見出し画像

信州循環の旅~真冬の信州を巡る~

かつて信州には「信州循環列車」というものが存在していた。長野駅発長野行き。途中、篠ノ井・小諸・野辺山・小淵沢・塩尻・松本・篠ノ井・長野に停車するというルートである(のべやま号)。今では途中篠ノ井-小諸間はしなの鉄道に移管され、さらには、いくつかの路線をまたいで運行する複雑さから、二度と復活しないであろう循環列車だ。その、「信州循環列車」のルートを現代でも達成してみようと、今回旅に出たわけである。

6:59 「しなの鉄道普通小諸行き」

115系に乗り込み、千曲川を遡る。乗車率は低い。かなり年季の入った車体なので、発車時はスムーズではなくカクカクするし、走行中もガクガクするが国鉄時代からなので仕方ない。
いつもと違う場所で浴びる朝日は、特別なものを含んでいるのだろうか。浴びると元気になる。

しなの鉄道115系(長野駅到着時)

8:04 小諸駅到着 乗り換え

朝は寒い。トイレを済ませ、早めに乗り換える。

小諸駅

8:16 「小海線普通小淵沢行き」

キハ110系小海線 小淵沢行き

飯山線でおなじみ110系のディーゼル車に乗って八ヶ岳高原を行く。この区間は非電化区間であるのでディーゼル車が基本だ。乗車率はやや高いが佐久平や中込でほとんどが下車。通学列車として使われている模様。小諸を出てしばらくすると、佐久平が一望できる。「松本伊那佐久善光寺 四つの平は肥沃の地」。改めて眺めてみると、なかなか良いものである。途中の佐久平駅は新幹線接続もある大きな駅であるが、造りが少々おもしろい。新幹線ホームの上に小海線のホームがある。駅舎が橋上化されているのだ。

眺めが素晴らしい。
佐久平駅周辺


佐久平駅を出ると、千曲川沿いを登る。駅周辺には民家がいくつか見られるが、ほとんど川か山しか見えなかった。途中、「海瀬」、「小海」、「海尻」、「佐久海ノ口」と「海」の付く駅名が多くなってくる。特に、「海瀬」駅は日本一海岸から遠い駅として認定されている。日本一海岸から遠い駅の駅名が「海」と付くのはかなり興味深い。そう思っていると、ここで私は頂き物のとある本を思い出した。その本の中に、「海」と付く地名が多い理由というコラムが掲載されていたことを思い出す。うっすらと内容は「覚えていたが定かではない。帰ったら読み返そうと決める。

千曲川(信濃川)も上流に差し掛かる。
日本一海岸から遠い駅「海瀬駅」
「海」の付く駅

今回はあらかじめ下車駅を決めてきた。「佐久海ノ口」駅だ。駅周辺に海ノ口温泉という温泉があるらしい。そこを訪ねてみようと思ったからである。といっても、9:46分に下車すると次の列車は13:24分。3時間半以上も時間がある。温泉がクローズしていたら、、、、と考えるとかなりリスキーな下車であった。

9:46 佐久海ノ口駅下車

佐久海ノ口駅

2両編成の列車を見送る。列車は何もないプラットホームにたった1人を降ろして、八ヶ岳高原をさらに進んでいった。

佐久海ノ口駅にて

佐久海ノ口駅を下車し、海ノ口温泉を目指す。
駅から5分ほど歩くと温泉街が見えるが、残念ながら廃れきっている。湯宿はこの1軒のみ。周りを散策したが、他の宿は廃業していた。

国道からの入り口
海ノ口温泉の標識
温泉周辺

海ノ口温泉「和泉館」

和泉館

異常なほどのセラミック推しの宿。ホテルのあちこちにセラミックの案内が貼られている。セラミックのお試し粉やセラミック入の水などなんとも不思議。そして風呂の中にまでセラミックが入っていた。悲しいことにこのホテルも盛っているとは呼べず、昭和後期から時が止まっているように感じた。館内の照明もなし、暖房もなしで凍えた。まあ、昨今の昭和ブームには持ってこいな場所ではないでしょうか。とにかくこの宿内は令和の時の流れではありません。

セラミックの文字があちらこちらに
セラミックの文字があちらこちらに
セラミックの文字があちらこちらに(横写真で見ずらいです)

人っ子一人いない宿。貸切風呂状態だった。まあ、朝10時ですからね。風呂は、源泉と沸かし湯に別れている。源泉は錆色。強烈な鉄の匂いがして、大変冷たい。源泉温度は約30℃程度らしいが、外気の寒さで湯も冷えてしまい、最早水風呂だった。入ることは出来なかった。ということで、沸かし湯のセラミック風呂に浸かる。アツアツでは無く、ちょうどいい温度だったが、やはりセラミックのおかげなのだろうか。湯がとてもまろやかで柔らかかった。誰も来ない風呂に1時間強入っていた。とても柔らかいので入りやすい。露天風呂もあったが、閉鎖されていた。外が寒すぎるのだろう。

浴槽

上がって、コーヒー牛乳。あまりに館内が寒すぎてやめようかと思ったのだが見たことないものだったので飲む。めちゃめちゃ甘かった。

初めて見たコーヒー牛乳
館内の様子

ロビーには謎の洋服販売も。「ご厚意により出品しています。お気に入りのものがありましたら自分で値段を決めて箱に入れてください」面白いシステムだ。女将さんの古着と思われる。

不思議なコーナーも。

しばらく誰もいないロビーでまったりとした後、源泉を見に行ってみる。
地名からも想像できる通り、この周辺は昔「海(湖)」であった。そのため、源泉には多くのミネラルと鉄分が含まれているらしい。とても冷たい源泉。冬には適さないが、夏に入ったら最高だと思う。

源泉のようす。

かなりの量が湧き出しているようだ。少し手を入れてみると、やはり冷たい。大浴場よりも、強く鉄の香りを感じた。ものすごい鉄の含有量である。

道の一角に垂れ流されている。

とにかく温泉一帯は残念な廃れ方をしている。時代に取り残された海ノ口温泉。源泉が素晴らしいものだけに、このような状態になってしまったのは勿体なく思う。

お昼の時間までまだ大分ある。周辺を少しうろうろするが、とにかく寒い。

海ノ口駅周辺にて
千曲川上流

ただの川だ!、と言われてしまえばそれまでなのだが。澄み渡る青空、光を反射する川。輝いていて眩しいほどで素晴らしく美しい景色であった。あまりに美しくて、20分以上はこの景色を眺めていた。一句詠みたいところだが、風流心が無いので断念。

キラキラと光る水面が本当にきれい。

お昼の時間。駅前にはコンビニと喫茶店があった。さて、どちらにするか?迷わず喫茶店に。列車が来るまであと1時間半。さすがに寒すぎる。
ということで、coffeeあすなろに入る。またレトロ(?)な場所だった。昨今のレトロ喫茶ブームにはもってこいなお店では?⁡

看板
店内の様子

⁡入って何回か声をかけると奥からママさんが出てきた。席に着いて、エビピラフとミルクティーを注文。お味はというと、、、馴染み深い味だった。まあ、電子レンジの音が聞こえてしまっていたので。冷凍ピラフに炒めた玉ねぎとピーマンをトッピングしてあった。ミルクティーも知ってる味だった。

エビピラフ

食事を終え、会計をして店を出ようとすると、ママさんが小海線を使うの?それなら外は寒いから汽車が来るまでここに居ていいわよ、と声をかけてくれた。朗らかなお方だった。
私:小海線の本数が少ない。
マ:平日の方がまだ多い。通学で少し前まで使われていたが、不審者が出るから村でスクールバスを用意した。だから、今では通学でもほとんど使わない。この地域は車が主流だから、汽車の乗り方は忘れてしまったよ(笑)。
私:コンビニしかないが買い物は?
マ:車じゃないと無理。私のところは週一回、佐久平まで買い物に行ってる。近くの峠に住んでる人は山梨に出かけるのよ。昔、付近に一軒あったが潰れた。

私:すごく外が寒い。
マ:私が嫁いできた頃は氷点下30℃は普通。ボットントイレが凍って山になっていた時は驚いた。今日は氷点下13℃。最近ではすごく寒いほう。今では夏場も30℃を超えて暑い。自宅にエアコンがないので蒸し風呂状態。昔はフルーツが採れなかったのが、最近は温暖化で葡萄が取れるようになった。今年は暖かくて車のタイヤを変えたのは12月20日だった。全然雪がない。

私:さっき和泉館に行ってきました。
マ:あそこの宿は薪でお風呂を沸かしてるのよ。自分の山を持っていて、夏場に薪を集めている。燃料代が高いからそうしたらしい。
私:確かに湯が柔らかかった。全館ストーブが付いてなかったが。
マ:経営も厳しいらしい。泊まるとなると1泊1万円くらい。
私:この周辺の人達は使わないのか?
マ:夕方になるとみんな入りに行ってる。5000円の回数券があって、それが凄くお得らしい。私は自分のタイミングで入りたいから、家の風呂に入ってるが。
私:宿泊してる人はいるのか?
マ:お正月の時、少しいた。現場系の人がよく泊まっている。
私:ものすごく冷たい温泉だった。
マ:野辺山より佐久方向は源泉が冷たい。逆に、小淵沢方向は温かい温泉が湧く。昔は湯宿がいくつかあったが閉館した。この周辺の人たちは、出かけると言ったら、伊豆に行く。海もあって温泉もあるから。

などなど、全て書くととても入り切らないので割愛。長時間話してしまいました。⁡
⁡そろそろ列車が来る時間になったので退店。本当に寒かったのでありがたかった。⁡

13:24 「小海線普通小淵沢行き」

駅周辺
ディーゼル車E200系が入線
座席
千曲川も上流に
八ヶ岳連峰も見えてきた
野辺山駅 JR最高標高駅「1345.67m」

世界に3両しかないE200系。ハイブリッド車として世界初めての運用が、この小海線で行われている。
野辺山駅までは乗車率が低い。野辺山からはだいぶ混雑した。山から帰ってきたような装備の人が多かった印象。写真は無いが、よく八ヶ岳が見えた。
小海線は、何処かピンポイントで、ここがオススメ!という所は無い路線だが、日本のふるさとを感じることが出来る良い路線だった。

小淵沢駅手前にて。富士山がよく見える。

14:24 小淵沢駅下車

馬の町らしい

素晴らしい天気。富士山がよく見えた。1時間ほど乗り換えに時間があったが、その半分以上を展望台で過ごす。空気も良いところ。秋に訪れても綺麗だろう。ホームには指定席券売機があった。ホームにあるのは初めて見た。

富士山がよく見える。
良い展望
ホームにあった指定席券売機
小淵沢駅

15:29 「中央本線普通松本行き」

211系

中央本線です。中央線ではありません。よく乗り慣れた車体。ロングシートで松本へ向かおうとした。が、よく時刻表を見たら、長野にスムーズに帰るのに、もう一駅立ち寄れそうである。車内にある路線図を見ると、私が昔から来てみたかったみどり湖駅を見つけた。ここに立ち寄ろうと決め、ロングシートで揺られる。

16:37 みどり湖駅下車

遂に来た!!!!みどり湖。恐らく、これを読んでいるほとんどの人は理解できないだろう。。なぜこの駅なのか、何も無い駅に何の魅力を感じるのか。
でも、こういう駅が良いんですよね。ひっそりと住宅地にある駅。何か居心地が良いというか。
しかし、みどり湖までは徒歩10分以上。行けませんでした。。。

みどり湖駅
住宅街にある駅
住宅街にある駅
みどり湖駅入口
こう見えてもsuica導入駅
ホームの様子


17:10 「篠ノ井線信越本線直通中央本線普通長野行き」

E211系

ボックス席の列車で帰る。長野駅まで行くので松本で乗り換えることなく進めて楽。途中、姨捨で善光寺平をのぞむ。「松本伊那佐久善光寺 四つの平は肥沃の地」。今回はそのうちの3つの平を見てきたが、どこも良かった。
桑ノ原信号場で少し停車し長野駅に戻る。

18:51 長野駅到着

約12時間かけて信州循環の旅を遂行した。

姨捨の夜景

※参考情報

今回も信州ワンデーパスを利用した。残念ながらしなの鉄道は別料金。
1000円弱お得に旅できた。


この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?