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「三角読書」を支える一冊

皆さんは「併読」をしますか?

私はいわゆる「三角読み」が基本です。いろいろ試した結果、自分の場合はそれがいちばん捗ると気づいたのです。

ジャンルはなるべくかぶらないようにします。「長編小説、ビジネス書、思想書」とか。たとえば司馬遼太郎「竜馬がゆく」堀江貴文「ゼロ」、そして鈴木大拙「禅とは何か」を併せたらどうでしょう。ライスとサラダ、そしてメインディッシュの栄養素をバランス良く、しかも美味しく味わえる気がしませんか?

ここで大事なのは「グイグイ読めるものと重厚なものを組み合わせる」こと。前者に偏ると「ああ楽しかった」で過ぎ去ってしまうし(時にはそれもアリですが)、後者だけだと消化が滞って疲れます。ここの按配は「お酒とおつまみを交互に嗜む」感覚に近いかも。

特に休憩中やちょっとした隙間時間に読む本として「グイグイ系」は重宝します。まず頭に浮かぶのはエッセイでしょう。たとえば↓とか。

週刊文春で24年間(!)連載しているユーモアエッセイの傑作選。著者の土屋賢二さんは哲学者にして某有名女子大の名誉教授です。ミステリィ作家の森博嗣さんや漫画家のさくらももこさんとも共著を出されています。

内容の9割は奥様や大学の教え子、そして社会のトレンドにまつわる自虐エピソード。ロジックの使い方が巧みで頭の準備運動に最適です。しかしこの方はそれだけではありません。ごく稀に「哲学者」の牙を垣間見せます。人の真理を看破するストレートで鋭い筆が頭に焼き付き、他のも読みたいと思わせるのです。

そもそも「俺は頭がいいぞ」「何でも知ってるぞ」と声高にアピールしたがる人よりも「シティーハンター」の冴羽さんみたいに「アホな振りして拳銃を隠し持つ」タイプの方が賢いというのが世の常ですよね。

とはいえ「こういう内容で単行本はちょっとなあ」という気持ちもわかります。まずは文庫をお試しいただくのが妥当かもしれません。タイトルからして笑えませんか? 他にも「妻と罰」とか「ツチヤの貧格」なんてものもあります。ぜひ探してみてください。

あと「ライトな自己啓発系」というか選りすぐった言葉で深く染み入るタイプの本もオススメ。私が何度も読み返しているのは↓です。

ジョン・レノンに「イマジン」のインスピレーションを与えたオノ・ヨーコさんの箴言集。命令形の短文と写真で構成されています。

読むタイミングによってどの言葉が刺さるかは変わってきます。最近だと「いろんな種のつまった袋に穴をひとつあけなさい。袋を風の吹く場所におきなさい」「録音しなさい。石が年をとっていく音を」かな。

重厚な「メイン本」を陰で支えるこういう一冊も読書を続けるうえで欠かせません。野球がエースと4番だけでは勝てないように。ぜひお近くの書店で自分だけの「三角形」を探してみてください。

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