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水平線に僕が立ったら

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読み返したい、個人的に好きな記事を集めています。
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#小説

金木犀未遂

誰も彼もが金木犀を歌っている、夜が冷えてくれば好きな人が恋しくなる、戻れない過去ばかり想…

mysterious.

わたしはなぜだか、mysteriousなものに惹かれることが多いみたい。 好きな小説。好きなイラス…

Yuuki
2年前
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無口な彼女。

自分と合わないものを排除する。安心を築く。それをできるだけ壊さないように排除し傷つけあう…

Yuuki
2年前
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透き通る月|短編小説

 死のうと思った。今どき心中だなんて笑ってしまいそうだけれど、私はこの人と──伊月さんと…

笛の音が聞こえたら、どこでも飛んでいくから

実家の僕の部屋には、木で出来た笛が置いてある。 吹くと、フクロウの鳴き声に似た音を奏でる…

oil
2年前
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結婚すると思ってた

「結婚すると思ってた」と、ぼくと彼女の共通の友人はぼくに言った。彼女の結婚の報せを聞いた…

1 穴に落ちる

 上空1万メートルから落下する夢を見た。  上空の大気の冷たさか恐怖で肝を冷やしたか、ひどく寒気がして目が覚める。  今日は随分と空が高い。と、ここで初めて僕自身が仰向けで寝転んでいることに気がつく。背中にはゴツゴツとしたアスファルトの感触。  空は淀みない青だというのに僕の上にはシトシトと雨が降っている。すがすがしいほどのお天気雨だ。  ゆっくりと上体を起きあげる。着ているシャツはぐっしょりと濡れ、体に張り付いていた。寒気の原因はこれか。  ここはどこだろう?   なぜ

もう感情に最適解を求めない

生身の人間の感情に、"適切さ"も何もあるもんか。むしろそんなものあってもらったら困る。常に…

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夜のクジラ

「おやすみなさい」 そう言って電気を消すと、部屋中にあるすべてのものは動かなくなった。 …

みずき
3年前
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見るとは微かに愛することであり、

高校一年の冬、よく晴れた日の午後だった。最寄駅の本屋である詩集を見つけた。一編の詩が目に…

春
3年前
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夜に手紙を書いてはいけないのに。

「心寄せる人に夜手紙を書いてはいけない」 という第一行目から始まる『夜の水』っていう 詩…

俺はどうやらお前らとは違うらしい。 姿形、そして声。 ひとつとして同じところが見つからない…

吉田
3年前
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言葉をあきらめない

日々こうして暮らしていると、感情を揺さぶるような色んなことが起こったり、人から大事な(愉…

夜明けのわたしへ

「大人になると、ぼくらは幼い頃の記憶を失くすらしい。まるで記憶喪失のように、みんなぜんぶ、大事なことさえも忘れるんだ」  彼があまりに真剣な眼差しで話すので、わたしは同情するような気持ちで答える。 「いずれ忘れちゃうなら、今こうして話していることも忘れるんだろうね」 「そう。だからぼくらは、こうして卒業アルバムに言葉を残すんだよ。今の自分たちを忘れないために」 「そんなの、アルバムを開けば分かることじゃない?」 「思い出に浸るだけなら日記で十分だよ。卒業アルバムなんて、人生で