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銀河英雄伝説を読んで

私が読む本のジャンルはミステリーか自己啓発本だ。恋愛ものは数える程度しか読んだことはない。

ある時友人に聞かれたことがある。

「ミステリーって要は殺人事件でしょ?物騒じゃない?何がおもしろいの?」

…確かに、考えたこともなかったが物騒きわまりない。殺人事件を娯楽として楽しんでいるのだから。

何がおもしろいの?と聞かれてその時は答えられなかった。しかし今は答えられるだろう。

というのもこの数年後に「銀河英雄伝説」という本と出会い、答えを見つけたのだ。


銀河英雄伝説 田中芳樹著のSF小説だ。

はるか遠い未来、地球を離れ宇宙で暮らすようになった人類はしかし、宇宙を二分する銀河帝国と自由惑星同盟とで争い戦争を繰り返していた。

まああらすじはこんな感じ。

きっかけはアニメで、先が気になって気になってアニメの放送を待っていられなくて、本を買ってみた。最初の1頁で挫折しかけた。あまりの文字数に圧倒されたからだ。これが10巻も続くのか!?とうんざりした。しかし買ったからには読もう。次第に世界観にどっぷりはまり最終的には涙して読むほどの作品だった。

これまた先の友人に言わせたら「戦争小説なんて何がおもしろいの?物騒じゃない?」と言われることだろう。

確かにそうなのだ。作中でもたくさんの人が死ぬ。戦争で、陰謀で…。



銀河英雄伝説の主人公のひとりにヤン・ウェンリーという軍人が出てくる。

ヤン・ウェンリーは成り行きで軍人になったのに、軍人のくせに戦争はやりたくないし、軍人とか嫌いだし、式典も「これも給料のうち!」とか言って出席するし、しかしひとたび戦場に出ると類まれな才能を発揮し次々と勝利し、昇進していく。自分の想いとは反対に。

そんなに戦争が嫌いなら軍人をやめて、さっさと歴史学者になればいいのに…ヤンの被保護者のユリアンじゃなくともそう思うだろう。


ヤンはとても矛盾した人物だ。

ヤンは自分の意志とは反対に、社会や組織の流れでやらざるを得ないことが増えていく。そのたびに苦悩しユリアンに愚痴をこぼし時たま辛辣な言葉を上司に言ったりする。

しかしその根底には「戦うことで平和を手に入れたい」という想いがあるのだ。

なんて矛盾しているんだ!!!戦争している限り平和なんて来ないぞ!


もうひとり主人公がいる。ラインハルト・フォン・ローエングラム。

彼はヤンと違い宇宙統一を唯一の目標として戦う男だ。明らかな目標意識のあるデキる男だろう。実際若くして元帥になるので超エリートだ。

そんな彼にも想いがある。

宇宙統一をして世界を平和にしたい!


だーかーらー!

戦争してたら平和になんかなれないよ!

しかし500年もの長い間こじれた銀河帝国と自由惑星同盟両間の関係はそうそうたやすく修復できないのだ。

物語自体矛盾だらけだ。平和を目指し戦争する。なんのこっちゃ。


しかしこれ、世界の、人間の真理だと思いませんか?

矛盾だらけ

私も、きっとあなたも

死ぬために産まれてくる

そんな矛盾なんだと


で、冒頭の「ミステリーの何がおもしろいの?」に戻るのだ。

今なら友人にこう答えるだろう。

「矛盾しているのがおもしろいのだよ」

殺人は犯してはいけない罪だ。しかしそれに至る人の心理の矛盾…

人間の愚かで美しくない面が描かれたもの、それがミステリーじゃなかろうか。

それを楽しんでいるのだ、

うむ…なんとも悪趣味だ。


しかし矛盾が人間を魅力的にみせると私は思っている。

銀河英雄伝説のヤンやラインハルトも矛盾があるから魅力的だったのではないだろうか。

世界は矛盾だらけだ。

その矛盾をいかに消化していくか…

今日も読もう。銀河英雄伝説…


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