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「プロテイン」と「食材」の狭間

おはようございます!!! 書評行きます!!!

「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」 早川書房 
2014年出版 佐々 涼子著 288P

(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)

言葉が出ない。本好きを自称しながら本の紙を誰がどうやって作っているかなど考えた事も無かった。日本で製造する本は退色しにくい中性紙だとか文庫本は出版社別に紙の色が違うとかコミック誌は子どもが手を切らない様に、などの配慮も知らなかった。震災後も普通に本を買えた事の裏にあった、壮絶という一言では語り尽くせぬドラマに関しても無知だった。震災時の現地の話は正直読んでいて辛い。でもよくぞこの本を出してくれた。心からそう思う。主要人物がみんな人として素敵過ぎる。ただただ頭が下がる。紙の本を愛する全ての人々にお勧めです。

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震災に纏わるノンフィクションはいくつか読みましたが、最も印象に残っているのはこれです。文庫版も出ています。でも装丁と紙の手触りが素晴らしいので単行本をオススメします。

やっぱり非常事態ですから、いろいろあるわけです。美談ばかりではなく生きる上での業に触れるエピソードも描かれています。何でそんなことするんだ、人としてどうなんだ、と。でももし自分がその方の立場だったら、と想像すると何も言えないわけです。安全な外部から言葉だけの正論を騒ぎ立てるほど無意味で傲慢な行為もないよねと。

いずれ電子書籍が主流になり、紙の本は緩やかに衰退していくでしょう。ただ個人的にそのふたつの関係性は、プロテインと食材のそれに近いと考えています。タンパク質を速やかに摂取するだけなら一見前者で事足りる。でも本当にそうなのでしょうか? 

電子書籍と紙の本では読む際の頭の使い所が違う、という話を聞いたことがあります。便利と効率の陰で大切な何かを気づかぬうちに失っている、ということにならないでしょうか。スマートフォンもプロテインもあれば大変助かるものです。私も多大なる恩恵を被っています。でもなくてもそれなりにやっていける自分でありたい。手間を厭わぬアナログな己を残しておくことが、タフな状況でもぶれない芯の強さに繋がる気がするから。

もうすぐ10年。この機会にぜひ。


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