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「歴史家志望の軍人」と「作家志望の書店員」

こういうことでしたか。

近頃よく「銀英伝」の広告を目にするなあと思っていました。シミュレーションゲームになったのですね。

私がこの名作に初めて触れたのは大学生の頃です。ケーブルTVの「キッズ・ステーション」で放送していたOVA本伝(全110話)を見たのがキッカケでした。

とにかく完成度の高い作品です。壮大にして優雅な世界観ときっちり描き分けられた個の強いキャラクター。さらに独裁制&民主主義というふたつの統治形態が持つ長所と短所を様々なエピソードを通して訴え、否応なしにどちらを望むかの選択を迫ってくる。SFでありながら歴史小説、なおかつ社会派文学の一面すら備えている。

いまは愛蔵版なども出ているようですが、私が読んだのは↓です。全10巻。

久し振りにラインハルトやロイエンタール、そして不敗の魔術師ヤン・ウェンリーに会いたくなりました。ちなみに当時の私はバリバリの帝国推し。若気の至りというか、民主主義を偽善的なうえにまどろっこしい愚鈍なシステムと捉えていたのです。

たしかにそういう側面はあります。でもだからといって独裁を欲するのか、何でもスピーディーにサクサク決めてしまう政府の方が庶民にとって有益なのか、と問われたら。。。

現在の私だったら、自由惑星同盟でヤンと共に民主主義の灯火を守るために戦い、歴史について彼と語り合う方が性に合っています。もちろん速いことは悪いことじゃない。速くてミスをしないのが最善です。しかし大切な判断を間違わないこと、小さな声に耳を傾けて立ち止まり、己を省みることのできる謙虚さを持つことはもっと大事だと考えています。

同列で語るのはおこがましい。レベルが違う。でも作家志望でありながら生活のために書店員になった自分を、歴史家志望でありながら経済的理由で軍人になったヤンに重ねたい心情が少し芽生えています。彼の生き様や発する言葉がいまの自分にどう響くか? 

皆さまもぜひ。荘厳なスペースオペラに酔いしれ、暑い気候を吹き飛ばすぐらいに自ら燃え上がりませんか?

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