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USCPA(米国公認会計士)について:資格と制度の概要

こんにちは。べえたです。

これまで、このnoteでは、ロンドン大学の会計学修士プログラム(MSc Professional Accountancy)について、記事を書かせていただきました。

(会計学修士プログラムについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。)

このプログラムは、最短半年、格安、オンラインで正式な修士号が取得できる、とてもお得なプログラムなのですが、出願要件の中で、USCPA(米国公認会計士)やACCA(英国勅許公認会計士)などの会計資格が必要となっています。

私はUSCPAのライセンスを取得し、ロンドン大学を受講したのですが、日本の方がロンドン大学を受講する場合も、USCPAを経由されるケースがほとんどだと思います。

そこで、この記事では、USCPAの試験制度について、ご説明したいと思います。


USCPA(米国公認会計士)とは

USCPAは、アメリカの公認会計士を指します。アメリカにおける会計資格の中では、最も権威のある資格です。

アメリカの企業では、CFOや財務部長、会計系のマネージャーの採用要件にUSCPAのライセンスが要件となっていることも多く、アメリカで経理・財務系でキャリアを積む上では、強力な資格となっています。

日本で働く場合でも、USCPAは企業から評価を受けることができます。
USCPAは、会計・監査・税務・法律といった幅広い経営管理に関する試験に英語で合格したことを証明する資格であり、転職市場でも武器になります。

日本の公認会計士とは異なり、日本での監査の業務独占資格ではありませんが、幅広いビジネス知識を英語で身につけることで、キャリアの選択肢を広げることが期待できます。

また、近年は東京証券取引所(東証)を運営する日本取引所グループにおいて、特にプライム市場上場企業を対象に、英文での情報開示の義務化が検討されており、英語と財務報告のスキルを併せ持つUSCPAの需要が高まることが期待されています。

このように、実務上役立つ知識を体系的に得られる資格である一方で、社会人の方が働きながら合格を目指せる試験制度でもあることから、学びなおし、リカレントの観点からも、とても魅力的な資格です。

試験制度

(1)試験科目

USCPAの試験制度は、2024年から大きく変更されており、以下のとおり、必須科目と選択科目から構成されています。

必須科目3科目に加えて、選択科目から1科目に合格すると、全科目合格者となります。

USCPAは科目合格制度を採用しており、各科目は別々に受験可能です。
科目合格の有効期限は、これまで18ヶ月でしたが、2024年以降、日本の受験生の方が受験される州の多くでは、有効期限が30ヶ月に延長されることが発表されています。
受験生の皆様にとっては、朗報ですね。

①必須科目(Core科目)

以下の3科目が必須科目です。

・Financial Accounting and Reporting(FAR:財務会計)
多くの受験生が最初に受験する科目で、企業がステークホルダーに報告する財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等)の作成方法を学びます。
一般的にイメージされる経理・財務の仕事に近い内容が試験範囲となります。
計算系の問題が多く、英語ネイティブの受験生との有利不利が発生しづらい科目です。

・Auditing and Attestation(AUD:監査)
企業が作成した財務諸表の内容の正確性をチェックする監査業務を学ぶ科目です。
FARで作成された財務諸表をチェックし、その信頼性を証明するのが会計監査であり、USCPAとして働く上での根幹となる業務を学ぶ科目です。
理論系の科目であり、FARとは異なる学習方法が必要です。

・Taxation and Regulation(REG:税法・ビジネス法)
個人や法人、パートナーシップといった各税務申告主体の申告方法と、商取引に関係するビジネス法を学ぶ科目です。
税法の出題比率が高いため、税務部分が学習の中心となります。
学習スタイルとしては、暗記部分が多いのが特徴です。

②選択科目(Discipline科目)

選択科目では、以下の3科目から1科目を選択して受験します。

・Business Analysis and Reporting(BAR:ビジネス分析)
FARの内容を基礎に、より発展的な財務会計分野を学び、併せて管理会計・工業簿記の範囲を学ぶ科目です。
FARと同様に、計算系の科目であり、英語ネイティブの受験生との間で有利不利が出づらいことから、多くの日本の受験生の方が選択しているようです。

・Information Systems and Controls(ISC:情報システム・統制)
内部統制やデータ管理に関するITや情報システム関連の分野を学ぶ科目です。
IT分野のお仕事をされている方が選択するケースが多いと思われます。

・Tax Compliance and Planning(TCP:税務計画)
REGの内容を基礎に、より発展的な税務分野を学ぶ科目です。
税務関連の業務に従事している方や、暗記系が得意な方が、選択する可能性が高い科目です。

(2)試験方式

試験はCBT(Computer Based Testing)と呼ばれる方式で行われ、指定された会場で、パソコンを使って受験するスタイルです。

試験は、MC(Multiple Choice)と呼ばれる四択問題とTBS(Task-Based Simulatio)と呼ばれる文章題から構成されており、それぞれが50%の配点となっています。
(ISCのみ、MC:60%、TBS:40%の配点です)

アメリカの試験なので、問題文や選択肢はもちろん全て英語です。

満点は99点満点で、合格点は75点です。
ただし、素点がそのままスコアとなるわけではなく、他の受験生の正答率との間で調整がなされるため、実質的には、絶対基準だけではなく、他の受験生との相対基準の要素も加わっています。

(3)受験場所

USCPAは、アメリカの資格でありながら、日本でも受験が可能です。
アメリカに渡航することなく、資格試験が受けられるのは、とても大きなメリットですね。

日本の受験会場は、東京の御茶ノ水ソラシティと大阪の中津センタービルの2ヶ所です。
TOEFLなどの受験会場として使われている、プロメトリックというテストセンターが受験会場となります。

(4)合格率

USCPAの合格率は、各科目50%程度で推移しています。

【参考】2022年各科目合格率

(米国公認会計士協会(AICPA)Webサイトより)

日本の公認会計士は、弁護士、医師と並ぶ三大国家資格の1つであり、合格率も低い(短答式試験:15%程度、論文式試験:40%程度)ですが、USCPAは、各科目の合格率は50%程度であり、比較的合格率が高いです。

これは、日本とアメリカの資格の制度設計の思想が異なることに起因しています。

日本の公認会計士試験は、会計士として第一線で即戦力として働く力を証明することが合格基準として設定されています。
一方で、USCPA試験は、会計士としてのキャリアをスタートさせるエントリーレベルの知識を身につけていることを証明することが合格基準となっており、合格率が比較的高くなっています。

また、日本の公認会計士試験は、受験資格が誰にでもあり、間口が広い一方、USCPA試験は、大学院で会計学を専攻したことを想定した受験資格となっていることも、大きな違いです。

日本の受験生は、アメリカの大学で会計を学んだ受験生と同じ試験を受けることになることを考慮すると、合格率の50%は、決して低いハードルではないことがお分かりいただけるかと思います。

受験資格

アメリカでは、大学院で会計を学んだ学生がUSCPA試験を受験することがほとんどです。
そのため、試験の受験やライセンスの取得において、会計やビジネス関連の科目の単位を取得していることが条件となります。

このため、大学や大学院で、会計系の単位を取得していない場合には、USCPAの予備校を利用して、不足した単位を取得することが必要です。

詳細な条件については、各州によって異なるため、予備校などで最新の情報をご確認いただきたいと思いますが、私が受験州やライセンス取得州でおすすめするのは、以下の州です。

なお、試験自体は全州で統一されており、州の選択によって学習範囲や難易度などが変化することはありませんので、ご安心ください。

(1)おすすめ受験州:ニューヨーク州

ニューヨーク州は、受験に必要となる単位数が少ないことが、大きな魅力です。
当然ですが、早めに1科目目を受験することが早期合格の必須条件となるため、必要な単位数が少ないことは、重要なポイントです。

また、ニューヨーク州独自のメリットとして、全科目合格した場合に、合格実績が失効しないことが挙げられます。
他の州では、全科目合格後にライセンスを取得せずに3年間が経過した場合、科目合格の実績が失効する可能性があるとされています。

しかしながら、ニューヨーク州は、全科目合格後は合格実績は失効しないことが州法で定められており、ライセンス取得までの期間が空いても、リスクがありません。
合格後にライセンス取得に必要な実務経験を積む方もいらっしゃると思いますので、この点でも、ニューヨーク州での受験がおすすめです。

(2)おすすめライセンス取得州:ワシントン州

ライセンスを取得する州としては、ワシントン州がおすすめです。

ライセンスを取得する場合には、USCPAの業務に関連する実務経験が必要となるのですが、ワシントン州では、実務経験として認められる業務の範囲が幅広く、ライセンスが取得しやすいです。

一方で、受験のために必要な単位数がニューヨーク州と比較してとても多いため、ニューヨーク州で全科目合格後に、ワシントン州でライセンスを取得する形が、最も効率的なルートだと思います。

スケジュール・学習時間

想定される学習スケジュールと学習時間についても、ご説明します。

学習開始時点の会計知識と英語力により、個人差はありますが、
「週20時間の学習で、1年半で全科目合格」が、順調に学習できた場合のモデルケースとなります。

各科目の具体的な学習時間のイメージは、以下のようになります。

FAR:500時間程度
AUD:400時間程度
REG:300時間程度
選択科目:400時間程度

合計で1600時間程度となり、週20時間の学習を続けた場合、80週、つまり約1年半となります。

仕事をしながら受験される方が多いと思いますが、その場合の週20時間の確保のイメージは、平日2時間、休日5時間となります。

かなりの時間を長期間に渡って確保しなければならない、難関資格であることがご理解いただけるかと思います。

もちろん、勉強方法を工夫することで、より短期間での合格を狙うことも可能なので、今後の記事で、学習のポイントについても、触れさせていただければと思います。

まとめ

今回は、USCPAの概要についてご説明しました。
次回以降は、実際にUSCPAの学習を進める上でのポイントやアドバイスについて、お話ししたいと思います。

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