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「初・創作の思い出」と「原点を辿る旅」

また楽しみな本がやってきました。

単行本の説明によると「グレニッチ高校時代から二十代初めまでの、ニューヨークの公共図書館が所蔵する未発表作品14篇」とのこと。しかも解説は村上春樹。

新潮文庫、最近特にキレッキレじゃないですか? 

少し前に紹介したポール・オースターの幻のデビュー作も素晴らしかった。昔ながらの「王道ハードボイルド・ミステリィ」を堪能できました。

話をカポーティに戻します。「8歳で作家になった」とはさすがですね。

まったく比較にならないレベルですが、私も小学生のときに初めて小説を書きました。たしかジャポニカの「自由帳」に鉛筆の手書きで。「三国志」のスピンオフでした(当時はそんな言葉なかったけど)。

内容はいわゆる「敵討ち」。呉の孫権を狙う兄弟の物語です。「忠臣蔵」や「曽我物語」が好きだったのでその影響でしょう。

可能であれば、カポーティが同じ年代の頃に書いたものもいつか読んでみたい。誰でも最初の創作は少なからず模倣から入ると思いますが、彼の場合はどうだったのか。非常に興味深いです。

作家のルーツを辿れる「初期短編集」の類はいくつか読みました。私のオススメは↓です。

また新潮文庫ですね。

戯曲を含む全28編。大半が10代の頃の作品です。一発目の「最後の太閤」はなんと15歳の時に書かれています。「股をくぐる」「将軍」もそうですが、太宰が芥川龍之介のファンであることを改めて実感できました。

いちばん好きなのは「断崖の錯覚」。25歳の年に別のペンネームで発表したものですが、完成度がさすがに中学・高校生の頃とは違いました。初の創作集「晩年」を出す2年前。もうすでに「太宰治」ができあがっています。

最後に添えられた「洋之助の気焔」も注目です。ちょっとした仕掛けが施されています。熱心な太宰ファンなら気づけるかもしれない。。。

他にも後年書かれる代表作のプロトタイプと思しきものがいくつかあり、あれこれ想像を膨らませるのも楽しい一冊です(これはきっとカポーティの本にも当てはまる)。2022年の「読書の秋」は、国を代表する文豪の「原点」を辿る旅から始めてみませんか? 

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