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三位一体と統一感【縄文天然温泉 志楽の湯】(2/2)

 仕事でさまざまなトラブルに巻き込まれてしまい、この1、2ヶ月間ほどは休日をゆっくり過ごすことができず、旅行先でもパソコンを開かざるを得ない状況だったのだけれど、7月に入ってからようやく少しずつ落ち着いてきた。

 そんな7月9日(土)、僕は以前から気になっていた温浴施設に向かうことにしたのだった。初めて降りた矢向駅はローカルな雰囲気が漂っているが、意外にも駅前には多くの人が行き交っている。

 今回の目的地は、そこから歩いて5分ほどの住宅地の中にあった。

「本当にここで合ってるよね……?」

 そう、この日の舞台は神奈川県の「縄文天然温泉 志楽の湯」である。ここは以前から信頼のおける友人が勧めてくれていた温浴施設で、いつか伺いたいと思っていたのだ。ただ、入口の雰囲気からして非常に入りにくい。覚悟を決めて奥に進んでみても、自然に囲まれていて神秘的な空気が漂っているために、妙な不安に駆られてしまった。

 どうやら建物は2つあるらしく、左側に進むとレストラン「志楽亭」、そして右側が本体の「志楽の湯」のようだ。その二つは中の廊下で繋がっているらしく、それぞれ別々に利用をしてもよし、両方を行き来しながら利用をしてもよしという仕組みになっている。
 僕はまだ空腹ではなかったため、まずは志楽の湯から利用をすることにした。右側に進んで建物の中に入ると、さらに厳かな空間が広がっていた。なぜそう思ったのかというと、館内には余計な音が一切していなかったからである。つまり、一般的なスーパー銭湯では当たり前のように流れている館内BGMが、ここでは流れていないのだ。いつもとは違った雰囲気に僕の心は落ち着かなかったが、靴箱に靴を預けてフロントで休日入浴料の1300円を支払い、古民家のような館内をさらに奥へと進んだ。そして脱衣所で準備を済ませると、いよいよ浴場へと足を踏み入れたのだった。

「おお、これまたすごいな」

(公式サイト: https://www.shiraku.jp/guide/ )

 さすが ”縄文天然温泉” というだけあって、まるでタイムスリップしたかのような世界が、そこには広がっていた。もちろんここでもBGMなんてものは流れておらず、一言でも言葉を発したら周囲から浮いた存在として見られてしまうような、静かで神聖な空気が流れていた。
 まず最初に身を清めた僕が浸かったのは「味噌樽風呂」だ。これは120年前に実際に味噌作りで使われていた味噌樽の底部分を風呂として用いたもので、その味噌樽が積み重ねてきた歴史や物語に思いを馳せながらの入浴というのは、なかなか情緒的な体験だった。

(公式サイト: https://www.shiraku.jp/guide/ )

 その次に向かったのは、源泉100%天然温泉で満たされた巨大な「御柱蔵石風呂」だ。ミネラルが豊富に溶け込み、とろっとした手触りの良質な温泉からは、大地のエネルギーを感じることができた。そしていよいよ、僕はサウナ室の中へと入ったのだった。

「ここも良い雰囲気だな」

(公式サイト: https://www.shiraku.jp/guide/ )

 もちろん無音だった。先客は数人いたものの、誰一人として会話をする気配はない。サウナ室の中には物理的には15人ほどが座れる広さがある2段構造のベンチが設けられ、そこを対流式のストーブが97℃程度まで熱していた。だが、温度は十分に高いものの、湿度が保たれているためか、不思議と熱はやわらかく感じる。
 そこで木の温もりを感じながら蒸されていると、徐々に僕の呼吸は荒くなり、全身からは大量の汗が流れ出していた。そしてサウナ室を出ると、掛け湯で汗を流した僕は、すぐ脇にある水風呂に肩まで浸かった。

「この水、めちゃめちゃ心地いいな」

 温度は24℃と、水風呂にしてはやや高めの設定。だが、僕はキンキンに冷たい水風呂に瞬間的に浸かるよりも、このくらいの優しい温度の冷水にじっくりと浸かるほうが好みだ。バイブラはなく、自分のペースでゆっくりと呼吸をしながら、火照った身体を鎮めていく。気を抜いたらそのまま寝てしまいそうになるほど気持ちがよく、僕の心は解放されていった。

(公式サイト: https://www.shiraku.jp/guide/ )

 僕はいつもより長めに水風呂を堪能すると、そこから露天風呂に移動し、木々に囲まれながら半身浴状態で休憩をした。

ーーこの非日常感、最高だな……。

 志楽の湯は、入り口から浴場までの一連の体験が見事に設計されていた。人間という生物が本来持っているエネルギーを呼び覚ますことができるよう、原始のエッセンスを現代に取り入れた空間作りにこだわりを持ち、細部に至るまでひとつひとつに意味が込められていた。便宜上はスーパー銭湯に分類される施設ではあるけれど、まるで身体を清めるための、心を浄化をするための場所であるようにも思えた。それは少し大袈裟な表現をすると、人間としての原点回帰ということなのかもしれない。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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