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なんでもない。

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記したつもりが消えていくもの。
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2020年6月の記事一覧

愛という名のもとに。

愛という名のもとに。

「それいいね」「最高だね」
 

 特に相手を称賛する言葉を放つとき、書くとき。心を込める。本当に心から感銘を受けて、ストンと言葉が降りて来た時にしか口にしないようにしている。その場をとりあえず繕いたくない。曖昧なら黙る。時間を置く。そこは大人の常識で、【嘘も方便】だって勿論知っている。減るものでもないでしょう?確かに…でも、嘘の中にある毒を知っている。だから、お世辞なら言わない。相手にも、自分に

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名詞と動詞。

名詞と動詞。

やっぱり、「青み」よりだ。「青み」ががっている。
昨日、購入したガーゼケットを眺めて思った。
パープルが好きだ。紫陽花から、薄いライラックまでの色調は特に。

「色の青みって、冷たくて悲しさを感じる」と言ってた人がいる。わたしは、『そうかな?』くらいで、聞き流していた。その人は続けた。「暗闇でみる青みは、もっと暗さ、闇を感じるから怖い」と。
その人は亡くなった。

どんなに「狂気」に囲まれたとして

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地下のおんな。

地下のおんな。

上京して間もない頃、『ファッションなら見えないところから…が肝心よね』なんて、
そう思い立った19歳の頃。数分前に、109からは出てしまっていた。

しかし、どうしても欲しい…
渋谷の地下街にある下着屋に行った。
よくある街の雑多な小さな店の連なる通路。
もう記憶も朧げ。

ただ、その下着屋に居た【おんな】はよく覚えている。
呼ばれたとしか思えない。

その【おんな】は年齢不詳で、体型は痩せている

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ぐるーり。

ぐるーり。

ずっと、メールの世界で話してた。

思い切って電話して、会う約束をして、

雨の中で、お姉ちゃんに初めて会った。

お互いに傘を持って、並んで境内を歩く。

「綺麗過ぎる」と言ったら、

「言葉の使い方がおかしい」とクスクス笑われた。

お姉ちゃんは、僕よりも年上のエンジニアを好きになっていた。

(たがが、3つくらい違うだけじゃん…)

言ってやりたかったけど、

明日は、早番で仕事だから、黙っ

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のびーる。

のびーる。

彼女は、僕の前を歩いている。

流れる音楽、アナウンスの声。

「遊園地に行きたい」と、急に言い出した彼女と、
一日過ごした閉園間際の帰り道を歩いている。

「あなたと別れたいの」

台詞のように言う。
その見慣れた唇を、黙って見ていた。

さっきまで、手だって繋いでいたんだ。

あ、髪型変えたんだ。

気がつかなかった…。

あ、いつもと同じはずなのに、

なにかが違うと感じてた。

こういうこ

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