。本書を読み、自分が考える”幸福のカタチ”への理解を深め、それを実現している人の真似をすることの大切さを学びました。『無理ゲー社会』など他の著書も刺激的で面白いのでよければぜひ。


4. 人間関係をラクにする本【2選】

 人の悩みの9割は人間関係の悩みである、とアドラーは言ったそうです。僕は、悩んだことの解決策を本に求めがちなのですが、僕の本棚を見てみると、人間関係に関する本は1割もなさそうでした。

 全体のバランスと、読む人のニーズを考えて、5冊ほど紹介出来たらと思ったのですが、以下の2冊だけ取り上げることにしました。もしかしたら、特に、大学4年間、僕はあまり人間関係に悩んでいなかったのかもしれません。きっと素敵な友人に囲まれてきたのでしょう。いつもありがとう。

 それに、どう周囲の人とうまくやろうか、と対処するよりかは、嫌な人となるべく関わらず、自分が居心地のいい人とだけ関わり、生きていくにはどうすれば良いのか、というところにエネルギーを割いてきたように思います。以下の2冊の他に、例えば、デール・カーネギー著『人を動かす』、永松茂久著『人は話し方が9割』もかなりオススメです。ただ、まだその良さを腹に落とせてないなとも感じています。

(1) 『嫌われる勇気』

 言わずと知れたベストセラーです。今調べて見たのですが、世界40ヶ国を超えた地域で、累計発行部数1000万部を超えているそうです。おすすめする必要も無いほど、書店にいつも並んでいますよね。

 内容としては「アドラー心理学」の入門にあたるものです。人間関係というテーマで本をおすすめする際、この本を出さない訳にはいかないなと思い、紹介しました。対話のスタイルで、読みやすく、学びの多い本です。本書に続き、『幸せになる勇気』もぜひ読んで頂きたい。


(2) 『自分の中に毒を持て』

 「現代の若者は真面目すぎる」と言う大人がたまに居ますよね。本書を読んで、僕もその意見に納得してしまいました。僕らは、岡本太郎のような“毒”を持った方が良いのかもしれない、と。

 インターネット、SNSが普及し、世の中はより一層、クリーン化の流れにあるように感じています。炎上したり、黒歴史になるかもしれない、どこで誰に見られているか分からない、一般人が警察のフリをする時代ですから。日本の同調圧力はそれに拍車をかけていますよね。

 真面目すぎる方、人の目を過剰に気にしてしまう方、一度、岡本太郎の言葉に触れてみてはいかがでしょうか。僕が人と違う選択肢をとれた背景には、岡本太郎のような方の本に触れて、(頭の中に)味方が増えたことが大きいと思います。毒は、使い方によっては薬にもなるので。

 それどころか、青年は己の夢にすべてのエネルギーを賭けるべきなのだ。勇気を持って飛び込んだらいい。
 仮に親の顔色をうかがって就職し、安定を選ぶとしようか。が、それが青年自身の人生なんだろうか。“俺は生きた!”と言える人生になるのだろうか。そうじゃないだろう。親の人生をなぞるだけになってしまう。そんな人生に責任を持てるだろうか。若者自身のほんとうの生きた人生には決してならない。
 自分自身の生きるスジは誰にも渡してはならないんだ。この気持ちを貫くべきだと思う。
 どこにも属していないので、自由に自分の道を選択できる若者だからこそ決意すべきなんだ。新しく出発するチャンスなのだから。

岡本太郎著『自分の中に毒をもて』p.28


5. 今の社会を覗ける本【5選】


 自分が知らない社会のことを教えてくれることも、読書の良さの1つだと思います。人生は1度しかないので、経験できず、知りえない世界は膨大なのですが、読書を通して、巨人の肩に乗ることで、新しい世界を見ることが出来ます。

 なぜ社会を知る必要があるのか。その問いの答えは、僕も探している最中なのですが、今のところの仮説として、「他者の靴を履き」やすくなるのではないか、と考えています。他者の靴を履くとは、他者の立場になって考えてみる、ということを表したことわざです。これは、ブレイディみかこさんの考えなのですが、今のところ、僕の中でしっくり来ています。優しくなるための読書として、一緒にいかがでしょうか。


(1) 『サピエンス全史 上/下』、『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来 上/下』、『21Lessons:21世紀の人類のための21の思考』の三部作

 この三部作は、歴史学者・哲学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏によって書かれ、これらの作品を合わせると、世界65の言語で4500万部発行されているそうです。

 本書は、「人類(ホモ・サピエンス)はどこから来て、どこへ行くのか。」という大きな問いへ幅広い学問の視点からアプローチしたものです。『サピエンス全史』では、人類(ホモ・サピエンス)はなぜ生き残ったのか、その「過去」を明らかにし、『ホモ・デウス』では、これからの「未来」について議論が展開されます。また、『21Lessons』では、私たちはどう生きるべきか、として「現在」に関する21の問いを投げかけています。さらに、最近知ったのですが、2024年9月に、最新作が英語版で発売される予定もあるそうです。タイトルは、『Nexus : A Brief History of Information Networks from the Stone Age to AI』(邦題未定)、情報の人類史を描いたというその続編もかなり楽しみです。

 三部作(5冊)合わせて、2000ページを超える大作なのですが、僕は学生の間に挑戦して、読み切れて本当に良かったと激推しする作品の一つです。内容は難しいのですが、読みやすい文章で、学術的な様々な切り口を頂きました。僕が学術的な好奇心を抱くきっかけとして非常に多くの影響を受けた本です。

 無論、僕がこれらを読み切れたのは自分の努力だけではありません。大学時代に、僕は書を共に読み、議論を交えられる良き友数人と出会うことが出来ました。このnoteは、僕と共に読学してくれた彼らの出会いの賜物です。この場を借りて、感謝を伝えたい。
 最後に、最新作『Nexus』についてのハラリのコメントが、雰囲気を知るきっかけのひとつになればと思ったので、引用させていただきます。

私たちは人類史上もっとも重大な情報革命のさなかを生きています。
しかし、それ以前に起きたことを理解しなければ、そのことは理解できません。
歴史とは、結局のところ過去を学ぶことではありません──変化を学ぶことなのです。
歴史は、何が同じであり続けて、何が変化をして、いかに物事が変化しているかを教えてくれます。
とはいえ、歴史とは決定論的なものではありませんし、『Nexus』は過去を理解すれば未来を予測できると主張するものではありません。
私の目的は、じゅうぶんな知識にもとづく選択をすれば、私たちは最悪の結果を避けることがまだ可能なのだと示すことにあるのです。
未来は変えられないというのなら、それを議論するのに時間を費やす必要はないのですから。

河出書房新社 PR TIMES


(2) 『FACTFULNESS:10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 取り上げた本を眺めてみると、大学1年の頃に出会った本が多い傾向がありました。おそらく既存の価値観を揺るがされた本との出会いが多かったように思います。それ以降は、どちらかというと自分の興味関心に沿って選んだ本が多く、読んでその領域への知識は深まるものの、それほどの衝撃を受けるものが少ないのかもしれません。

 この本も4年前、大学1年の頃に出会った本なのですが、当時はかなりの衝撃を受け、「教科書にすべきだ」とSNSで普及していた覚えがあります(笑)。要約すると、僕らは10個の思い込み(本能)によって、世界を正しく見られていない、と主張するものです。ここ数年、行動経済学が流行っていますが、その内容への興味を膨らませてくれる1冊だと思います。

 人種や地域、宗教、年齢、性別など多くの立場によって、世の中で語られる事実は無限にあります。大衆が合っているとも限らない、歴史は多くの間違いを教えてくれます。自分と違う意見に耳を傾けるのは難しい、テクノロジーによるアルゴリズムは、ますます僕らをそれぞれの世界に閉じ込めて行く傾向にあります。本能的に、他者と分かり合うことが難しいからこそ、「ファクトフルネス」の精神を重視する必要があるのではないでしょうか。最後に、訳者、関美和・上杉周作さんの言葉を引用します。

 ですが、この本が世の中に残る一冊になるだろうと考える理由は、この本の教えが「世界の姿」だけではなく「自分の姿」を見せてくれるからです。知識不足で傲慢な自分、焦って間違った判断をしてしまう自分、他人をステレオタイプにはめてしまう自分、誰かを責めたくなってしまう自分。そんな自分に気づかせてくれ、少しだけ「待てよ、これは例の本能では?」とブレーキをかける役に立ってくれるのが、ファクトフルネスなのでしょう。 

『FACTFULNESS』p.340


(3) 『未来の年表』

 日本には多くの問題があると言われています。経済の停滞、腐敗した政治、ブラックな働き方、幸福度の低さ、介護人材の不足、東京一極集中、遅れたテクノロジーの導入、、、課題にばかり目を向けると、何から手をつけたらいいか分からなくなることがあるかと思いますが、これからの社会を考える上で、1番考えなければならないトピックは「人口動態」であると僕は考えています。

 人口減少が課題視されてた昨今ですが、その問題はどこにあるのか、本書では、数年事に詳細な解説をしています。人口が少なくなるということは、労働力人口が減り、経済規模が縮小するだけでなく、既存のシステムが機能しなくなることが多々あります。事例として、年金制度、終身雇用はよく挙げられるものです。

 人口が減っていくことが「やばい」のではなく、人口が減っても機能するように、社会の制度やシステムが整っていないことが「やばい」と思うのです。日々、出生率の低下がニュースで報道されていますが、その何が問題か、ぜひ本書を参考にしてみてください。


(4) 『東京貧困女子。:彼女たちはなぜ躓いたのか』

 この本を読んで愕然としました。「日本にはこういったことで苦しんでいる人々がいるのか」と。帯にもあるように、僕は「貧困なんて他人事だと思ってた」のかもしれません。本書は、ジャーナリストである中村淳彦さんが、「貧困」をテーマに、東京で女性が直面している現実をフィールドワーク、取材からまとめたものです。

 リアルが描かれているが故に、読んでいてあまり気分が良くならない箇所もありました。しかし、それらは彼女たちのリアルであり、東京という土地に住む僕は、こういったリアルから目を背ける人間になりたくないなと強く感じさせられました。

 最近は、「見えない貧困、相対的貧困」が問題視されています。今、会社や学校という居場所を持たない僕は、たまに社会的な立場の弱さを感じさせられます。これから、目の前の選択と行動次第では、貧困の道に進むのかもと将来を憂うこともたまにあります。本書に描かれた内容には、当時大学生だった僕には、あまりにも他人事と思えないものが多かったからこそ、本書を紹介させて頂きたいです。最後に、一節を。

 これまで、女子大生、単身OL、シングルマザーと、さまざまな女性たちの貧困の悲劇を見てきた。
 父親に奨学金を奪われている21歳の美人女子大生は「将来は自殺すると思う」とつぶやき、た25歳の非正規工員は「なにもかもあきらめた」と人生を投げだし、最低生活費以下で暮らすシングルマザーは「子持ちで離婚したら、もう生きようがない」と嘆いていた。
 彼女たちは決して自虐的に大げさに悲観しているわけではない。どんなに頑張って生きようとしても、まともな未来が見えないのだ。
 そしてため息をつき、あきらめて、心から絶望している。
 目を覆うような酷い現実だが、これからももっと多くの女性たちが地獄のような日々を送るだろうことは、もう逃れられない流れである。
 将来的にいまよりよくなるという理由が本当になにもない。
 東京で生きる貧困女性の取材を通じて、そんな真っ暗な未来が見たくなくても見えてしまった。

中村淳彦著『東京貧困女子。』pp.316-317 


(5) 『スマホ脳』『ストレス脳』

 本書は、精神科医アンデシュ・ハンセンが脳科学的な視点から、社会問題でもある「スマホ中毒」また、それらが健康面や学力面、そして、メンタル不調にどう言った影響を及ぼすか、を解説したものです。

 WHOによると、世界全体では、2億8400万人が不安障害を抱え、2億8000万人がうつに苦しんでいる、といったデータがあるそうです。現代にはモノやサービスが充実し、こんなにも快適に暮らせるようになったにも関わらず、どうしてこのような不安に付きまとわれるのか、『スマホ脳』に続き、『ストレス脳』で、それらの理由は詳細に書かれています。

 現代の研究も幅広く引用されているのですが、特に面白いなと思ったのは、解決の糸口として、狩猟採集民族の事例を取り上げているところです。その民族とスマホ中毒に陥った現代人を比較した著者の見解には、学ぶことが多くありました。スマホのようなテクノロジーとどう付き合っていくべきか、深く考えさせられた2冊です。『運動脳』は別の視点で描かれており、そちらもかなりオススメです。


6. 新たな考え方を得る本【5選】


 哲学者フリードヒ・ニーチェは、次のような言葉を残しました。

事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。

フリードヒ・ニーチェ

 この言葉は、何度も僕の中で支えとなっていました。現実を変えることが難しい時、解釈を変え、視点を変えると、次すべきことが明確になったことが多々ありました。以下のメインはビジネス書なのですが、その中にも、多くの学びがあった「思考」に関する本を取り上げようと思います。

(1) 『具体と抽象』

 思考法に関する本書ですが、人間関係を円滑にすることにも役立つかもしれません。タイトルの通り、世界の捉え方である「具体」と「抽象」という概念に関して、日常の会話事例が多用されながら、解説されています。グラフやイラストも用いられながら、130pほどで書かれているので、かなり読みやすくオススメです。入口として、序章から少しの引用を。

 私たちのまわりの世界は、突き詰めればすべてがこれら二つの対立概念から成り立っています。ところが私たちは普段、これらの関係をほとんど意識することはありません。
(中略)
 このように「具体=わかりやすい」「抽象=わかりにくい」というのが一般的に認知されているこれらの概念の印象です。つまり、抽象というのはわかりにくい、実践的でないといった否定的な形で用いられるのが大抵の場合ではないかと思います。このように、具体=善、抽象=悪という印象はとんでもなく大きな誤解です。
 本書の目的は、この「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」ことです。

細谷功『具体と抽象』pp.13-14


(2) 『エッセンシャル思考:最少の時間で成果を最大にする』

 本書を一言でまとめるならば、「より少なく、しかしより良く」を追求した思考法に関するものです。インターネットが普及し、情報が過剰に周囲に散在している現代だからこそ、必要なものの考え方だと思います。

 その思考の理解に役立つものとして、文章を引用します。また、物事の優先順位を考える点で、安宅和人さんの『イシューからはじめよ』も非常にオススメです。

 エッセンシャル思考を身につけるためには、これら3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはならない。
「やらなくては」ではなく「やると決める」。
「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」。
「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」。
 この3つの真実が、私たちを混乱から救い出してくれる。本当に大事なことを見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。

グレッグ・マキューン著『エッセンシャル思考』p.14


(3)『メモの魔力』

 僕に、メモの習慣がついたのは、紛れもなくこの本のおかげです。大学時代にメモしていたノートは、30冊以上に及んでいました。最初は、推奨されているノート、やり方で実践していたのですが、途中は『ゼロ秒思考』で書かれていた内容も取り入れてみたり、試行錯誤しながら、最近は自分流でメモをしています。手段に拘りすぎる必要はないかなと感じています。

大学時代にメモしていたノート

 紙やメモを「第2の脳」として使う習慣がつくと、いつの間にか言語化するのが得意と言われていたり、面白い視点だね、と褒めてもらえたり、文章力がついているように感じたりしています。今では、メモする衝動を抑えられません。(笑)


(4) 『クオンタム思考:テクノロジーとビジネスの未来に先回りする新しい思考法』

 こちらの本は、元Google米国本社副社長兼Google Japan社長をやられていた村上憲郎さんが、ポケモンGO、YouTubeなど、革新的なアイデアで活躍する若者を見て、着想を得た「クオンタム思考」を解説した本です。

 クオンタムとは「量子」を指した言葉で、クオンタム思考とは、日常感覚の世界を飛び越えたような比類なき思考と表現されています。これだけだと分かりづらいので、村上さんが、解決困難と言われていた課題を超えてきた数人の若者の事例を挙げた先に見出した、彼ら彼女らの共通点をいくつか列挙します。

・これまで誰もが思いつかなかった、世の中を一新してしまうほどの価値を追求している
・それぞれの好きなもの、自分の得意なものを追求している
・「座った瞬間にりたいことを画面に表示できる」「宇宙規模の地図をつくる」など、描くビジョンのスケールがとにかく大きい(SFっぽい)
・地図がグーグル・マップになり、ARと組み合わさってゲームになったように、「何か1つを生み出して終わり」ではなく、そこからまた新たな可能性へとつなげている
・結果、その成果は世界を変えるほどの大きなムーブメントになっている

村上憲郎著『クオンタム思考』pp.32-33

 説明していて、僕自身もよく分からない箇所があったので、読み返すことにします。(笑)上手く解説出来ず申し訳ないです、、、本書ですが、量子コンピュータの解説と、量子力学の技術が更に進んだ社会について言及された章も学びが多かったので、興味の持たれた方、ぜひ手に取ってみてください。


(5) 『逆張り思考』

 本書は、上記のような思考法とは少し変わり、著者、成田修造さんの経験から見出した処世術としての思考法のような内容です。成田さんの半生から得た教訓、「普通」や「当たり前」とは少し違った捉え方をしてみる「逆張り思考」が解説されています。ちなみに、成田修造さんは、経済学者、成田悠輔さんの弟です。

 14歳で父が失踪、17歳で母が倒れて破産。後に、史上最年少役員として上場を経験。現在は、起業家・エンジェル投資家として活躍される成田修造さんは、過去の多くの困難をチャンスに変えてきたと言います。その言葉の多くに強く勇気をもらい、読了後はかなり前向きな気持ちにさせてもらいました。

 巷に溢れた「成功者の本」は敬遠される傾向にあると思います。それぞれが自分の経験から、ポジショントークでしか書かれていないと。納得もするのですが、僕は再現性を求めすぎるのではなく、生きるエネルギーを貰うもの、のように捉えています。本書の随所から感じられる、成田修造さんの生命力を感じてみてはいかがでしょうか。

 コントロール不能の事態に直面したとき、僕たちにできるのは、
「学びに変えていく」
「解釈を変えていく」
 ことだけだと思います。
 苦しいことが起きたら、その一瞬は泣いてもいい。
 ですが、「どうして、こんなことが起きたんだ!」と腹を立てていても、「なんでこんな目にあうんだ⋯⋯」とふさぎ込んでいても、状況は好転しません。
 「過去は変えられない」「時間は巻き戻せない」「しかたがない、そうなったんだから」と割り切って、「では、ここから何が学べるか?」と切り替えていくしかない。

成田修造著『逆張り思考』pp.68-69


【中間】 まとめ


 前編のみで2万字を超えているので、かなりの分量だったと思います。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。僕が今まで得た学びが、なにかの参考になっていたら幸いです。ぜひ、感想・拡散など頂けると非常に嬉しいです。皆さんのおすすめの本も、ぜひ教えてください。

 このnoteを書くにあたり、かなりの自問自答を強いられました。「簡単で有名なビジネス書ばかり、と突っ込まれないだろうか」「嫌な思いを抱かせる表現をしていないだろうか」ふと「なんのためにやってるのだろう」と投げ出しそうになった時もありました。

 僕は、人の目をかなり気にする繊細さを持ちつつ、それよりも自分がやりたいことを我慢したくないと思っているタイプなので、なんとか投稿まで走りきれ、一安心です。自分の学んできたものを何かしらの形にの残したい、という構想は半年前までからしていたのですが、かなりの時間がかかってしまいました。(といってもまだ前編しか終わっていない、)

 普段からよく人に本を勧めていたり、プレゼントとして渡すことも多いので、こういった形でまとめられて、いい機会でした。本を読み返しながら、なんでオススメなのか?と考える時間はとても楽しく、それに、まだ自分に足りないところや、忘れているところの多くにも気付かされました。

 先日、価値観をアップグレードさせる段階にあるのかもしれない、というテーマでnoteを書きました。

 大学生から社会人として、違った尺度で自分を測り直す必要を感じていると同時に、自分の“読学”を振り返っても、レベルを一段あげる必要を感じています。具体的には、もっと古典を読む必要がある、直近の50-100年に出された本ばかりでなく、時間というフィルターを通して、生き残ってきた歴史のある本にももっと挑戦していかなくちゃならない。誰かに言われたわけではなく、目的も明確に言語化できていない謎の使命感に駆られています。

 このようなまとめを30歳、40歳、50歳と歳を重ねて行った時にもまたやってみたいです。自分の記録として、とても興味が生まれました。

 もう締めの言葉のようになっていますが、改めて申し上げると、こちらは【前編】です。残りの本に関しても、目安としての選出は終わっています。例えば、「バイブルにしている本」、「未来やトレンドについての本」、「教養を磨くための本」、「苦しい夜の処方箋になる本」、また、「何度も読んでいるnote」に関して、取り上げようと考えていました。

 どれほどの方が読んで頂けるのか分からないので、前編の反応が良さそうであれば、後編も近日投稿しようと思います。安易な気持ちで取り組んだのですが、かなりのやりきった感があるので、遅くなってしまったら申し訳ないです。


 改めて、最後までありがとうございました。
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