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#パルプ小説
そしてハナズオウへ至る季節
その塊は、伊東にとって、最初の娘だった。
たしか、五歳と覚えてる。
大根田は塊を一瞥した。
花と蔓、蝋と蜜で飾られた、豪華な本か、人革の飾箱のようなそれを。
表に嵌めこまれた、まだ、ぴくぴくと動く心臓を。
嫌な顔をした。
伊東は気にも留めてない。
彼は恋人に語る口で、狭い部屋に澄んだ声を響かせる。
俺の出番はまだない。
「死んだら、灰になるだけだ。僕は彼女に意味をもたせた」
大根田は太く大
何も知らないあなたの旅路と、歯車の壊れた私の家路
立ち止まるのは悪い癖。私はどうせ、限界がある。
「…ねえ! お願い!お願いッ!」
もうだめです。
綾西絃帆は死にました。旅の終点沖縄で。
剃刀みたいな岩で作られた、夕日が最後に落ちる岬を登り、底なしの青い海へと落ちました。
盗んだバイクは待ち人なし。
でも、どうしてこんなノートを残したの? 本当に彼女はいじわる。
読んじゃダメ 遺書=9/9 改メ日記=8/28〜
一緒に帰ろう。
私は
されどお前には継がせない
少しくらいは俺の話をしてくれてもいいのに、三人ともバカだから鞄の中身しか気にしてない。
困った。鞄のカネ、ここの路地裏のドブから湧いて出たんじゃないんだよ。俺が銀行襲ってバッチリ揃えた十七億だ。ダッフルバッグに詰めるまで、結構大変だったのに。
「絶対私のモンだから! ビタ1円切るもんか!」
女は銃を向けている。俺ではない男へ向かって。
「るせえ! 俺は約束したんだよ。中まで通して対価に貰うと」
『ロングソードの返済者』
「私、魔具にもならねえよね」「黙れ」
「あとどれだけ話せる?」「俺を泣かせるのはやめろ」
もうギュミとは喋れない。今や俺だけがお尋ね者だ。
この街だけじゃなく、トゥードラ大陸全体で。首、回る訳ねえ。
少し遡る。
取り立て人の俺たちは、政界のドン、かつての勇者の大豪邸を訪れた。
「借りたもんは返してもらうぞ」
プールサイドで侍女に囲まれ、肥えたそいつが怪神殺しの伝説の男。
「明日の地租で払うよ、
10セントの命を追って
或る夜。月は寄せては返す波めいて、不穏な光を放っていた。
それは自然の警告にも思えたが、罰当たりな彼らは黒澤明由来の農村の真ん中に73式中型トラックを停めた。
メガネの男が呟く。
「前は蛮人、次にUMAと来た。死人は増えるばかりです。穏便に済みますか?」
人類学者、河添教授は頷いた。
「赤井君、解決方法は一つじゃないだろ」
赤井は頭を掻いた。
「その為の我々ですけども」
教授は黙って外に出た。
昼