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日商簿記検定について(ネット試験のすすめ)

こんにちは。べえたです。

これまで、このnoteでは、ロンドン大学の会計学修士プログラムと、USCPA(米国公認会計士)についての情報を書いてきました。

ロンドン大学の会計学修士プログラムと、USCPAは、いずれも英語を使って会計を学ぶものであり、会計の知識がベースとして必要になります。

今回は、会計知識を身につける上で、日本の方にとって最も身近な資格である日商簿記検定について、お話ししたいと思います。


日商簿記検定とは

日商簿記検定は、日本商工会議所が実施する検定試験であり、商業簿記と工業簿記(2級以上のみ)の知識を問う資格試験です。

満点は100点、合格点は70点で、他の受験生とのスコアの比較で点数調整がなされるUSCPAと異なり、絶対評価の試験です。
(厳密には、1級のみ、受験生の正答率に応じて配点調整が行われるため、相対評価の要素が入ります)

試験は、難易度に応じて1・2・3級と初級の合計4種類が存在しますが、こちらのnoteでは、私が実際に受験した2級と3級を中心にお話しします。

試験制度の概要

では、日商簿記2級・3級の試験制度の概要について、ご説明します。
受験方法については、後述する2つの方法(ネット試験、統一試験)がありますが、試験制度自体は共通です。

(1)日商簿記3級

3級の試験範囲は商業簿記のみであり、特に仕訳が大きな割合を占めます。

商業簿記は、財務会計の基礎となる知識であり、USCPAの初学者が学習する英文会計入門の範囲とも重なる部分が多く、会計に関する基礎知識を抑えるのに最適な資格と言えます。

①試験時間
簿記3級の試験時間は60分です。
短い時間で効率良く問題を解く力が求められます。

②満点・合格点
前述のとおり、100点満点の試験で、合格点は70点です。

満点と合格点は試験によって変動することはありませんので、絶対評価の試験となります。

③配点
試験は大問3問で構成されており、具体的な配点は以下のとおりです。

仕訳だけで45点が配点されており、ここでの得点が合否に大きく影響することがお分かりいただけるかと思います。

(2)日商簿記2級

2級は、3級よりも高度な商業簿記の論点を学ぶとともに、工業簿記が新たに試験範囲に加わります。

①試験時間
簿記2級の試験時間は90分です。

簿記3級よりも試験時間は30分長いですが、問題数も多く、より高度な論点が範囲になりますので、問題を解くスピードは3級以上に必要となります。

②満点・合格点
3級と同様に100点満点の試験で、合格点は70点です。

満点と合格点は試験によって変動することはありませんので、絶対評価の試験となります。

③配点
試験は大問5問で構成されており、具体的な配点は以下のとおりです。

仕訳と工業簿記で合計60点が配点されており、これらの部分で得点を確実に取ることが合格への一歩となります。

試験の特徴・学習のポイント (USCPAとの比較)

次に、USCPAの試験と比較した日商簿記検定の特徴と学習のポイントについてご説明します。

計算力が重要

日商簿記は、USCPAと比較すると範囲が狭いものの、選択肢で解答できる問題が少なく、自力で正しい計算が求められる問題が多く出題されます。

2級・3級レベルでは、難易度自体は高度な論点は問われないものの、1円単位での計算が必要となる問題も多く、正確かつ迅速に計算する力が重要になります。

本番は、基本的な計算機能の電卓しか使用できませんので、その使い方にも慣れておく必要があります。

仕訳が合否の鍵を握る

日商簿記試験では、USCPAと比較して仕訳が配点の重要な部分を占めていることも大きな特徴です。

3級では、仕訳だけでなんと45点もの配点があり、ここでの得点が合否に直結します。

2級でも、商業簿記の仕訳20点に加えて、工業簿記の範囲でも仕訳問題が出ることが多いです。
2級では、連結などの難関論点が出題されることも多いため、仕訳で確実に得点をすることで、合格の確立を高めることができます。

USCPAでは、個別の仕訳を解答する問題はあまり出題されませんので、この点も日商簿記の特徴と言えるでしょう。

簿記2級では工業簿記を得点源に

工業簿記は、簿記2級で新たに試験範囲に加わります。

管理会計の分野の1つである工業簿記は、問われている計算の種類(個別原価計算、総合原価計算等)が理解できれば、方程式を解くように問題を解答できることも多く、また論点の構造も比較的単純であるため、安定して得点しやすい分野です。

苦手意識を持つ方も多いですが、解答方法を暗記するのではなく、各論点の理屈を抑えつつ学習することを心がけてください。
この点は、USCPAのBARの学習にも共通するものです。

問題運に左右されやすい

USCPAと異なり、日商簿記検定は「素点の合計がそのまま得点となる」という特徴があります。

日商簿記とUSCPAは、合格定員は存在せず、それぞれ70点と75点という合格基準の得点が設定されています。

しかしながら、その得点の計算方法には、大きな違いがあります。

USCPAは、各受験生の正答率に基づき、合否判定に用いるスコアを調整しています。
一方で、日商簿記は、各設問に配点された得点をそのまま合否判定に使用します。

このため、日商簿記では、簡単な問題が出題されると合格しやすいですが、難しい問題が出題されると、合格が一気に困難になります。
このため、日商簿記の方がより出題運に左右される面が大きいと言えるでしょう。

このポイントは非常に重要で、次にお話しするおすすめの受験方法にも影響します。

受験方法(ネット試験がおすすめ!)

2020年12月より、日商簿記検定はネット試験が開始されました。

これは、従来の統一試験に加えて新たに導入された試験であり、全体の試験制度自体は変わりありません。
しかしながら、出題傾向や合格率など、実質的には大きく異なる試験ですので、その選択は戦略的に行う必要があります。

(1)ネット試験

①受験可能期間
統一試験の前後の期間を除き、基本的にはいつでも受験できます。
平日の受験も可能ですので、ご自身の都合に合わせて調整ができるのは、嬉しいポイントですね。

②受験会場
全国のテストセンターで受験が可能です。
オフィスビルの1画や、雑居ビルの1フロアなど、会場によって大きく環境が異なります。

③解答方法
テストセンター備え付けのパソコンの画面に、解答となる数値を入力したり、選択肢をプルダウンから選んだりして解答します。

④合否発表
解答終了直後の画面で合否が表示されます。
10秒ほどで合否が出てきますので、結果に合わせて次の目標に向けてアクションが取れるのは、メリットですね。

⑤合格証書
合格証書は、専用のWebサイトから電子ファイルとしてダウンロード可能です。

(2)統一試験

①受験可能期間
毎年2月、6月、11月の日曜日に開催されます。

②受験会場
全国各地の大学や会議室などで受験可能です。
ネット試験よりも同じ日の受験生が多いため、会場は広めです。

③解答方法
紙の問題用紙と解答用紙が配布され、解答します。
紙のテストに慣れている方にとっては、メリットですね。

④合否発表
試験終了後、1ヶ月以内に発表されます。

以前は問題用紙を持ち帰ることができたので、自己採点を行うことも可能でしたが、今は試験終了後に問題用紙も回収されますので、正確な点数を計算することが難しいことに注意が必要です。

⑤合格証書
合格証書は、紙で発行され、合格発表後に郵送されます。
しっかりとした紙で合格証書が貰えるのは、記念になりますね。

(3)比較

日本商工会議所は、受験方法によって試験の難易度が変化することは無いとしていますが、実際の合格率には大きな差異があります。

以下に、ネット試験開始以降のネット試験と統一試験の合格率を紹介します。

①ネット試験 合格率

(※)2023年度は4~9月、2020年度は12~3月の数値
(日本商工会議所Webサイトより)

②統一試験 合格率

(日本商工会議所Webサイトより)

比較すると、3級の合格率はどちらも40%程度で大差ありませんが、2級の合格率は統一試験が20%程度であるのに対し、ネット試験は40%ほどもあり、なんと2倍もの差があります

この理由は色々と考えられますが、最も重要なポイントと思われるのは、「出題される問題の難易度」です。
前述のとおり、日商簿記は絶対評価の試験であり、問題の難易度が高ければ高いほど、合格率が下がる設計となっています。

統一試験は、年3回のみ開催されており、かなり捻られた論点が出題されることもあるのですが、ネット試験は受験日によって有利不利が出づらいよう標準的な論点が出題されることが多く、その結果として合格率に大きな差が出ていると考えられます。

資格試験は、勉強の過程そのものに価値があることは言うまでもありませんが、やはり学習のモチベーションである合格をいかにつかみ取るかも、極めて重要なポイントです。

次のステップに向けて、最短で合格をつかみ取るため、合格率の高いネット試験を活用することを強くおすすめします。

USCPAの事前学習としての日商簿記

USCPAの学習を検討されている方の中には、経理・財務の業務経験が無い方もいらっしゃると思います。

私もそうだったのですが、業務経験がない状態から会計系資格の取得を目指される場合には、まず日商簿記の学習から始めることをおすすめします。

日商簿記の学習を通じて、会計に関する基礎的な知識を整理でき、また自分が会計の学習に適性があるかも確認できますので、USCPAなどのより難度の高い資格にチャレンジするかどうかの判断にも大きく役立ちます。

一般的には、簿記3級は100時間ほど、簿記2級は300時間ほどの学習期間で取得を目指すことができ、負荷は比較的軽い資格です。

また、USCPAと異なり、独学での学習が可能で、予備校やテキストの費用もあまりかからないため、初期費用を抑えられるという点も、大きなメリットです。

USCPAの資格取得を急がれている方でも、少なくとも簿記3級は事前に取得しておくと、結果的に合格までの近道になると考えます。

簿記2級まで取得するかどうかは、最終的な資格合格までのスケジュールを組み立てて、検討すると良いでしょう。

他の資格を受けない場合も、企業で働く上では、会計的な視点を持つ必要性は高いため、会計系の資格のパスポートとして、簿記3級を学習されることは有意義と思います。

おすすめ学習資料

最後に、私が学習の際に活用した資料(テキスト・問題集・Webサイト)をご紹介します。

(1)テキスト・問題集

「みんなが欲しかった!簿記の教科書」シリーズは、私が簿記学習のメインテキストとして使用していました。

フルカラーで解説の図も分かりやすく、市販テキストの中では説明も丁寧であったことから、初学者でもとても利用しやすかったです。

①簿記3級

②簿記2級

簿記学習では、テキストと問題集は同じシリーズで統一する方が、論点を結び付けるのに役立ちますので、シリーズは合わせて購入されることをおすすめします。

また、問題集には、本番のネット試験と同様の形式の模擬試験のデータも付属していますので、ネット試験を受験される方は、必ず事前に模試を受けるようにしてください。

(2)Webサイト

最近は簿記や会計について無料で学べるWebサイトも多くあり、学習を効率化するのに大きく役立ちます。

ここでは、私が学習に活用したWebサイトである、CPAラーニングをご紹介します。

CPAラーニングWebサイト
テキストや解説講義、模擬試験を無料で提供してくれているサイトです。

会員登録は必要ですが、簿記以外にも、会計ツールの使い方や、税務についての解説など、会計系の幅広い講義を視聴可能です。

各論点について、詳しく解説をしてくれていますので、難しい論点があれば、その部分だけ講義を聞くなどの活用も可能です。

テキストも無料なのですが、少しお堅めの作りとなっており、初学者は基本的に解説講義を聴きながら学習しないと、なかなか頭に入りづらいかも知れません。

個人的には、前述の市販テキストを補完する形で利用すると、とても効果的だと思います。

また、ネット試験に特化して解説してくれている動画もありますので、受験前には是非チェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、日商簿記検定についてお話ししました。
ネット試験の開始など、近年の簿記検定は様々な変化が起きていますので、初めて会計を学ぶ方も、久しぶりの学びなおしの方も、ぜひ受験を検討されてみてはいかがでしょうか。

このnoteでは、英語と会計両方を学ぶ、ロンドン大学会計学修士プログラム(MSc in Professional Accountancy)や米国公認会計士(USCPA)を中心に、概要のご紹介や学習法アドバイスなどを発信しています。

もしよろしければ、これまでの記事や今後の記事もご覧いただけると嬉しいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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